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スノードロップ

ぱしゃん

シャボンの膜が割れる。全てが終わった気がした。


「主様、私を殺してください」

「ふざけるな」

「式たちが私の罪も一緒に連れて行くと言いましたが、そんな道理が通るわけありませんでしょう?貴方が愛したアイリス様の来世を奪って--」

「言ったはずだ。共に背負うと」

「主様、どうか」

言ってその場で土下座をしたが、ぐいっと引き上げられ目線が合う。

「私は神か?魔物か?エランシスか?」

「わかりません。私には貴方が何者かなど些細なことです」

「もし私が神でなかったら、あのアイリスは私を愛しただろうか?」

「アイリス様のお気持ちが私に分かるわけもありません」

「なら、お前はどうして死ぬほど私を慕ってくれた?」


目を瞑ると、昔の光景が瞼の裏に蘇る。

「主様の視線を独り占めするアイリス様が羨ましくて…恋の美しさを知って…私の知らない顔をする主様をどうしようもなく好きになってしまいました」

涙が零れ落ちる。言葉も一緒に零れ落ちて止まらない。どんどん感情が溢れてきて私は…

「私は自らの嫉妬に、この身を焦がして死にました。出来損ないの式でした」

「…お前が燃えて死んでしまったのを見て、私は激しく後悔した」

「主様は私が死んだことをご存じだったのですか?」

「呼ばれた気がしたんだ。お前は私を呼んだだろう?」

微かだけれど、それは確かに

「呼びました…呼びましたとも」

主様は微笑んだ。



辺りを見渡すと、そこはすっかり焼け野原、屋敷も燃え落ちてしまっている。


「二人で暮らすなら、お互い名前は要らないか?」

「主様が望むならそのように」

「おい、私は妻と暮らしているんだぞ。お前も人間になったんだから少しくらいは元通りにならないのか」

「では、私に新しく名前をつけてください」


主様はそうだなあと言って考え込んだ。

「…雪。この光景を見て思いついた。雪に因んだ名はどうだ?」


それなら今の私にピッタリの名前がある。

「それならガランサスがいいです。スノードロップの別名」

「ガランサス…」


貴方はそれから何度も私をそう呼ぶだろう。

ガランサス、スノードロップの花言葉は『あなたの死を望む』


貴方にそう言われ続ければ、きっとこの身を滅してくれる。そう思えるから。


私は幸せになってはならないのだから。


--ところが

「ダメだ。その名は却下だ」

「どうして…!」

「可愛くないからだ」

「そんな…」

「…ほら。絶対何か良くない意味があるんだろう?」

「うっ…」

「やっぱりな。本当にくだらんことをよく思いつく」


はあ、と一つため息をついて主様はその場に腰を下ろした。

「やり直しだ、ここから」

「そうですね。沢山のものを失いました」

「だが、お前はここにいる」

私の手の甲にくちづけが落とされる。


「一緒にいると誓っただろ。お前は私の妻だ」

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