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王は牢の中で

私たちの周りを衛兵が取り囲む。


「これは大変な歓迎だ。なあ、アイリス」

「一体どういうつもりなの?」


しかし、ローマンは至って冷静だった。

「手荒なことはしません。このまま、私についてきてください」

言われて、王宮の地下牢へと案内された。


沢山の足音が反響する。



「父上、お姉様をお連れしましたよ」

ある一つの牢の前でローマンは歩みを止めた。

見ればそこには、でっぷりとした腹を揺すった父が格子を掴んでいた。


「おお!アイリス!!助けてくれ!!」

「お父様…!?」

「魔物も一緒なのか!なら話は早い。貴様の能力でなんとかしろ!」

エランシスは父の言葉にうんざりした顔で言った。

「おい、ローマン、この失礼な口は塞がなかったのか。どうせなら舌を切り落として仕舞えば良かったんだ」

父は真っ赤になって激昂する。

「何だと!?」

「お父様もエランシスも落ち着いて下さい!ローマン、貴方がこんなことをしたの!?」


ローマンはカツカツという音を立てて私に迫ってくる。

元々低くない身長に加えて、ヒールを履けば、見下ろされる格好になる。

「強国との軋轢を生んだ王だぞ。これから戦争に発展しかねないと言うのに。むしろまだまだ生ぬるいだろう」

「お父様をどうするつもり!?」

「お姉様も頭を悩ませていただろう?この愚王に。ならば今こそ下克上の時だ」


私は恐ろしくなって、後ずさる。

ローマンはそんな私を一歩一歩追い詰める。

「弱いなあ、お姉様は。だが、分かっているだろう?このまま父上を玉座に据え置くことが、この国にとってどんなに害悪か」


それは、そうなのだ。

でも、だけど。

ローマンはついに恐れていた言葉を口にする。

「共にこの王の首を取ってしまおう。そうすれば、この国は立ち直る」


後ろからエランシスが私を抱き寄せ、弟と対峙した。

「断る」

「なぜだ。魔物殿も人間にその力を誇示できる機会だ。貴方の力があればこの国は愚か、世界を統治できるだろう」

「興味がないな。人間の国取り遊びなど」

「つまらないな、魔物殿は」


僅かな沈黙。

その間、ガシャガシャと格子を揺らす音だけが響いた。


「ククク…愚かだな。隣国がこのまま黙っていると思うか?本格的に魔物狩りが始まるぞ」

「愚かなのはどちらだ。人間は私の世界に干渉できない。少しは話がわかる人間だと思っていたがな。残念だ」

「お父様を解放なさい」

「手を貸さないなら口出ししないで頂きたい。いずれにしても父を罰する必要があることは分かるだろう?」


格子から手が伸びる。

色とりどりの指輪が蝋燭の光を乱反射して、悪趣味を際立たせた。

「助けれてくれ!アイリス!ここから出してくれ!ローマンもすまなかった!この通りだ」

父は遂に土下座で懇願した。

「…父上、頭の悪い貴方でも分かるはずだ。隣国にどうやって示しをつけます?」

「し、しかし、あれは隣国の王子が持ち掛けた話で…」

「どこにそんな証拠が?周辺国が常に狙い続けている弱小国の寝首をかく絶好の面目が立ったというのに?」

ローマンは格子越しに父の髪を掴んでにやける。

歪んだ口元から、父を罵る言葉は止まない。

「憐れだな。そんな計画にも気づけないのか。お姉様の奪還が叶わなかった時のことも織り込み済みに決まっているじゃないか。ただで転ぶような国ではないから、強国として立ち続けられるのだよ」


それはそうだろう。

父はうまく乗せられたのだ。

奪還できても、できなくても、この国は隣国の手の内で転がされるだけだ。


「お父様、国民に石を投げられるような行いをしたことを恥じて、きちんと罰を受けられることを願います」

それでも私は貴方の娘だ、そう言おうとしたが唇が動かなかった。


エランシスと私は花びらが舞う道を歩いて行った。

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