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5話


                 5


「ゆゆ、ゴメンな、こんな所で」

「ううん、いいの。お互いの家なんて、なんか恥ずかし過ぎるから」


 やっと二人は一つに結ばれて、未だ冷めやらぬ気分のまま、ピロートークをしている。

 今、ここはラブホである。


「無理矢理だったかなオレ」

「ううん、とっても優しかったし、智也と一つに繋がれた事の方が嬉しかったよ、でも 結構痛いんだね、初めてって」

「スマン」

「でもいいの、智也が私を選んでくれた事が、とっても嬉しくて、夢見ている気分だったよ」

「オレって、幸せなヤツだな。こんなにカワイイ彼女が居て」

「何よ急に、照れるじゃない」

「はは、照れてくれ ゆゆ......」


 言い終わった後に智也がキスをした。

 智也の不意打ちに、顔が真っ赤になる ゆゆだった。


(やっぱり優しいこの人は。前カレの事を詮索しないで、私を信じてくれていた、この人を離してはいけない)

 と思う ゆゆだったからこそ、本当の事を言わざるをえない気分にさせた。


「智也、あのね...」

「なに? 話しにくい事だったら、いいんだぞ」

「いえ、話しておきたいの、これからの私たちの為に」

「分かった...」


 意を決して。


たいらと付き合っていたのは、前言ったよね」

「ああ」


 由が囁くように話し出した。


「平と初めて出会ったときは、そこそこイケメンで、カッコいいなと思い、告られたから、いいかな・・と思って付き合いだしたの。でも、最初は優しかったけど、少し経ってキスまでした時に、体まで求められたの、でも、まだ早いからと言って、その場は収まったけれど、そのうちに、会う度に何度も体を求められて、渋々ラブホに連れて行かれようとした時に、寛子から連絡があって 『平は気を付けた方がいい、ヤリ逃げされて、泣いている娘がいるから』と言って知らせてくれたの。だから、その場を何とか逃げ切って、その後別れを切り出したの」

「やっぱアイツ,思っていた通りのやりチン野郎だったんだな、でも、その時の寛子には感謝だな」

「でも、そのあと、平には嫌がらせみたいな事をネットでされて、落ち込んでいたの、それでも、なんとか別れることが出来て、ホッとしたわ」

「大丈夫か?その、ネットでの誹謗とか中傷とかは...」

「もう今は、噂も無くなって、平も前に智也が決定的な収め方をしてくれたので、あれ以来何もないわ、あなたのお陰よ...」


 今度は 由がお返しのキスをする。そろそろ休憩時間も迫ってきているので、帰りの支度をしなければならない。


「ゆゆ、そろそろシャワー浴び直して、帰ろうか」

「そうだね、でもまたこんな時間がほしいな...」

「そうだな、近いうちにまた来ような」

「わ! なんか 智也 エッチな顔してる」

「男は誰も エッチいですよ、お嬢様」

「うふふ」

「あはは」


 そう言いながら、智也が掛けてあった布団を勢い良くはぎ取った。


「きゃ~~!!」

「うわ!!」


 二人とも、一糸も纏わない格好なので、ゆゆが慌てて布団を掻き寄せた。

 それを見ていた智也は。


「ゆゆ、もういいじゃん、お互い見せ合った仲なんだから、このまま二人で風呂場にいくぞ」

「え~~~~!!...」

「いいからいいから...」


 渋る 由の手を引いて、何も纏わぬ姿のまま、二人で風呂場に向かった。



                 ◇



「なになに? 由 なにか良い事あったの? 朝から顔がニヤけっぱなしなんだけど」

「そ、そう?」


 由と寛子がいつもの学食で喋っている。

 朝から機嫌のよい 由が、何かあると睨んだ寛子が、由を問い詰める。


「絶対何かあったな、コレは、白状しな! 由」

「なななんで...」

「ほう、動揺していますなあ...」

 目があっちこっちと、焦点が定まらない 由。


「じゃあコッチから攻めるよ?」


「......」


「はは、分かりやすいな...、やってしまったって顔してるぞ、由」

「!!!」

 引きつった顔の 由。


「あったり~!...、で どうだった? 智也は」


「ううううう...」

「もう分かってるんだから、言っちゃいな」


「あわわわわ...」

「日本語 喋れ!! 由」


 すると、由が小声で話し始める。


「と、智也と合体してしまいました」

「ほらね、やっぱり、でもロボットじゃあないんだから...、でどう?しあわせ?」

「うん! とってもしあわせよ」

「そっかそっか~...、良かったね 由、思いが叶えて、幸せになるんだよ」

「ありがとう 寛子」


 今となっては寛子も、私達二人の関係を、喜んで応援してくれている。



                 ◇



「あら、いらっしゃい。今日はひとみちゃん居ないのね」

「こんにちは、また美味しい物を食べに来ました」

「あとね、先輩の顔を見に来てるんですよ~、智也は」

「あら、嬉しいわ」


 短い会話の後、智也が はまちゃん のカウンター席に居る人物に目を見張った。

 夕方、そろそろココに、会社帰りの常連が寄りに来る頃だ。


「雅先輩!」


 その人物が智也を見た。ここの常連の 石仲いしなか みやびである。


「おお、智也か。お前もここに良く来るのか?」

「こんにちは。いえ、今日で2度目です」

「そっか~...、ココは美味いぞ、オレも会社の先輩と良く来るからな」

「そうすっか」


 それを見ていた、浜 雅 が。


「あれ?智也くんのこと知っているの、みやび」

「ああ、俺の行っている、ボクシングジムのオーナーの甥っ子なんだ、智也は」

「あ~、そうなんだ、智也くん 雅がお世話になってるわね、ありがとう」

「ええ?! お二人とも みやび さん なんですよね?」

「おお、そうだが」

「ち、ちなみに、もしかして雅さんの彼氏って...」

「おう!オレだが...何か? お前もオレの みやびを狙っているのか? ただじゃあ済まないぞ」

「まさか、オレにもココにカワイイ彼女が居ますから」

「ほう・・・、めっちゃカワイイ娘じゃないか、みやびには劣るがな・・・ははは」

「はあ~、ホントに先輩は~...」

「「あはははは...」」


 少し治まったところで。


「先輩、この娘は、オレの彼女で 高橋たかはし ゆゆです。可愛いでしょ?」

「お前にこんなカワイイ彼女が出来るとはな、良くやった」

「あり~っす!」


「もうこの辺でいいかしら、由ちゃん達、注文は何?」


 雅が注文を聞いてくるので、二人とも、先回の 由のおすすめ 玉子丼定食を頼んだ。


 ジムでは良く会う智也と雅だが、まさかココで合うとは思ってもみなかった。しかも、ココの 看板娘の 雅の彼氏とは、それもまた思ってもみない事で、意外に世間の繋がりが近いのを感じた。



                 ---



「へえ~そうなんですか、先輩は雅さんと、小学校3年からの幼馴染なンですか」

「そうなんだ。 その時からオレは一目惚れなんだ。絶対にコイツをオレの嫁さんいにするってな」

「え! 結婚してるんですか?」

「はは、婚約はしている。この近所で今、同棲をしているんだ」


「「同棲~...」」

 雅の左手の薬指を見て、智也と 由の声が重なった。


「なんだ?二人とも、同棲したいのか?」

「え~っと、何て言うか、最終的には結婚はしたいって、二人は思っているんです」

「俺たちは、どうせ結婚するなら、今のうちから 二人で実際に生活してみなさい って、双方の母親が進めてくれたんで、同棲をしているんだ、よな? みやび」

「そうよ。 結構楽しい事ばかりと思っていたけれど、実際に二人で生活してみると、意外に大変なのよ。でも最近は、生活も軌道に乗ってきたから、慣れてきたわね」

「だ、そうだ」

「二人とも社会人だから、生活には困らないと思いますが、俺たちはまだ、大学2年ですからね、しかも、まだ付き合ってから、数ヶ月だし」

「お互いの親にもまだ正式に挨拶してないんで、まずはそこからです」


「結構二人とも、本気だな」

「「はい!」」


 食事も終わり、色んなことを先輩カップルが指導してくれているのを、真剣に聞き入る二人。


「付き合っていくにあたって、多分だが、これから色んな事が起きてくるだろう。ま、実際に俺たちにも危ない時期があって、それを乗り越えて、今の俺たちがあるんだ。お前たちのコレからは、お前たちが決めるんだから、しっかりと相手を見て、いくんだぞ」

「「ありがとうございます」」


「困ったことがあったら、ミィ...雅に聞いてくれ、オレも協力するから」


 そこに...。


「こんばんは~...って、あれ? ゆゆちゃんじゃない、久しぶり、どうしたの?」

「あ、美沙先輩、こんばんは、今日は彼氏と、食事に来たんです」


 石仲 雅の妹 石仲いしなか 美沙みさだ、智也たちの通う大学の、4回生である。

「あらあら、美沙ちゃんも 由ちゃんの事を知っているのね、何だか世間って狭いわ~」

「お姉ちゃん 実は、大学の後輩なの、この子達」

「良く学食でカップル同士で合うんです...よね? 美沙先輩」

「うふふ・・・私と純也が、お昼食べてる時とかに、たまに一緒になって知り合ったの。お互い仲の良いカップル同士って事で」

 純也とは、石仲 美沙の彼氏で 中原なかはら 純也じゅんやと言う。


 カウンターとテーブル席で5人が会話していると、横から優しい声がした。


「あらあら、ここは仲良しさんグループね、何の相談なのかしら?」

 はまちゃんの 女将、美佐子みさこだ、雅の母親でもある。


「お母さん、今ね ここに居る5人皆が、同じ大学だってのに驚いているの。私たちは、卒業してるけれど」

「あれまあ、偶然ね。現役大学生と卒業生の会合ね、なら話が弾む訳だわ。みんな ゆっくりしていってね」

「「「「「は~い」」」」」


「うふふふ...」


 と言いつつ、美佐子はカウンターの向こうに引っ込んでいった。


「雅先輩のお母さんって、すごい美人なんですね、だから、先輩も美人なんだ・・・、理解して納得しました」

「智也くん、な...何か照れるな~」

「いいだろ~智也、でも、みやびは俺のモノだからな」

「はいはい!分かってますよ~...」


「「あ~はっはっは...」」

「「「うふふふ...」」」


 楽しい時間はあっという間に過ぎていき、定食を食べ終わった智也たちも、そろそろ帰る事にした。


「先輩、オレたちもう今日は帰りますね。雅先輩とっても美味しかったです」

「ありがとう、また来てね、待ってるから」


「「ご馳走様でした」」

「おう!じゃあまたな」


 会計を済まして、智也と由は智也の車で 由を送って行く。


 すごく楽しい時間を過ごし、先輩カップルが、結婚を間近に控えている事に、自分たちもああいう風に、和やかなカップルになれる事を願った。







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