11話
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西城の事件は、智也たちの勤める会社にも、かなりの影響が出て、刑事事件なってしまった事もあり、当然 取引は暫く中止になった。西城本人も現在身柄が警察にあり、取り調べ中である。
調べていくと、事件の経緯は、元々プレイボーイの異名を持つ西城だが、意外に学生の頃に憧れた女性の事が未だに忘れられず、初恋の女性に 由がとっても似ていたのが事の発端だと言う事だった。
まさか、初恋の思い出の、恋煩いが原因だったとは、西城も意外に芯は ウブ だったのを知った智也は、いくつになっても若い頃の恋は、その人を盲目にしてしまい、事によっては、その人を狂わす事になるという事を、意味深気に思った。
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あの事件から、数ヶ月後。
「お帰りなさい智也、お疲れ様」
「ただいま、ゆゆ。あれ?これは?」
「あ~コレ?、今日、実家に行ってきたら、持って行けって言われて...」
「凄い量だな、トウモロコシ...たべきれるか?ウチだけで」
「明日、智也の実家と 雅さんとこに、三分の二ほど持って行くわ」
「そうしてくれ、いくら何でもコレだけの量は、オレは好きだけど、無理だ、でも、嬉しいな」
「智也、好きだもんね」
「ゆゆの方が、断然好きだぞ!」
「......ばか」
「男は、好きな女の前では、バカになるんだよ」
「もう!ホントに...」
由は、会社を自己都合退職したいと願った。トラウマの残る倉庫が有る事での業務が、精神的気難しいと判断した 由は、退職を選んだが、会社側としては、残って欲しいと話し合いをして、朝9時出勤 午後3時退社のパートとして、事務所だけでのチェックの担当を引き続きする事になった。
智也の体調も元通りになり、最近は事件のお陰という事もあり、智也自体の業績が上がって、昇給がぐんと伸び、とうとう 智也と由は、比較的会社の近くにアパートを借り、同棲する事になった。
特に、由の両親が、事件で由の事を、身を挺して守った事に
「任せるから、二人が結婚するまで、一緒に暮らしてみなさい」
と言われ、智也の両親からも
「どうせ結婚するんでしょ? 今から慣れておきなさい」
と言われる始末である。
一度、智也の両親と、由の両親が和食処で、挨拶がてらの食事をしたが、特に母親たちが、気が合ってしまい、今ではメル友、ショプ友(買い物友達)になって、良く連絡を取るようになった。
また、父親同士も、コレまた良く はまちゃんに 出向くようになり、二人だけの小宴会を開き、母親たちに内緒で、コソコソと飲み合っているらしい。(バレバレだが)
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「ごめんね智也、一人だけフルで働かせて」
「何言ってるんだ、ゆゆがあのまま働いていたら、今頃多分、ストレスで、精神神経科で治療を受けていると思うぞ」
「ありがとう、感謝してます」
「いいって、むしろ、家事一切をやってもらって、オレの方が済まない気持ちでいっぱいだ、ありがとな ゆゆ」
「ともや~...」
「ゆゆ...」
「ちょっと待った!! お兄ちゃん」
「「え?!」」
「え? じゃないから...。もうホントに、偶に来てみたら、イチャイチャと...、全く、人が見てない時でもやってたのね、爆発しなさい、二人とも!」
「なんだ ひとみ」
「なんだじゃないの、お母さんがコレ持って行けって、渡されたの...はい」
「うわ!」
「こんなにレタス、どうするの?」
「何とかしてよお兄ちゃん、今朝、お祖母ちゃんの畑で摂れた、新鮮モノよ」
「それにしてもこの量...」
「智也、今からウチの実家と はまちゃん に行って、使ってもらおうよ」
「そうだな、雅さんにも連絡入れといてくれ」
「あ~~~!お兄ちゃん、私も行って良い?」
「ああいいぞ」
「やった~」
「なんだ?」
「えへへ、実はね、...」
ひとみが言うには、最近になって、浜ちゃんのお好み焼きが美味しい事に気が付いたひとみは、テイクアウトのお好み焼きを、智也のおごりで狙うのであった。
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「「こんばんは」」
「あら早いわね、連絡貰ってから10分くらいしか経ってないのに」
「お母さんが夕飯を作る前に来た方が良いと思い、すぐ来たの」
「ありがとうね、...まあ新鮮なレタス! ありがたいわ、大好きなのよ、智也くん、ご両親にお礼言っといてね」
「はい。喜んでもらって、良かったです」
「あれ?ひとみちゃんも居るの? 変わった組み合わせね、でも仲がいいのはいい事ね、こんばんは」
「おばさん、こんばんは。はい、由ちゃんはいいお姉ちゃんです」
「あら、なんか嬉しいわ、もうすぐ義姉妹だものね、由の事よろしくね、ひとみちゃん」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
「はいはい! お母さん、コレからもう一軒行くの、だからもう行くわね」
「そう、急ぎなのね、じゃあ気を付けてね、三人とも」
「「「は~い」」」
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智也の車をひとみが運転して、はまちゃんに向かう三人。
「運転上手くなったなひとみ」
「えへへ~。たまにお母さんと一緒に車で買い物に行ってるからね~、いい練習だよ」
「なるほどな、どうりで」
「ひとみちゃん、いよいよ卒業ね、会社の内定も決まっているし、よかったわね」
「うん、コレで春から、お兄ちゃん達と同じ社会人だからね。何か、ドキワクだよ~」
「複雑だな、ドキワクって...」
そう言っているうちに、はまちゃんに着く。 雅には連絡しておいたので、店に居るはずだ。
「「「こんばんは~」」」
「あらいらっしゃい、早かったのね」
雅が居た。待っててくれたのだが、横に 麗を抱いた夫の雅が居た。
「おう、智也。雅から聞いたぞ、ありがとな」
「いえいえ」
そう言って、袋いっぱいのシャキシャキレタスを雅に渡す。
「うわ、こんなに沢山、ありがとね、智也くん」
「いえいえ、メニューで使ってください」
「ありがたいわ、...おかあさ~ん...」
そう言って雅が奥に消えていった。
「先輩、麗ちゃん めっちゃカワイイっすね」
「ありがとな、母親に似て、可愛いんだ、オレ 毎日メロメロなんだ」
「あ~~~~、分かる気がします」
雅が由を見て。
「お前たちも、じきに結婚するんだろ、俺たちも同棲が長かったからな、やっぱ親を安心させるためには、結婚だな...、由ちゃんはどうなんだ?」
「はい、私は結婚はしてほしいですけど、実際に子供が出来たらと思うと、それからの見通しが見えてません」
「はは、子育ては一人でするもんじゃないぞ、由ちゃん。 以外に身内が助けてくれるからな、それに、会社も子育て制度がしっかりしている会社もあるんで、一人で何とかしようとは思わない事だ」
「なるほど、先輩、 俺たちも、お互い実家は近いんで、そんなに深刻に考える事はないんですね」
「そうだ! ま、俺たちだって子育て先輩だし、雅にも聞けよ」
「あ! 子育て大先輩が、二人居た」
「気が付くのが遅いぞ智也」
「すんません」
「...で、いつ子供が出来るんだ?」
そう言った瞬間に、由が顔を真っ赤にして、爆発した。
「いや、もう...、恥ずかしい、智也...」
「先輩! 結婚が先ですよ」
「まあ、順番はな」
会話をしていると、奥から女将の美佐子が出てきた。
「ありがとね~、智也くん、すごい新鮮で、助かるわ~。メニューに使わせてもらうわね、ホントにありがとう」
「いえいえ」
「あれ? ひとみちゃんも居るのね、付き添いかしら?」
「いえ、多分こいつはここのお好み焼きを、オレに奢って欲しくって、付いて来ているだけです」
「う!......」
「図星だな、ひとみ」
「お、お兄ちゃん...」
みんなで大笑いをする。 ひとみが顔を赤くしているが、開き直って。
「お兄ちゃん、私 はまスぺ が欲しい!」
「お、潔いな。分かった、俺たちの分も入れて、3枚お願い出来ますか?」
「分かったわ、毎度ありがとうございます」
そう言って、美佐子が厨房にいる政士に向かって、注文した。
一瞬、政士の口角が上がった気がした。
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テイクアウトの はまスぺ を受け取り、ひとみも送ってから智也と由はアパートに帰ってきた。
「凄い一日だったな~」
「宅配の日だったね」
「やっと落ち着いたな」
「コーヒー淹れようか?」
「頼む」
*
智也は、由の後ろ姿を見ながら、初めて出会った時の事を、懐かしく思い出していた。
(本当に偶然だったな、あの時俺が図書館に行かなかったら、未だにオレはフリーで居たかもしれないのに、あの小事件が、ここまで二人を結びつけるなんて、思っても見なかったな)
【「明日も見ますから、この時間にこのテーブルに来てくださいね」
「そんな悪いですよ」
「いいんです。私のエゴですから、あ!それと、逃げないように、連絡先をお願いします」】
(懐かしいな、あのやり取りがあったから、いまこうして、 ゆゆと、結婚前の同棲生活があるんだな)
「何?智也、私を見て...、惚れ直したの?」
「惚れるのは、毎日進化してるぞ、ゆゆが可愛すぎるから」
「......」
「はは、どうだ参ったか?...」
「う~~~......えい!」
「うむぅ......」
「むちゅ!~......」
「う~......」
思いっきり、由にキスをされている 智也、中々許してくれない様子だ。
「ポはっ!!......、参った ゆゆ」
「私だけを見てなさい、智也」
「わ、分かった......って、えい!!」
「きゃ~!!」
最後は結局 智也に襲われる 由であった。
* * *
-僕(俺)たちの馴れ初めから- 今日まで、色んな事があったけど、数年かけて、どうやらこの二人は上手くいきました。
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結婚後のストーリーも考えていますが、一応区切りにしたいと思います。
今までお読み下さってありがとうございました。
雅也




