4-13
「ここに居るみんなは……今後はどうしたいと思っているの? 騎士団の中で認められて、落ちこぼれの座を脱却して、誰もが認める立派な騎士になりたいとか?」
ヴァレリーが聞くが、皆なんとも言えない顔をしている。そうだ、とはっきりは言えないということは、迷いがあるのだろう。
「……初めはそんなつもりもあったんだけれどなぁ」
エルマーは頭をがりがりと掻きながら言う。
「だがここに来て、真面目に訓練を受けた結果、自分は騎士には向いていないということが分かった」
「だが、だからといってなにに向いているかは分からない」
とは、ファビアンの言葉だ。
「騎士を辞めて他に行き場所もない。家のことを考えればなんとでもなるかもしれないが、仮にも子爵家の息子が、と考えると、ここを出てどこに行けばいいか」
ハルトムートの家は確かかなり厳しい家で、家柄もいい。
家は兄が継いでいるといい、彼のすぐ上の兄がその手伝いをしているという。そうなると彼に残された道は騎士になるか修道士になるか、城に仕えるか、である。
「今の、騎士としてなんの役にも立っていない状態がいいとは思っていない」
ライムントは物憂げな表情で言う。
「だが、騎士団の厳しい訓練にも厳しい規律にも正直ついていけない。ならば騎士団の中になにか役割があるか。補給隊や救護隊など。しかしそれは別の者たちがしているから、俺たちがそこに入っていくのも」
「いやしかし、役に立っていないという点ではこの蒼聖騎士団はなにかの役に立っているのか? 戦はもうずいぶんと長い間起きていない。今後も起こるかどうか分からない。そんな中で騎士団など」
バルトルトは吐き捨てるように言う。
「まあ、そういう考え方もあるが……」
「私はライムントの考え方はいいと思うの。騎士団の中で騎士としてなにか他の役割を模索できれば、ここに残ることもできると思うのよね。みんな、ここには居たいと思っているんでしょう?」
すると、皆一様に首を縦に振った。
「……ここを離れたら、どこに行けばいいか分からない……」
無口なイザークもそう言う。
ならば教官として、どうにか皆をここに居られるように、彼らになにか騎士団の中に役割を与えられればいいのだろう。
「とにかく、私たちは真面目に訓練をしているふりをして……」
「そのふり、というのが他の教官と違うな」
ファビアンが言うと、皆が一斉に笑った。
「ちょっと時間稼ぎをしながら、あれこれ模索してみましょう。私はまだ騎士団のことはよく分からないし……なんとか全員解雇なんてことを回避できる手があるかもしれないわ」
「ヴァレリー教官は、悪巧みになれているな」
ハルトムートが愉快そうに言う。
「そうなのよね……たぶんリヒャルトの影響だと思うんだけれど。本当に彼は悪巧みの天才で……」
「そうかな? ヴァレリー教官がこんなふうだから、リヒャルト皇太子も調子になってあれこれ企んだのではないか?」
ファビアンの言葉に全員が同意するように頷き、そしてまた笑いが生まれた。
そして、そろそろ出立の準備をした方がいいかとしていたときだった。向こうの方から馬の足音が聞こえてきたような気がした。
かすかな音だ。気のせいかも、と思っていたところで
「……何者か来るようですね」
バルトルトがヴァレリーの横にしゃがみ込み、そっと耳打ちをするように言う。
「え? 分かるの?」
「ええ。恐らくは一頭でしょう。こちらへ向かって来ているようです。かなり急いでいるような」
「まさか、そんなことまで分かるの?」
「ええ、耳だけはいいんです」
バルトルトはなんでもなさそうに言うが、これは騎士として優れた能力なのではないかと思う。本当になぜ、彼らが落ちこぼれ扱いされているのか訳が分からない。
「どこか……街道の方にでも向かっているのかしら?」
「そうですね、そうかもしれません」
しかし、ヴァレリーの予想を他所に、蹄の音はどんどんこちらに近づいてきた。
バルトルトとデニスがその様子を見に行ってしまい、やがてこちらに向けて叫ぶ声が聞こえた。
「カザイル様でした!」
バルトルトの声だろう。彼の姿はもうこちらからは見えないところにあるのに、はっきりと聞こえてきた。




