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4-12

「ベネディクト、と言うのね」


「あいつのことならば放っておいていいです」


 ファビアンは投げやりに言ってチッと舌打ちをした。


「こちらの言うことなんてなにも聞かないんだからな」


「と、いうことは、そのベネディクトのことを気にして、彼になにかの助言をしたのね」


「気にした、というほどではありませんが。一応、同室なので」


「同室……」


「はい。俺たち下っ端騎士は、寄宿舎では三人部屋に押し込められるんです」


 ヴァレリーが首を傾げていると、すぐにデニスが解説をしてくれた。


「俺はエルマーとハルトムートと同室です。イザークとバルトルト、ライムントがもうひとつの部屋で、ファビアンとベネディクトが同室です。第八十九分隊に騎士が入れば、ファビアンたちの部屋に入ることになると思います」


「なるほど」


「ベネディクトのことは気にしなくていいですよ」


 エルマーはそう言いつつ頭を振る。


「部屋から出てこないんです。騎士の訓練を一切無視して」


「あらら、そんな事情なのね?」


 部屋に引きこもっているような者を騎士として居続けさせているなんて、たぶん他の騎士団だったら考えられないだろうな、と思いつつも更に質問をする。


「いつからなのかしら? 最近のこと?」


「……いえ、もう二年になりますね」


「それはなかなかの問題児ね」


「寄宿舎の寮母がいけないんですよ、あいつを甘やかすから。あいつ、みんなが出払ってから寮母に部屋に食事を運んでもらって食っているんです」


 ファビアンはとても気に食わないという、投げやりな言い方だ。同室ということもあり、いろいろと溜まっているのだろう。


「なんでも、あいつの母親からくれぐれもあいつのことを頼むって手紙を寮母さんが受け取ったらしいぜ。あいつ、故郷に居たときから部屋に閉じこもりがちで、このままではいけないと父親が無理やり騎士団に入団させたんだ。ここで見捨てられたら、もう行き場がないからどうにか頼むって綴られていたらしい。で、その手紙を読んで感激した寮母さんが、自分がどうにかするからって」


 と、エルマー。


「あんな者、すぐに追い出せばいいのに。いや、普通ならばいくらなんでも面目なくて出て行くと思うのだが。なにしろ騎士としての一切を拒否しているのだ。それをずうずうしく留まり続けて」


 と、バルバルト。彼はずいぶんベネディクトのことを厳しく思っているようだ。


「でもまあ、部屋から出たくないのを無理強いするのもねぇ」


 ヴァレリーが言うと、みんな、生ぬるい表情となった。なんだろう、これは寮母のように甘い、と思われているのだろうか。


「ベネディクトとはお話することはできるのかしら? お話するのも難しい雰囲気?」


 ファビアンの方を向いてそう聞くと、彼はどうかな、と首を傾げた。


「俺たちとはあまり口を利いてくれませんが、寮母とは話しているようなので、不可能ではないと思いますが」


「ヴァレリー様、あんな者のことは放っておいていいですよ。自ら望んで顔を出さないのだから」


 バルトルトはそう言うが、そういうわけにはいかない。

 一度は会って話をしてみたい。たぶん、彼も今のままでいいとは思っていないだろう……とは勝手な想像なのだろうか。


「そうです。ヴァレリー教官は素晴らしいお方で、優れた教育者であるだろうが、ベネディクトだけは無理です」


「まあ、お褒めの言葉をありがとう。でも、一度くらいお話を聞いた方が……」


「ヴァレリー教官でも、彼だけは無理です」


「忘れた方がいい」


「第八十九分隊は、最初から七人と思っていただくだとか」


 そこまで無理だと言われると逆に気になってしまう。とにかく、一度は話を聞いてみるわね、と答えておいた。

 それから、騎士たちとあれこれと話ができた。

 食事をしながらの話だったので、みんなくつろいだ雰囲気で、いろいろな話をしてくれた。

 この前のキャンプと面談をしたこともあってなのか、かなり心を開いて話ができるようになっているなという手ごたえがあった。

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