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家に彼女がやってくる!?  作者: 奥山颯
家に彼女がやってくる。
3/4

転:牧志拓哉は閃いた。

(さかのぼ)る事15分前


「すまん、ちょっと電話」


そう言って歩はキッチンの方へ消えてゆく。

拓哉は「あいあーい」と投げやりな返事をした。


どうせすぐ戻ってくるだろう。


そう思ってまた動画を見始ようとした。



だが、



『もしもし、翠?急に電話なんて珍しいじゃん。どうした?』




電話の内容がドア越しでも丸聞こえだった。

思わず拓哉はスマートフォンをマナーモードにして耳を澄ませる。


『えっと、今からかあ。ちょっと今レポートやっててさ』


歩のあからさまな嘘に、拓哉は呆れた。





あれ、待てよ。翠?


拓哉たちの知り合いでみどりと言えば、成績優秀(せいせきゆうしゅう)容姿端麗(ようしたんれい)の赤嶺翠しか居なかった。


えっ、歩の家に赤嶺さんが来る?どういうことだ?






















えっ、まさか付き合ってる!?


いやいやいやいやいや待て、前に歩は彼女がいないと言っていた。

流石に親友である俺に嘘を吐くか?


そんなわけはない。あの歩が俺に嘘を吐くわけがない。



あ、待てよ。


来月俺誕生日だな。







さては、サプライズの計画!?


これは可能性がありそうだな。


来月の俺の誕生日のために今から誕生日パーティーの計画を練ってくれるのだろうか。


そう思いながらさらに耳を澄ますと、煙草をふかす音と共に「どうしよっかなあ」とか「いやでもなあ」とぶつぶつ呟く声が聞こえた。


ここで拓哉の中で確信に変わった。


自分の誕生日についてだと!!


ここまで悩んでくれるなんて…と拓哉はとても嬉しくなった。


やがて、歩が部屋に戻った。


拓哉は咄嗟(とっさ)誤魔化(ごまか)すためにスマートフォンを見る。


「拓哉、何見てんの?」


「いや、別に何でもないよ」


さっきまで歩の事を盗み聞きしていたのだ。当然何も見てはいなかった。


「今日何時まで居る予定?」


歩のこの発言は、相当帰ってほしいオーラが出ていた。

拓哉は、

俺の誕生日のサプライズを、俺が聞いちゃだめだよな。と思い、


「んー、もうすぐ帰るかな」


と言った。


「あ、そうなの?いつもは泊まるか大体終電まで居るじゃん」


「だって―」


拓哉はスッと歩の方に顔をあげた。


「今からここに赤嶺さん来るんだろ?」


「……え?」


拓哉には、歩が絶望したような顔をしているように見えた。


それもそのはず、サプライズの電話が聞かれたかもしれないのだから当然か。と拓哉は思った。


「分かってるよ、俺が居たら邪魔だもんな。帰るよ」


「あ、いや…」


歩は少し答えにくそうだった。


「そんな顔しないでくれ、むしろ俺は嬉しいんだよ」


「えっ、どういうこと?」


歩はバッと拓哉の方を見た。


「俺はお前が()()()()()()()()()()()()()のが嬉しいんだ」


「えっ」


「えっ?」


「えっ!?」


「えっ、どゆこと?」


歩は拓哉の言うことが理解できないといった風な様子でそのまま続けた。


「お前は()()()()()()()()()()を嬉しく思ってくれてるんじゃないのか?」


「えっ」


「えっ」


「えっ?待って?お前赤嶺さんと付き合ってんの?」


「えっ、知らなかったの?」


「だって…俺の誕生日の話じゃないの?って待って、お前………」


歩は拓哉から目を逸らした気がする。


「あの、これは」


「じゃあ、赤嶺さんに俺の話とかしたことあんの?」


「えっ」


「だーかーらー、赤嶺さんに俺の話をしたことあるのかって聞いてるんだけど」


「そ、そりゃあまあ、お前はよく遊ぶ友達だし、話くらいはするよ」


「赤嶺さんは旭橋(あさひばし)さんに俺の話してるかな?」










「はい?」


「お前の彼女の赤嶺さんは、親友の旭橋さんに俺の話してるかなあって」


「いや流石にそこまで知らないけど」


「そっか」


「まさかお前…旭橋さんの事…」


「ああ、好きだよ!!!」


拓哉は少し頬を赤らめた。




「マジかよ…」



室内に沈黙が流れる。出会ってからの1年半で一番と言っていいほど気まずい空気が部屋中を包み込んでいた。


狂いそうなほど長い沈黙を破ったのは、突然鳴り響いたインターホンの音だった。


歩がゆっくりとドアへ近づく。

凄まじい緊張感破るように開けたドアの先に立っていたのは、二人の女性だった。


「やっほー、さっきたまたまそこで会ってさ、連れて来ちゃった」


そこに立っていたのは、拓哉の片想いの相手、旭橋春香(あさひばしはるか)だった。

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