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890:狂乱的哲学

モスクワ陥落の報は嬉しい知らせではあるが、決戦の地がカザン・クレムリンになりそうなのは歴史として大変興味深いものだ。

何故なら、史実においてカザン・クレムリンでの戦いがプガチョフにとって天下分け目の戦いになったからだ。


カザン・クレムリンはプガチョフの乱が起こった際に、決戦場としてロシア軍と対峙した場所であり、この戦いでは初期にはプガチョフの反乱軍が優位に戦いを進めていたが、途中でロシア軍の増援が来たことで形成が逆転。

最終的にプガチョフの軍勢は散り散りになってしまい、彼は捕らえられた末に処刑されたというのがプガチョフの乱の末路だ。


カザン・クレムリンに移動したという事は、コーカサス方面では北上をしなければならないわけだし、現在オスマン帝国を支援している欧州協定機構軍も来年5月までには北米複合産業共同体との戦争に備えて本国に戻って来なければならない。

そのため、どこまで領土を年内から来年5月まで奪還できるかが焦点になりそうだ。


「オスマン帝国側としても決着を付けたいだろうが……まだモスクワの方面が敗れたとしても、オスマン帝国方面にいる救世ロシア神国軍の対処はどうなるか?」

「これらの地域に関しては、最低でもイスタンブールを解放後に南下してくる新ロシア帝国軍と挟撃する形で東欧方面に進軍したします。旧ワラキア公国首都トゥルゴヴィシュテの地を救世ロシア神国軍オスマン帝国派遣方面隊の終焉の地にする予定です」

「つまり、その地を最期に東欧から駆逐するつもりか……うむ、確かにいまだオスマン帝国方面ではそれなりに戦力を保有しているのであれば、人的資源に対抗してすり潰すしか方法がないな……」

「彼らの基本戦略が『大量突撃』であり、これらの人間による大波によって前線が突破された経験を元に、徹底してかの国の軍隊に関しては戦闘員を殲滅する以外に解決方法がありません……イスタンブール解放後には旧ワラキア公国方面を目指し、その間に集落を解放しながら戦闘員を殲滅します」

「殲滅か……やはりそれしか解決手段はないようだな」


デオン曰く、オスマン帝国方面を侵略した救世ロシア神国軍の兵士に関しては無理やり徴収された兵であったり、少年兵以外に関しては”捕虜を取る必要が無い”と進言していた。

この理由を尋ねたところ、その多くが占領地域において婦女暴行や略奪、そして独自判断で私刑行為などが横行しており、中には無理やり家族を引き離した末に暴行を行って死なせた事例が幾つもあるからだと語っていた。


その中でも、正教会やイスラム教のモスクなどを襲撃した末に、関係者を全員暴行をした上で首を斬り落としてこれらの宗教施設で串刺しにした状態で飾っていた案件などが確認されたからだと語っていた。


ロンドン革命政府の件でもそうだったが、彼らは狂信的になればなるほどコミュニティの団結と引き換えに、蛮族ムーブをかまして残虐なやり方で処刑方法などを行うそうだ。

これは古今東西変わらないようだ。


悲しいことに、救世ロシア神国軍の占領していたエリアでは、正教会系の牧師やシスターが集団虐殺されている跡が見つかっており、住民の証言によって集団で遺体を放置した様子なども克明に記録されていたのだ。

こうした状況が一か所ではなく、ロシア領内や占領地域内で多く発生していたことを鑑みても、彼らの行っている行為がかなり野蛮であったことが伺える。


「東欧地域を経由してオスマン帝国に侵攻した軍勢の多くが、プガチョフの命令とはいえ婦女暴行や略奪、そして住民の強制徴兵などを行って狼藉行為を行っていた事でも知られております。彼らの多くがこの事を恥ではなく誇りであると語っており、彼らが占領した地域では多くの文化遺産が破壊されたり家族が離れ離れになってしまったケースが多く聞かれております。故に、彼らの行った犯罪を野放しにすることは出来ないのです」

「歴史的建造物を破壊しただけでなく、集団で婦女暴行を行った事を考えれば、死刑はやむを得ないな……」


この時代では、民主的な裁判を行わなくても軍事裁判によって現場指揮官の指示で処刑することも許されている。

救世ロシア神国軍による蛮行が明るみになるにつれて、彼らを擁護することはできないし……成人兵士に関しては死刑以外の選択肢はないだろう。


彼らは阿片を服用してトリップをした状態で集団交配を強制していたようで、その中には未成年者も多く含まれており、特に女性の性被害が著しく高いことでも知られている。

見ず知らずの男性に襲われた末に、男性の子供を宿してもその子供は神の元で教育を受けるという名目で離れ離れになってしまうのだ。

結果として、父親が誰か分からない子供がロシアだけでなく東欧やオスマン帝国に多く生誕することになってしまい、これが戦後処理の課題として欧州協定機構においてどうするか議論の的にもなっているのだ。


「所謂、プガチョフの子供たちですが……彼らの多くが家族から離された状態で教育を受けておりました。ロシア国内だけでも340万人以上、東欧やオスマン帝国の救世ロシア神国占領地域には150万人もいると見られており、これらの子供たちをどうするかで新ロシア帝国政府も困っているとのことです」

「多くの子供が意図的に離れ離れにされた上に、プガチョフを称えるように洗脳されている状態であれば、尚更家族の元に返すのは難しいだろうね……」

「やはり、陛下もそう思いますか?」

「何せ戦乱で家族がバラバラになっている上に、ロシア領であれば村に行けばまだ生家に帰宅できる望みがあるが、占領地域では救世ロシア神国を嫌っている人も多いだろう。そういった地域では帰還することすら忌み嫌われる場合もあるだろうし、場所が判明しても家族や親族が帰還を拒絶するリスクが高い……これらの子供たちは複数箇所に分けて農園等の集団生活ができる場所を提供して、そこで暮らしていくしかないかもしれないな……」

「スウェーデンが主体となって、少年らの再教育……及び、プガチョフの教えなどを取りやめるために予算と人員を割り振るそうですが、スウェーデン軍は当面の間ロシアから動けないのは確実になりますね……」


家族とバラバラになっただけでなく、故郷への帰還も望めない。

カルト国家における最大の被害者たちは、各地の集団移住場所において村を形成するしか望みがないと語るほどであった。


その多くがロシア南部地域の寒村地域であり、新ロシア帝国内部でもまだ開拓などが進んでいない地域の開拓事業員として動員するという。

最も、高等教育などを受けた子供たちもごく少数ながら存在しているようであり、そうした子供たちに関しては商人などの教育が活かされる職業に割り振ることが決まっているようだ。

最も、数百万人に及ぶ子供たちが幾つかのグループに分かれて集団生活を余儀なくされるのは、あまりにも辛いだろう。


子供が両親の事を覚えているようであれば、各地に貼り紙を出して家族や親族が帰還を望んだ場合のみ、帰還できるようにするように手配をする。

それに関してはロシアに派遣している国土管理局の職員らと協力して情報収集にあたるとしよう。

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