表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

868/1022

866:活性化

新ロシア帝国からの賠償金なども長くなる一方で、オスマン帝国との結び付きを深めることもある意味では重要だ。

かの地域で情勢不安が起これば、地中海や南アジア地域の不安定化に繋がってしまう。

特に、個人的に心配しているのはオスマン帝国が崩壊ような事態になれば、南に控えているペルシャが侵攻してくる可能性もある。


この時代のペルシャは色んな王朝が様変わりしていた不安定な時期だったこともあるが、現在ではコーカサス地方とアナトリア半島北部から侵攻をしてきた救世ロシア神国を迎撃しているはずだ。

コーカサス地方の重要性として、かの地域はイスラム教とキリスト教の境目に位置しており、20世紀初頭からはアゼルバイジャン地域に石油や天然ガスなどの天然資源が埋蔵されていることが発覚し、支配権を持っていたソビエト連邦では戦車や戦闘機などの燃料を供給する貴重な地域でもあった。


この地域がナチスドイツによって占領されていたら、ソ連軍の機械化師団や戦闘機旅団などは行動が著しく制限されて活動が困難になったのではないかと言われているぐらいに、歴史的にも資源的にも重要な地域だ。


その地域の支配権を巡り、救世ロシア神国、オスマン帝国、ペルシャの三か国が三つ巴の状態となれば、コーカサス地方の不安定化をキッカケとした戦争が起こるようになり、もしそうなってしまった場合には戦力や国土を喪失しているオスマン帝国にとって、手痛い代償となる可能性が高いのだ。

下手すれば、アナトリア半島東部地域を救世ロシア神国排除の名目で占領される可能性が高い。


(オスマン帝国も一定の力を有していない状態が続けば、隣国であるペルシャが攻めてくるかもしれん……そうなると厄介だな……)


この地域でペルシャの権威などが拡大すれば将来的にロシアが実効支配をしていた地域であるコーカサス方面もペルシャによって占領されていくだろう。

そうなれば、ペルシャは史実よりも地域大国として君臨し、今後フランスに対しても何かしらの行動を起こすことが想定される。


「今、オスマン帝国が倒れた場合、南にはペルシャがおります。そのペルシャが治安維持を名目に侵攻を開始する恐れがあります」

「ペルシャですか?今は様々な王朝が繰り返していると聞いておりましたが……」

「コーカサス地方を制した救世ロシア神国軍がペルシャにも侵攻しているのです。ペルシャ側はそれまでの国内の対立を一新して王朝が統一化され、北部地域に軍を派遣して交戦しております」

「オスマン帝国だけではなくペルシャにも……では、オスマン帝国がアナトリア半島の奪還に手こずれば、それだけアナトリア半島にも影響力を増やしてくるという事ですな?」

「その通りです、アナトリア半島にコーカサス地方……どちらもオスマン帝国やペルシャ、それに救世ロシア神国にとっても重要な土地です。この土地を巡って三か国が三つ巴の戦いを行う事態になれば、主戦場はモスクワからコーカサスに移るでしょう。ヨーロッパ方面は当面安全にはなりますが、コーカサスで血みどろの戦場が続けば、オスマン帝国の不安定化の要素になり得ますね……」


アナトリア半島北部を制圧した救世ロシア神国を撃退する名目で、オスマン帝国領を占拠し続けて実効支配を強めることも考えられる。

この時代のペルシャは地域大国ではなかったはずだが、史実よりもインド方面がイギリスの植民地化がされていない点と、マイソール王国の軍事強大化によって対峙しているムガール帝国との間で協定を結んだ関係で、南アジア地域ではそれ相応の国家に成長している。


ロンドン革命によるグレートブリテン王国内戦がこういった形で響くことになるとはな……。

少し革命の影響が尾を引いて世界に波及しているが、ここで立ち止まるわけにはいかない。


アナトリア半島北部の救世ロシア神国を制圧する時間が勝負になる。

オスマン帝国に既に入国した欧州協定機構軍のうち4個師団はオスマン帝国軍と共に海岸線に沿ってイスタンブールを攻略し、残りは守備として南部の都市の守りにつくはずだ。


イスタンブールの解放が最優先なのも、アナトリア半島への補給路の一つであり、ここを遮断できれば救世ロシア神国は海上輸送か、コーカサス方面からの迂回路しかなくなる。

地中海と黒海の入り口であるボスポラス海峡を封鎖することができれば、救世ロシア神国を支援している北米複合産業共同体の密航船団も入ることは出来なくなるだろう。


「オスマン帝国を支援しているフランス主力の欧州協定機構軍はイズミルを中継地点とし、このイズミルから北上してイスタンブールを解放する作戦を展開します。モスクワとイスタンブール……救世ロシア神国にとって、重要拠点が同時に攻撃されれば、どちらかを放棄しなければ生き残れません」

「では、同時攻撃は3ヶ月後ぐらいですかな?」

「ええ、そのくらいがいいでしょう。モスクワが堕ちれば彼らは東部方面に撤退するでしょうし、イスタンブールが堕ちれば残存兵力は東欧を経由してウクライナ方面に向かうはずです」


決戦の地はどこになるか……。

少なくとも、首都であるモスクワを放棄してもカザン・クレムリン宮殿に拠点を移すだろう。

これはロシアでも東部地域に当たるが、そこそこ奥地でもある。

プガチョフは史実ではカザンクレムリンで戦うも敗走し、そこで組織的な反乱が終結した地でもある。

ウクライナのクリミア半島地域までは、欧州協定機構軍は手伝えるが、それ以降の奥地となると補給面から難しくなる。


へルソンからカザンクレムリンまでは1900km以上も距離があり、小舟などの移動手段を使ったとしても徒歩による移動だけで3か月はかかる。

これが軍装備一式そろえて野戦砲などを保有しているとなれば、さらに移動に時間が掛かる。

それに加えて、これらの地域ではプガチョフへの忠誠心が根強く、彼らは『ピョートル降臨神が降り立った神の地』としてカザンクレムリンを聖域に指定しているぐらいだ。


カザンクレムリンの攻略を行うのであれば、それこそ今の派遣している兵力の10倍を持ってこなければならない上に、オスマン帝国との戦争によって男女関係なく根こそぎ動員がされている関係で、ロシア国内の多くで農民や元農奴の人手が足りず、行く先々での兵站が確保できない。

モスクワやへルソン方面までは奪還したとしても、それより東側までの確保は難しい。


理想的なのは、モスクワでプガチョフを捕らえた上で死刑回避を引き換えに取引を行うことだ。

その取引は、ロシアの占領している大部分の土地を変換する代わりに、カザンクレムリンを含めたカザン地域の自治区とした範囲内で彼に政治権力を持たせない状態で余生を過ごさせる方法だ。

カザン地域で人気のある彼を処刑すれば、第二・第三の反乱勢力が息を吹き返す可能性が高い。

であれば、彼を生かす代わりに二度と余計な事をしないように見張りを付けたうえで監視する。

救世ロシア神国を解体するには、彼のカリスマ性と支持を見るに下手に処刑しないほうが無難なのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー

☆2020年9月15日に一二三書房様のレーベル、サーガフォレスト様より第一巻が発売されます。下記の書報詳細ページを経由してアマゾン予約ページにいけます☆

書報詳細ページ

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ