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849:冬季攻勢

「陛下、フランスからさらに増援を送ることは可能でしょうか?」

「……うむ、既に我が国は陸軍4個師団を派兵しているが、あくまでも彼らはミンスクの防衛用に特化した装備などを整えている部隊だ。逆侵攻用の兵器を有してはいない……仮に逆侵攻に同調して救世ロシア神国領を攻撃するとしても、まずは旧ロシア帝国領から彼らを一掃させなければならない。追加の兵員を送るにしても、先ずは内閣の閣議で決定しなければならない。それまでは回答を保留にしたい」

「畏まりました。本日はお忙しい中、お時間を取らせていただき感謝致します」


フェルセンとの会合が終わる。

やはり救世ロシア神国領へ逆侵攻をするために、フランスからの増援も期待しているようだ。

俺としても、かの国がこれ以上滅茶苦茶になって、歴史ある正教会の建物が破壊されたり、国民が阿片漬け状態になって廃人同様になる事は避けたいが、ある程度の数が阿片中毒になっているのは覚悟したほうがいい。


特に、男女無差別に集団交配という名の誰が父親か分からないほどに性に乱れているのを強要している状態であることを踏まえると、占領地でも同様の行為を繰り返し行っているため、これらの地域では出生率はとても高くなっているそうだ。

……それと同時に、集団交配によって誕生した子供の多くが救世ロシア神国領に送られるため、占領地における子供の数は著しく減少しているという報告もある。


ただ、すぐに逆侵攻に関する事を決めるわけにはいかない。

現在のフランスの財政を考えて行動しなければならない。

今のところ、まだプロイセン王国との戦いで消耗した兵力の補充がどのくらい完了したのか聞いていないし、仮に派兵するとしてもどのくらいの戦力までなら財政として問題ないのか確認しないとね。


プロイセン王国との戦いでは莫大な金額の国庫を消費してしまった。

賠償金の代わりに、プロイセン王国が有していた土地を割譲したりもしたが、それでも戦費で使った金額は一年間の国家予算に匹敵する金額だ。


とにかく戦争はお金を使う。

日露戦争時の日本では当時の国家予算の収益の5年分に匹敵する金額を使ったし、その時に作った借金を完済できたのは80年後の1986年頃と言われている。

それぐらいに、戦争で使われるお金は莫大であり、安易にホイホイと戦争すると当然お金がすっ飛んでいってしまう。


史実のフランス革命の遠因になったのも、ルイ16世が対イギリス目的でアメリカ独立戦争を支持して軍を義勇軍として派兵したのも要因が大きい。

莫大な戦費を使ったものの、フランスが得られたのは南米の小さな植民地だけであり、賠償金などはとれなかったのだ。

その結果、財政が悪化してフランス革命の要因になったとも言われている。


(もうすでに軍隊は派兵しているしな……4個師団いえど……これはネッケルが財政的に問題ない師団だったはず。これ以上増やしてしまうとなると彼も反発するだろうし、内閣のメンバーを招集して協議したほうがいいな……)


フェルセンとの会合を終えた後、スウェーデンが救世ロシア神国領に逆侵攻をしたことを踏まえた上で、現在のフランス軍戦力でこれらの地域を制圧することが可能かどうか、内閣を招集して協議することになったのである。


陸軍大臣や海軍大臣などはそれぞれこう述べた。


「陸軍としては現在装備を更新した第8師団、及び休息を終えた第16師団、第22師団の派兵でしたら可能です。民間人への志願制も可能ではありますが、先のプロイセン王国との戦いの際に消耗した兵力を補充することを鑑みれば、追加派兵するのは最大でも我が国からは3個師団……王国軍の精鋭である『フランス王立独立師団』も投入可能ですが、こちらの師団は一般の師団にはない特別な武装であったり、蒸気機関を応用した兵器群を率先して配備しているため、メンテナンスのために補給旅団や整備・工兵部隊を追加で派兵する必要が出てきてしまいます」

「つまるところ、王国の陸軍の精鋭を投入するとなれば実質的に5個師団規模になるというわけだね?」

「はい、海軍による輸送さえ滞りなく行ってもらえれば、これらの師団を来年2月までにはポーランドないし新ロシア帝国領であるサンクトペテルブルグ方面に輸送できます。海上輸送であれば、陸路よりも早く到達できます」

「海軍はどうかね?」

「はっ、海軍といたしましては対北米複合産業共同体との戦闘を想定して兵力と装備の増強を行っており、今回の派兵要請に関しましては輸送は可能ではあります」


陸海軍はそれぞれ兵力の派兵に関しては正規軍で対応することが可能であると述べてくれた。

特に、新しくフランス王国で創設された精鋭部隊である「フランス王立独立師団」に関しては、蒸気機関の最新技術を詰め込んだ装備品で武装しており、空気式連射銃は勿論のことだが蒸気野戦砲も最新式のものに換装している。


「王立独立師団に配備されたばかりの新型銃を使う機会でもあります。軍としても、動員するのであれば精鋭を使うべきであると進言いたします」

「……つまり、あの回転式銃を使うという事かね?」

「はい、今までのマスケット銃と比べても一定の威力・精度を誇る銃です。これまでの戦術を変える銃と言っても過言ではありません」


特に、一番目を見張るのが紙薬莢とはいえ、回転式銃の開発に成功しているのだ。

所謂リボルバーと呼ばれている拳銃といえば分かりやすいだろう。

撃鉄部分とシリンダーが連動して発砲する仕組みとなっており、短時間に3発の連射が可能になった火薬式の銃である。


空気銃や蒸気機関を応用して作られた機関銃なども目を見張るが、やはり俺個人としてはこのリボルバーが開発されて配備されたことが一番衝撃的でもあった。

空気銃に関しては、この世界の技術でも十分に応用可能ではあったし、オーストリアでは空気銃で編成された部隊も史実で存在していたので、その発展形として見れば問題はない。


ただ、このリボルバーに関しては薬莢内にある弾丸を発射させる技術を取り入れている上、端的に言えば銃用雷管ともいえる技術を集約し、撃鉄を撃ちこめば発射できるようにしている。

史実で最初期に開発された雷管式の銃弾の登場は18世紀前半頃と言われているので、実に30年……いや40年以上技術を先取りしているのだ。


(史実ではコルト氏のリボルバーが撃鉄とシリンダーを連動させる方式を採用していたはずだからな……この世界だと実に40年以上先取りして採用と配備をしたモデルになりそうだ)


精鋭部隊だけにこの部隊は蒸気機関を多く使用しているため、同行する補給部隊などは通常の部隊に比べて数も多く、故障などが比較的多い野戦砲に関しても、スペアパーツや砲身の交換用として常に予備部品などを持ち合わせている。

補助に必要な兵士が多くなるのが欠点である。

その反面、周辺国に比べて半世紀先の技術で作られていることもあってか、コストも今のところ莫大だ。


軍部は派兵に賛成しているが、一方で財務大臣であるネッケルは慎重論を崩さずに「派兵をするとしても二個師団までが望ましい」と語った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ついに祇薬莢と回転式銃登場! あとは加速度的に発展しそうですね!
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