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788:巡幸

巡幸日程は半年後まで決まっており、暫くの間はヴェルサイユ宮殿にいるのはお預けとなる。

親子そろっての旅行……というわけではないので、子供たちにも巡幸に参加してもらい、国民からの信頼を勝ち取ることが主目標となるだろう。

警備の問題なども浮上したが、国土管理局のデオンが主体となって護衛を執り行い、憲兵隊なども巡幸の際には一個中隊が同行して身の安全の警備体制などを行うことで巡幸行事は決定したのだ。


「巡幸行事はまずは近場の都市から行っていく……ルーアンやカーンといったイギリス海峡側の都市部を巡幸してからル・マンやナント……それにボルドーやマルセイユといった南部地域も見て回る予定だけど、これらの地域に行くのに一か月はかかるからね……思っていたよりも責任重大だね……」

「予定では半年掛けての巡幸行事になりますが……その間の政務はどうなさいますか?」

「そうだね、とりあえず首相が執り行うことになっているから問題ないはずだ。緊急承認が必要な場合に関しては、ライデン瓶を使った通信システムで連絡を執り行うことにしているから、一日もあれば承認の承諾などが出来るようになるよ」


政務に関しては首相に丸投げ……というわけじゃないけど、お任せする形となる。

最近俺のやっている事はほとんど事後承認ないし、政府の最終決定に関しての承諾に関する事だからね……これ国王いる?と思うかもしれないが、今の絶対王政政治を維持していくためには国王の承認が必要不可欠な状態であることを明記しておきたい。


「それにしても……フランス南部に行くのは初めてですね……どんな感じなのでしょうか?」

「フランス南部はかなり改革が進んで宗教的な和解も行われていると聞くね。特にユグノー派を追放してしまったルイ14世時代の誤りを直接謝罪したことと、彼らへの帰還事業に関して率先して取り組んだことで評価も良くなったからね……ユグノー派との和解によって彼らとの信頼回復が出来た証として、南部地域で彼らの代表者と面会する予定でもあるよ」


フランス南部は元々ユグノー派と呼ばれるプロテスタント系の宗派が多い地域であり、これらの地域においてルイ14世のフォンテーヌブローの勅令によってユグノー派に保障されていた権利などが剥奪されてしまい、彼らの多くが技術職を身に着けた熟練工も多かったこともあり、フランスにおける工業化が送れる原因の一つとなってしまったのだ。


改めて、当時のルイ14世に対して何やってんだと言いたくなるが、当時の宗教的価値観を考えれば宗派が違うだけでも戦争の火種になっていたことから、現代においても宗教問題が根強く残っている中東地域や東南アジアやインドなどを見るに、彼らの信仰しているものと少しでも違えば『異教徒=異端児』であり、これらの宗教問題が解決出来る見込みは人類が一つの宗教に統合されるか、宗教を捨てる選択肢を取らない限りは無くなることがないのだ。


彼らは一世紀以上に渡ってフランスで迫害を受けていた。

それ故に、俺は彼らへの保障なども手厚くしたうえで、少なくともフランス国内にある宗教に関しては届出を出した上で、彼らの信仰の自由を認めている。


これはカトリックやユグノー派のようなプロテスタントだけにとどまらず、少数ではあるがフランスの外地において入植しているアジア系住民の信仰している仏教であったり、長らくフランスに定住しているユダヤ系住民のユダヤ教なども【フランスに属し、かつ宗教が国家や国民に対して逸脱した反社会的行動を取らない限り、個人の信仰する宗教の自由は保障される】とし、1790年には『宗教基本法』の中に組み込んだことで、この国ではどの宗教であっても国家や国民に対して逸脱行為をしない限りは認めるという法律であり、これが世界で最初の宗教の自由を認める法律にもなったわけだ。


彼らとの和解が執り行われて以降、フランスに技術職を持っている人達が移住してきているし、ネーデルラントやプロイセン王国に移り住んだものの、戦火によって戻ってきた元住民に関しても、移住先をある程度希望する場合は、彼らの希望通りに南部や西部地域への移住を手助けしている。

今回の戦争ではかつて国外などに追いやってしまった人達を帰国させることに成功はしたものの、些か複雑な心境である事も事実だ。


「南部での巡幸の際には、大丈夫だとは思うが今でも内心恨んでいる人もいるかもしれない……少なくとも、彼らへの敬意は最大限に払う事……それは徹底して行うべきだよ」

「そうですね……今まで彼らはフランス国外に半ば追放されるという形で移住を余儀なくされた方々もいらっしゃいますからね……その事を考えれば、手放しに喜ぶことはできませんわ」

「うん、だからユグノー派の代表者らと会談の場を設けて、現在の状況を直接聞くことも大事になってくるね……それに、これからはユグノー派の人達にも協力を要請するからね……過去の遺恨を忘れるなとは言えないし、我々に対する感情もあるかもしれないが、今後の情勢を鑑みるに……協力して救世ロシア神国へ対抗できるように協力を執り行えるようにするつもりさ……」


南部に関しては半ば謝罪行事になりそうではあるが、現地の貴族や有力者にも話を聞いて、彼らとの軋轢がないか調べることも主体になってくるだろう。

追放して戻ってきて、ごめんなさいをして終われば警察も要らない。

彼らも完全に恨みが無いわけではないはずだ。


とはいえ、南部では謝罪ばかりするわけではない。

南部は地中海に面していることで食文化もフランス北部とは大きく異なっていることでも有名だ。

王族としても、現地の食文化なども調べるつもりなので、堅苦しいことが終われば楽しいディナーが待っている。


「ま、少なくとも謝罪等の重要行事が終われば、夕食会等で現地の美味しい食べ物も沢山食べられるからね……それを思えば、そこまで苦じゃないさ」

「料理ですか……この辺りと同じような料理だと思っていましたが……南部地域では違うのですか?」

「少なくともこの辺りではない食べ物が主流になってくるね……」

「おお……どんなのがあるのですか?」

「向こうは地中海に面しているからオリーブ油などを使った料理が中心になっていたはずさ。それに、スペインの食文化も合わさっている感じだから、魚料理なども美味しいものが沢山あると聞いたことがある。プロヴァンス料理というやつだね……トマトなどを使って煮込んで食べるからあっさりとした味わいらしい。向こうについたら食べてみようか」

「ええ!それも楽しみの一つとしてとっておきましょう!」


プロヴァンス料理に関しては年に数回程度食べるだけだが、あれはこちらのシェフが作ってくれる料理であり、現地の人が作るわけではない。

恐らく調味料からしてここで使われているものとは違うものを使ってくるだろう。

どんな料理になるのか……まだ知る由もないが、少なくとも楽しみはとっておくべきだろう。

巡幸ではあるが、半ば十年以上遅れた新婚旅行も兼ねて俺はアントワネットと旅をするのだ。

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