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739:息子

戦没者追悼式に参加した上で重要なのが、この追悼式には多くの各国の大使であったり、国の王族や皇族が出席している事だ。


各国にも呼びかけを行い、パリで追悼式を行って慰霊行事を行う事を宣言し、出席者にはパリまでの移動に関しての費用もこちらで負担することにしているのだ。


税金使ってナンボかと思うかもしれないが、こういった慰霊行事に関してはケチケチした事を言ってはいけない。


戦争によって亡くなった兵士や民間人の死者を弔うための大切な行事であり、同時に無下に扱うことは許されない事でもあるのだ。


国王である俺自ら企画し、会場の手配であったり招待状を各国に送ったりして、思っていた以上に大変であったのは言うまでもない。

それでも、こうやって色々と打ち込んでいたほうが精神的にも幾分かマシになる。


追悼式を行っている際に、各国の代表者が追悼のコメントを発表する場面が、そこでは涙ぐんだ様子で話を行う者もいれば、戦争に勝利した事で亡くなった戦没者に報いることが出来たと発表する人もいた。

ネーデルラントから派遣された大使もまた、今回の戦没者追悼において戦争に勝利した事を祝し、彼らへの追悼の労いになると述べているぐらいであった。


「この戦いに勝利した事により、ネーデルラントとしても復興が進み、多くの仲間を失った我々としても……彼らの死を乗り越えて、より強大な同盟を結び、未来へと発展できるようにしていくのがネーデルラントの国是でもあります!」


現代とは違った価値観であることもさることながら、やはり戦いによって勝利した事こそが正しいと思う人の割合のほうが多い気がする。


この時代では死よりも勝利であったり、名誉を重んじる傾向が強い。

貴族や王族が実権を握っていた体制であることから、彼らは何よりもプライドであったり、血統や名誉が重んじられていることもあって、戦没者追悼式の場でもあるのだが、戦争に勝利して戦いが終わったことを祝する発言が結果として多かった。


(恐らく、戦死者への弔いの言葉も兼ねているとは思うが、発言が終わる度に拍手で宮殿内の会場で響き渡っているからなぁ……やはり、この時代のことを考慮すれば、そのことが正しいと思う人の割合も大きいんじゃないかな……)


戦争とは、それすなわち文明の衝突でもある。

異なる民族、異なる宗教、異なる言語……。

これらが揃った状態で、同じ国家に属さないグループとの対立が起こった際に【戦争】が起こるのだ。


逆に、同一民族、同一宗教、同一言語を話す国家内において、権力闘争であったり武装蜂起が発生した場合には『内戦』と定義されることが多い。


グレートブリテン王国内戦が、その代表例でもある。


あれはグレートブリテン王国で発生した平等主義者による革命戦争でもあった。

史実で言うところのフランス革命に該当するような事例がグレートブリテン王国で発生したのだ。

あの出来事は色々と衝撃的な内容も多く含まれているが、何よりも悲惨だったのが同一民族と同一宗教、そして同一言語を話す相手との戦争でもあった為、被害の大きかったイングランド地域とウェールズ地域での復興が未だに進んでいない。


革命戦争において、革命側で戦闘を行った者が未だに内戦終結後も国外に逃亡したり、国内に潜伏して散発的なテロ攻撃を起こす事例も発生するようになった。


そうしたこともあってか、グレートブリテン王国の後継国家であるスコットランド政府も、収入の悪化とそれに伴う政治不信によって実質的にフランスの傀儡国家となっており、現在では独自通貨であったポンドは廃止され、全てフランスの通貨であるリーブルが使われているようになっているのだ。


異民族や他宗教相手であれば、一致団結できやすいのもそういった面も考慮されている。

なんとも複雑な心境だ……。

ふと、直ぐ近くにいるオーストリアの皇太子も追悼式をジッと見つめて聞いている。


(彼がレオポルト2世の息子で、次期皇帝のフランツ2世……神聖ローマ帝国最後の皇帝……そしてオーストリア帝国初代皇帝か……)


オーストリアからは次期皇帝になるフランツ2世が出席しているのだ。

アントワネットから見れば甥にあたる人物なのだが、ここで重要なのがフランツ2世はまだ皇帝に即位しておらず、史実では即位して僅か2年で崩御したレオポルト2世が、まだご存命という点だろう。


追悼式を執り行う前に、フランツ2世と話をすることになったのだが、彼もまた色々と話の通じる相手であったのは幸いであった。

彼は先に起こるであろう戦争について話をしたんだ。


「今回の戦いが終わっても、まだ安心はできません……東には救世ロシア神国が、それにカリブ海の権益に関しても北米複合産業共同体が支配地域を広げております。近いうちに、いずれかの国家と衝突する可能性があります」

「やはり君もそう考えていたか……父上からはその件で話はあったかね?」

「はい、可能性が高いのは救世ロシア神国との戦争です。もし救世ロシア神国と戦争になればバルカン半島方面から軍がやってくると考えております。バルカン半島は新興国が独立を果たしましたが、いずれも政情は安定とは程遠い状況です。救世ロシア神国がオスマン帝国への侵攻を止めたら、反転してバルカン半島方面に軍を進めるのではないかと懸念されております……」

「……そうか、政情不安に付け込んでバルカン半島方面に進軍を行って領地を広げようとするか……軍の動員は段階的に解除するのだな?」

「ええ、ですが遅くても5年以内に戦争が起こる確率が高まっているので、それに備えておく必要があります。今すぐというわけではないですが、近いうちに両国間で協議を行う必要があるかと……」

「分かった。協議に関しては承諾しよう」


神聖ローマ帝国に関してだが、その名前だけの実権となることが将来確約させれているものの、今後はオーストリア大公国としての皇帝としてその名前を刻むことになるだろう。

いや、大公国ではなくオーストリア=プロイセン二重帝国になるかもしれないし、もしくはオーストリア連合公国になるかもしれん。


国名に関してはオーストリア内でも色々と検討をしているようだが、今まではプロイセン王国優位であったのが、今度からはオーストリアが主導する国家体制に変貌するのだ。

つまるところ、これまで以上にオーストリアの立ち位置も変わってくる。


強力になった仏墺同盟……そこから周辺諸国の同盟を前提とした欧州協定機構の副代表国家としての地位に君臨するに相応しい男だと思う。


最も、レオポルト2世であったり、息子であるフランツ2世の評判というのは決して悪くはない。

特に息子であるフランツ2世に関してはナポレオン戦争によって神聖ローマ帝国が解体されてしまった後でも、彼はオーストリアの国民から親しまれていた上に、その後ナポレオンが戦争に敗れて国家を取り戻して再編されたオーストリア帝国では、初代皇帝に即位した人物である。


少なくとも、彼は無能ではない。

頼もしい味方となってくれるだろう。

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