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569:RENGEKI

さて……すでに指令第89号作戦から総力戦に備えた準備を着々とやってきたわけだが……。

ここにきて、我々は大きく動き出すことになる。

クラクフ共和国の大使とも話をしたのだが、向こうも侵攻を受けた第一報を聞いており、そのためにフランスに援軍として助けを呼んだのである。


「暴動の引き金に関する情報は入ってきているのですか?」

「いえ……しかしながら、暴動発生の報を聞きつけたポーランド軍が一斉に国境を越えて侵攻してきたという情報しか耳にしておりません。我々としてもフランスからの援軍要請を行いたく、何卒宜しくお願い致します……」

「欧州協定機構加盟国の同盟国でもあるからね……大丈夫、我々フランスはクラクフ共和国を見捨てたりはしない。防衛のために正規軍の派兵を行うつもりだ」

「誠にありがとうございます……!」


最新鋭ではないにせよ、クラクフ共和国はフランス製の武器・兵器で武装しており、グリボーバル砲などの野砲などを防衛用として配備している。

それでも、ポーランド軍の全面侵攻の規模を考えるに、数が足りないのかもしれない。

これらの地域が不安定化すれば、さらに彼らは軍事的な野心を拡大させて全面的な軍事衝突が発生するリスクのほうが高まる。


(他の地域に拡大して大規模な戦争になれば、それは即ち全面戦争となり、西ヨーロッパ全域において類を見ないような大戦争へと発展する可能性が大いにある。故に、これ以上の戦争を拡大するのを防止するためにもクラクフ共和国を抑え込む必要があるわけだ……)


七年戦争をより規模を拡大したような世界大戦規模の総力戦へと移行する事態になれば、各国の軍事だけではなく経済面で大きな損害を生み出すだろう。

それにより生じた分の損害を補填する国家はヨーロッパではなく、北米複合産業共同体が担うことになってしまう。


第一次世界大戦、それに続く第二次世界大戦でヨーロッパが荒廃したことにより、無傷だったアメリカ合衆国が世界の覇権を手に入れたように、北米複合産業共同体が経済・軍事を支配してしまう可能性も高くなる。


20世紀後半にアメリカ合衆国が成し遂げたような世界の経済・金融を牛耳ることを、この世界では北米複合産業共同体が行おうとするかもしれない。

我が国とは国交こそあれど、かの国は仮想敵国としてカリブ海などを中心に海軍を使って睨みを利かせている状態だ。


もし、十字騎士盟友との同盟でも結ばれたら、大西洋を封じ込められるかもしれない。

造船能力もかなりの速度で海軍の増強を図っていると耳にしているので、そうなったら地中海しかフランスが自由に出入りできる海が無くなり、大西洋の支配は確実だろう。


天然資源に恵まれている北米複合産業共同体は、すでに独自の経済圏を確立している陣営と見なしても良いぐらいだし、あと50年もすれば欧州との全面戦争を起こしても耐えきれるだけの軍事力を確保するだろう。


そうなる前に、ポーランド……いや、ひいては十字騎士盟友側に欧州協定機構加盟国に対する武力攻撃を直ちにやめさせるようにしなくてはならない。


辞めさせるといっても、ポーランドに逆侵攻を行うようなことがあれば十字騎士盟友が駆けつけてより戦線が拡大してヨーロッパ全域に拡大する戦争になり兼ねないので、あくまでも『自衛戦争』としてポーランド側には侵攻せず、クラクフ共和国内に侵攻した分の敵を撃破することに専念する。


ポーランドには、戦後の賠償金などの支払いをキチンとやるように念書を書かせて滞りなく支払いができるようにしておく必要がある。


生半可な支援ではクラクフ共和国を守ることは出来ないだろう。

防衛を徹するとなれば、小出しではなく一気に支援をするべきだ。

陸軍大臣として新たに就任したブルトゥイユ男爵に、現在の戦力の確認を改めて行う。


「陸軍大臣、現在の我が軍の総戦力に関しては即時動員可能な常備軍の総数はどのくらいあるのかね?」

「はいっ、現在の我が軍の常備軍は7万9千人でございます。このうちサルデーニャ王国に近いグルノーブル要塞に駐留している第6騎兵旅団がすぐにクラクフ共和国に駆けつける事が出来る部隊となっております」

「第6騎兵旅団か……確かに馬であれば移動も早いだろう、通行許可に関してはスイスを経由してオーストリアに……いや、スイスは中立国家だったな……移動は容易ではない」

「サルデーニャ王国とロンバルド王国を経由してオーストリアに入国するのが一番早いルートですな。今は11月……恐らくどんなに速く見積もっても到着は12月の初旬ですので、完全防寒装備で行かなければ馬も人も凍傷に倒れてしまいます」

「問題はそこなんだよね……増援を送るにしても、ポーランド軍だって対策なしでやって来ているわけではないだろうし……」


陸軍からは騎兵旅団が先遣隊として派遣するのが一番早い増援ではあるのだが、防寒装備などをしていかなければ、確実にあの辺りの寒さは平均気温が常に氷点下以下なのだ。

まだフランスに関しては平地ということもあり、寒さに関しては山岳地帯に比べたらそこまで厳しくはないのだが、クラクフ共和国はオーストリアよりもさらに上にある地域だ。


防寒装備ナシでは確実に凍傷になるだろうし、貴重な兵力を擦り減らすことになる。

オーストリアに関しては、欧州協定機構加盟国軍として同盟国のクラクフ共和国の防衛のために既に戦闘に参加しているとのことなので、クラクフ共和国を防衛し、ポーランド軍をクラクフから追い出さないといけない。


万が一、このクラクフ共和国が陥落した場合、我が国は戦略上重要な拠点を失うことになり、クラクフ共和国が保有している鉱石資源のある地域もポーランド……ひいては十字騎士盟友が有することになれば、我が国を含めた欧州協定機構加盟国の鉱石資源の採掘量は大幅に減るだろう。

それを阻止するためにも、軍事的な増援と支援は行わなければならない。


「グリボーバル砲だけではなく、マイソールロケットに関しても2番弾までを含めて支援を行うべきだとは思うが……ブルトゥイユ、どう思う?」

「はっ、マイソールロケットに関しましては携帯可能で持ち運びが可能なモノ……つまり5kgまでの弾でしたら支援を行っても問題ないと存じます。これから冬に突入しますので、冬場はロケットの点火に関しても時間が掛かります故、あまり大きいのでは点火に使用する火薬の量も大きくなってしまいます」

「成程……では、少量でも発火可能な小型のマイソールロケットを中心に運搬し、現地で使用する方針というわけだな」

「はい、それに関しましては陸軍でも現在支援の一環として500発のマイソールロケットを緊急で運搬させております。早ければ11月下旬までには到着する見込みです」


マイソールロケットもそうだが、本格的な歩兵の支援も必要になってくるだろう。

ブルトゥイユを含めた関係者としっかりと話をした上で、必要な支援をまとめて送るように指示を出したのであった。

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