51:この時期はホットティーに限る
19世紀のお菓子を一世紀近く早くに登場させたことにより初投稿です
調理場でおやつ作りをするのは楽しいなぁ!
みんなもそうだろう?!
なんたってアントワネットが一生懸命に勉強を頑張っているからな。
コンドルセ侯爵やランバル公妃の分もちゃんと用意しているぜ!
やはりここは調理時間が1時間もかからない……シンプル・イズ・ザ・ベスト……といこうじゃないか!
収穫時期となりはじめている食材を使って19世紀中頃に考案された伝説の……世界の食文化を変えた食材を使って披露してやるぜ!!
最近は改革案とかの調整等でアントワネットに苦労を掛けているからね。
夫としては彼女を喜ばせてあげたいのよ。
それが夫としての務めでもある!!
最近は身体も大きくなってね……。
アントワネットも大人の階段を少しずつ登っているんだなーと間近で成長を実感しているってわけさ。
特に食べ物に関しては好き嫌い無く食べるようになってきているのがいいね。
牛肉類が苦手だったみたいだけど、血抜きしてしっかり焼いた牛肉の柔らかいステーキを少しずつ食べるようになったし、ここ最近は牛乳ばかり飲んでいるんだ。
「やはり牛乳を飲むと身体がみなぎってくるんですの!オーギュスト様も一緒に飲みませんか?」
「そうだねぇ……アントワネットがそこまで薦めるならこれから一緒に飲もうかな」
「ええ!とっても美味しいですわ!ささ、一杯どうぞ!」
こんな感じで俺もアントワネットの誘いにホイホイと乗って牛乳飲んでます。
勿論近郊の酪農で搾りたての牛乳だからめっちゃ旨い。
転生前の学校給食の時に出された瓶入りの牛乳並に濃かったし美味しかった。
あの牛乳にココアやいちご味の粉末剤を入れた飲み物もこれまた最高に美味しかったよなぁ。
牛乳をほぼ毎日飲んでいるからアントワネットの発育がいいのかもしれない。
胸が大きかったのも、こうした牛乳製品を良く飲食していたからだという説もあるぐらいだしね。
さて、話がかなり逸れてしまったがここで戻しておこう。
ヴェルサイユ宮殿の調理場では俺とアントワネットが良く一緒に料理をしたりするようになってからか、調理場に専用コーナーが設けられることになったんだ。
オール電化というわけじゃないが、ある程度は自由に使えるし要領さえ覚えていれば誰でも使えるように再設計された調理場だ。
この調理場でアントワネットを喜ばせて、コンドルセ侯爵をあっと驚かせるお菓子を作ろう。
というわけで早速実行だ!!!
まず用意するのは、現在建設中の王立農園実験場で栽培予定のジャガイモを使った料理だ。
現代人であれば誰しも一回は口にした事がある菓子だ。
ちなみにアントワネットもジャガイモの事を気に入っていたらしく、主に観賞用としてジャガイモの花を観賞していたそうな。
肝心のジャガイモを食べるというよりも花を見て楽しむといった感じだろうか……。
本格的にヨーロッパでジャガイモが食べられるようになったのは18世紀終盤あたりからみたいなので、まだ食べる文化というのはプロイセン王国やアイルランド以外では珍しかったそうだ。
さて、それじゃあ早速調理していこう。
ジャガイモの表面についた泥を水を貯めた桶で洗い、洗い終えてからジャガイモの芽の部分を切り落とす。
この芽を切り落とさないと食中毒の原因になってしまうので気を付けねば。
そんでもってよーく洗って皮を剥いた丸裸のジャガイモを薄切りにしていく。
薄切り用の道具があったので、その道具を借りてきてスライスしていく時が割と好きだ。
ジャガイモ一つだけでもボウルの半分近くのスライスされたジャガイモで埋め尽くされていくからね。
そしてこのジャガイモは10分ほど水に浸しておく。
浸している間に次の工程に移るための準備をするために油をひいたフライパンと釜に火を灯して加熱の準備ができればいい頃合いかな?
水に浸した薄切りのジャガイモを熱殺菌したタオルで拭いてから本番だ。
薄切りのジャガイモを油に浸して釜の加熱でじりじりと熱くなっているフライパンの中にダイブさせていく。
じゅわぁぁぁ~っとジャガイモが油の中で小躍りしているようだ。
弾け飛ぶ水分に被弾しないように、そっと蓋を閉じる。
ーパチパチパチパチ……じゅわぁぁぁ~
そうそう、この音がいいよね。
油で食べ物を揚げている音は好きだ。
特にジャガイモが手に入ったことで俺の好きな食べ物が作れるようになったのは大きい。
周りの料理人の人達は王太子がどんな料理作っているのか気になるらしく、時折チラチラ見てくるんだよね。
もっと気軽に話しかけていいのよ?
「どれどれ…そろそろ頃合いかな?」
フライパンの蓋を開けると、いい感じに香ばしいポテトの香りが漂ってくる。
硬さも申し分ない。
揚げ物を掬う道具を使って油を切ってから皿に盛りつける。
盛り付けが完了すれば仕上げに塩をさっと一振り。
これで現代人に欠かせないお菓子の一つである「ポテトチップス」の完成だぜ!!!
早速一口試食してみよう。
ーガリッ……ボリ、ボリ、ボリ……
「うん、美味しい!!」
ジャガイモはどんな料理にも合う万能食材だ。
その中でもポテトチップスは世界でも沢山消費されている。
一説によれば、全世界で収穫されたジャガイモの10パーセント近くがポテトチップス用に加工されていくジャガイモらしい。
そんな凶悪ともいえるポテトチップスを18世紀に完成してしまった俺はなんと罪深い人間なんだろうか……。
シンプル故に、だれでも作れるのが素晴らしいね。
それから余程下手くそなやり方をしない限りは美味しく出来上がるからいい。
塩だけでなくてペッパーをまぶしたり、コンソメパウダーをかけても美味しい。
コンソメも発祥はフランスだからコンソメ味もできるかもしれない。
味付けとかはこれから研究すればいいし、何より簡単だから後で料理人にレシピ教えようかな。
「王太子殿下、ホットティーが出来上がりました」
「おっ、いいタイミングだね!それじゃあ一緒に持ってきてくれるかい?」
「かしこまりました」
調理係の人が移動式のカートを持ってきて運んでくれるみたいだ。
いや~ほんと助かる。
ポテトチップスを食べながらホットティーを嗜む。
現代ならすごく安上がりで済むおやつだけど、この時代は手間や食材などを考えるとそこそこ贅沢なティータイムというわけだ。
アントワネット、勉強頑張っているかな~と考えながら俺はコンドルセ侯爵と勉強している部屋に向かうのであった。