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418:会合

会議は終わらない。

むしろ始まったばかりだ。

未来を語る建設的な会議は好きだが、北米連合が戦争を吹っ掛けてきた以上は、戦争計画の立案などを行う準備を決めなければならない。

それもフランス単独ではなく、周辺国と連携をしておかないといけない。

キューバでも北米連合が軍事侵攻をしているという情報が在仏スペイン大使のアランダ伯爵からもたらされたのだ。


「……3月9日にキューバのハバナが北米連合軍より攻撃を受けたとの情報が先ほど入ってきました……いやはや、私としても今回の一件に関しては驚いております……我が国は北米連合とは良好な関係でありました……こうもいきなり奇襲攻撃を受けるとは思いませんでした……」

「それはこちらも同じだ……我が国としても北米連合の行動は到底容認できるものではない。サン=ドマングの解放も兼ねて、キューバへの救援に関しても我が国は全力で支援しよう」

「はっ……ありがとうございます」

「いずれにしても、北米連合はヨーロッパとの戦争になっても勝てる勝算があって挑んできたわけだ……油断せずに対処していこう」


緊急であった事と、欧州協定機構に加盟していることから事実上の軍事同盟を締結していることもあり、スペイン大使である彼には事実上スペイン側の代表者ということも重なって、スペインとの連携を確認し、共同作戦の立案に参加してもらうことになったのだ。

アランダ伯爵は元々軍人としても活躍しているし、フランスの改革派に関する情報を参考に、スペイン側に改革の利点などを挙げて啓蒙思想から改革思想への発展をすべきという持論を唱えており、スペインではカルロス3世も手腕を評価しているという。


というか、他にもオーストリア、クラクフ、サルデーニャ、スウェーデン、ノルウェー、ネーデルラントの6か国の大使や公人が集まっており、事実上フランスの友好国、同盟国による作戦会議場となった。


事実上の対米包囲網ですよこれ!

プロイセン王国に関しては近年の外交関係の悪化に伴い、大使は駐在こそしているけど参加しませんか?と打診したが『我が国は現在内政に尽力しており、北米方面に関する戦争協力はお伺いすることはできません。力になれず申し訳ございません』という返信が帰ってきた。


プロイセン王国が全方位喧嘩外交みたいな状態な上に、友好国が事実上の傀儡国であるポーランドと、旧ロシア帝国領(現在のベラルーシ一帯を制圧している)を所有し、私兵軍隊を率いて正統なるロシア帝国だと宣言しているパーヴェル1世ぐらいしか味方がいないのだ。

とはいっても、中欧~東欧の大部分を有していることもあり、鉱石資源は豊富だし……何より兵士の質は高いから厄介なのだ。


……とはいえ、対北米戦をしている最中に国境線からプロイセン王国の兵士達がフランスやネーデルラントに向けて進撃してきたらマズいのでプロイセン王国とは不可侵条約を締結し、今後3年間はプロイセン王国側への軍事的干渉はしない、経済的な活動においてもフランスをはじめとした欧州協定機構加盟国に対して攻撃的な振る舞いをしない限りは妨害しないと取り付けた。


もっとも、これはあくまでも保険であり確実に侵攻してこない保障はない。

だから我がフランス軍は最大限の防衛能力を保持した上で国境線では守備に貼り付ける。

有事になった際にはネーデルラント、オーストリア、クラクフと共同でプロイセン王国を侵攻しないように食い止める防衛協定も密かにではあるが結んでいるのだ。


この時代においては各国の大使や公人においては政治学だけではなく、軍事的な教養を学んでいる人も多い。

それ故に、軍事同盟関係の延長線上で今回は対北米戦の話し合いを出来るのだ。

機密性を高めることを重視し、部屋は防諜性を完備して情報漏洩対策を施した【第4会議室】で会議が開催された。


「我がスペイン軍の主力部隊ですが……正直に申し上げると単独では北米連合に戦って勝利は不可能です。かの国の船舶の建造能力は我が国を上回っております。それに、兵士の動員に関しても軍備の見直しの関係で減っているのが実情です。是非とも各国の協力をお願いしたい」

「それはネーデルラントも同様です。我が国は海上戦力であればともかく……プロイセン王国と国境を接いているので対プロイセン王国用に常備軍を張り付かせている状態です。なので、万が一プロイセン王国が攻めてきた場合に備えて陸軍は張り付いていないといけません。大規模な徴兵が必要になりますので、一度国に帰って相談しなければなりません」

「徴兵と申しても、先の新大陸動乱、グレートブリテン王国内戦時のように子供や女性でも銃や槍や斧を所持していれば兵士になり得ます。あくまでも最終手段ではありますが……」

「いずれにしても、このまま我々がてをこまねいている時間はないでしょう。遅くても一か月以内に対北米軍を編成してカリブ海の島々の防衛を強化しましょう」


各国ともにカリブ海に浮かんでいる島々の防衛が必要不可欠だ。

単独で戦争を行うには北米連合は強大すぎる。

戦争相手といってもあの国の戦闘継続能力を考えれば戦う際に必要な兵力はフランス単独では戦力不足だし、陸上戦力も膨大な数を用意しないといけない。

島々の防衛戦においても大西洋を横断するだけでも補給路を確保しないといけない上に、輸送船の護衛などに多くの艦艇を割り振らないといけないのだ。


事情が事情だけに、今回は影響が大きいスペインやポルトガル、ネーデルラントやスウェーデンが積極的に軍の提供体制について話をしている。

各国もカリブ海にあるサン=ドマングやキューバを含めて商船が多く行き交っている地域でもある。

事前に攻撃予測が出来たのではないか?と思うかもしれない。

……が、北米連合の動向を探っていた各国の諜報員も戦争になるとまでは予測出来なかったようだ。

我が国の国土管理局の北米対策室においても、先月6日に送られてきた報告書でも『北米連合の動向は依然として変わらず、農作物や綿花を中心に栽培をしている』というものであった。


「報告書を見る限りでは戦争の兆候などは見られなかったそうだが……物や人の流れまでを調べても同じだったのか?」

「ここ最近の北米連合の動きは活発ではありませんでした。むしろ戦争前に見られるような戦略物資の買い占めなどは発生しておりません。食糧に関しては軍隊という特性上どうしても大量に消費する為、軍が買い占めを行うのです。故に買い占めをすれば必ず物価価格が上昇するうえに、食糧関係の株などが上がるので直ぐに分かります……」

「だが、今回は買い占めは発生しなかったのだろう?」

「小麦、トウモロコシ、ジャガイモの価格は適正価格のまま推移していました……また、他の食糧に関しても価格は適正価格のままでした」

「ふむ……買い占めはしていなかったのか?いや、それでは戦争を行う辻褄が合わないな……」


そう、戦争直前になると軍が物資を買い占めたり、軍人の移動が多くなる傾向が多い。

現代では衛星写真やインターネット回線の動き、さらに物流や人流の流れを統合的に判断して戦争が起こる兆候が見られることもある。

ただ、北米連合各地に潜入させている諜報員からの情報では、物資や軍人の動きには不審な点が見当たらず、反って()()通りの行動であったと記載されていた。

つまり、価格や兵士達の動きは平常時そのものであったという。


……ただし、通常の定期訓練通りに船を出しているという点から、恐らく内部にスパイがいることを承知の上で訓練と見せかけて行動していた可能性が高い。

やり口といい、まるでヴェーザー演習作戦のようであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 北米軍ははじめから侵略ありきで長い時間をかけて準備していたということ。北米の組合も協力している気がします。
[一言] 英が潰れたからカナダ部分がフリーになってしまう このまま欧州小国の寄合所帯連合でいくと先行き暗そうだな~
[一言] 史実のアメリカ独立軍よりも強そう。これは、覚悟して望まないと足元が掬われそう。 徹底的に勝たないと、蟻地獄に引きずり込まれる恐れがあり。
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