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287:2月20日

☆ ☆ ☆


1777年2月20日


時刻は午前5時55分……。

社畜時代なら朝食を食べながらテレビで今日の星座占いを見ている時間帯だな。

そういえば転生直前の日に見た星座占いだと『……座の貴方の運命はとってもビックリ!もしかしたら一生を変えてしまう運命が待ち受けてしまうかも!ラッキーアイテムはゲーミングパソコン!』ってアナウンサーが言っていたねぇ。

本当にルイ16世に転生という、とんでもない運命が待ち受けていたわけだが、アレは狙ってやっていたんじゃなかろうか……。


朝日も昇って来ているし、このヴェルサイユ宮殿の寝室から眺める景色と相まって、何とも壮大でクラシック音楽を後ろから流して欲しいなぁ~と思っている。

目覚めの一発!元気爆裂!思想粉砕!魑魅魍魎!

……駄目だ、変な四字熟語しか浮かばねぇ!

深夜テンションが今だ抜けていないじゃねーか!


「……やばい、午前2時ぐらいから一回も寝れていないわ……」


運動会の前日は寝れるタイプだったかといえばそうではない。

むしろ前日になると緊張のあまり寝れない日々が続いてしまうぐらいに神経質な性格だった。

それが転生してからも続いているのは世辞辛いのじゃ~。

とはいえ、愛する妻と娘と一緒に幸せな日々を送れる生活が出来るのでOKです!


……大丈夫、ちょっとばかりテンションが高いだけだ。

深呼吸をすれば問題ない。

ちょっと寒いが、換気も兼ねて窓を開けて外の空気を吸い込む。

木々と草原……そして冬場の喉を貫通してきそうな乾燥した冷たい空気が肺に送り込まれていく。


「すぅ~っ……すぅ~っ……うーん、木々と草むらの香りがしないでもないなぁ……(転生して)来た頃に比べたら雲泥の差だ!ウンだけに!冬場の空気もいい感じだな」


あの忌々しいほどに臭い糞尿の臭いをかがなくて済むのは実に良い。

窓を開けて息を吸い込んだら悶絶しそうなレベルの悪臭だった時の気持ちを考えたことはあるだろうか?

本当にトイレって偉大だわ、マジでトイレには神様が宿っているのではないかと思うぐらいに……。

おっと……ドーモ、皆さん、ルイ16世です。


今日は欧州諸国会議という歴史的に重大なイベントの幕開けが始まろうとしている。

Wikiを開いても1777年にそんな会議名ないじゃん、嘘ついているのかコイツは……と思っている人もいるかもしれない。

……安心してほしい。

この会議を作ったのは他でもないこの俺だから!


企画・立案し、国土管理局と上層部のメンバーで話し合ってから会場周辺の警備も周到に計画しておいたのだ。

フランスの威厳を傷つけないように、やはりこうした計画はしっかりと練ったほうが良い。

ヨーゼフ陛下が一足先にパリにお越し下さったこともあり、アントワネットも一昨日から上機嫌だ。


「オーギュスト様!明日の会議は成功させましょうね!私達がフランスを……ヨーロッパを明るい未来へと導いてあげましょう!」


……と、寝る前にアントワネットも会議に先んじて意気込みをわざわざ語ってくれるぐらいには気合が入っているのだ。

さすが現代に転生しても女子高生としてやっているのではないかと巷で言われているだけの抜群のコミュニケーション能力を披露してくれた。

ありがとうアントワネット。

お陰で俺はこうして国王として頑張っていけるよ。

もし、傲慢だったりかのアデライードみたいな性格だったら、俺は国を投げ出して放浪の旅に行く自信があるぜ。


そして何よりもアントワネットもヨーゼフ陛下も、この会議ではフランスの味方をしてくれるので有り難い。

とても有り難い。

国王夫妻の意見と政府上層部の意見が一致し、国の方針がまとまっているのは国際会議の場においては重要な意思決定を行う上で極めて重大だ。

後になって政府メンバーが「そんな事いってないです」と言われたら、政府内の意見すらまとまっていない状態で主催したのかと笑われてしまう。


また、同盟国であるオーストリアも改革を支持し、尚且つブルボンの改革を真似てウィーン改革を実行しているので、こちらも説得力があるのだ。

少なくとも、フランスとオーストリア……両国の関係は蜜月であり、アントワネットもオーストリアから嫁いできたこともあり、軍事的・政治的・婚姻的にも強固な関係を維持しているということを国内外、特に政治の舞台でPRすることが出来る。

なので、二人が賛成して会議で演説してくれるのは本当に助かるのだ。


ただ、悩みもいくつかできてしまっている。

まず一つはプロイセンと領邦といった七年戦争時に敵国だった国々をどうやって説き伏せるかだ……。

一応プランはいくつか提示するつもりだし、晒し者にはするつもりはないので腹を割って話す準備は出来ている。

これ以上革命がヨーロッパ中でまき散らされるのは勘弁願いたいからね。


(プロイセンと領邦は七年戦争以来、仮想敵国のままであり事務次官の交換程度に留めているからなぁ……あまり仲がいいとはいえないよね。オーストリアともプロイセンは王位継承を巡って小競り合いを含めた紛争や七年戦争のような大規模な戦争になったことも多いし……今回の会議の成果はどこまで説得できるかにもよるな……)


勿論、会議の場でプロイセンや領邦の代表者に向かってYESかNOかハッキリ言ってもらおうか!と山下将軍みたいにドンと言うのではなく、お願いをする形で言うのがいいだろう。

勿論、平伏するのではなく一国の元首として改革案を提示して、是非とも貴国の皇帝や公爵にお願いすると信書を渡しておく。

こうすれば、少なくとも受け取らないという事だけは起きない。

選択を受け入れるにしろ拒絶するにしろ、まずは元首の下に馳せ参じて相手が渡してきたので見て返答をしますか?という流れになる。


この提案をむざむざと拒絶するほど馬鹿ではない事は知っている。

そう、何を隠そう今のプロイセン王国の国王は軍人、文学者、音楽家としても才を持っており、その七年戦争で戦争を勝利に導いた功績を讃えて大王という尊称を持っているフリードリヒ2世だ。

能力に関してはまさにチート級……HOBFでも史実を反映してか、ぶっちぎりの内政・軍事・経済といった面々でも様々なスキルを身につけている手強い相手だ。

そんなフリードリヒ2世から会議に参加してこいと言われてやってくる代表者を唸らせるプレゼンをしなければならない。


そして今回は正直言ってヤバイと思うのが、演説をする際にどうやって彼らの心に響くようにするかである。

国王になってから色んな行事や祝賀会などをこなしてきたが、いざ欧州各国の要人達がパリに集結してくるとなると、やはりスピーチが大事なのだ。

機関車の完成式典でもその大切さを身に染みて実感している。


ヨーロッパでは淡々と話す人よりもセンセーショナルで身振り手振りを使って話す人のほうがウケがいいとされている。

その代表的な人物といえばあのちょび髭おじさんことアドルフ・ヒトラーだ。

彼がドイツで大衆の心を掴むことが出来たのは演説の際に声にメリハリをつけた上で、身振り手振りで自分の感情を表現したからだと言われている。

逆に善人な人であっても、喋ることが苦手な人だとヨーロッパではかなりキツイみたいだ。


「俺が歴史を変える……か……」


フランス革命を阻止した結果、イギリス革命が起きたでござるで終わらせてはいけない。

革命などの急進的なやり方では却って独裁政治が幅を広げてしまうだけだ。

やるべきことは一つ、改革を徹底して行って王政政治の良いところを持続させていける政治体制を整えることだ。

それも踏まえた上で今日の会議に臨むとしよう!


あとなんか、ポリニャック伯爵夫人がブルボン宮殿の近くにある庭園を貸り切ってパーティーしたいと言っていたので、色々と条件を付けた上で認めたのだ。

あまり彼女のことは好きではないが、あまりにも拒否したりすると政治的対立をしているのではないかと誤解されそうだからね。


「……そして今日、ヨーロッパを団結させる為に果たすべき役割を全うする事だな……まるで映画の主人公になった気分だぜ、テンション上がるなぁ~」


テンションが上がっているのは深夜テンションが抜けていない事も加味しておく。

まだアントワネットとテレーズは眠っている。

起こさないように会議で使う資料を纏めてから少しでもいいから仮眠を取っておこう。

午前8時に起床係がやってくるので、2時間ぐらいは眠れるはずだ。

二人を起こさないように、机の上を整理してからこっそりとベッドに潜り込んで仮眠を貪るのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >プロイセンと領邦は七年戦争以来、以前と入国制限や関係も事務次官の交換程度に留めているからなぁ…… 単語の並びから言いたいことは拾えていると思うのですが、修正中の文に見えます。
[一言] テロが成功するかしないかもそうだけど、それがどの様に政治的に利用されるかも気になるな。。。
[一言] 分岐点かな、成功しても失敗しても世界史に載りそう。
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