243:パリが昇る時
作者の名前がスカーレッドGなのですが、いつも「スカーレットG」と誤認されてしまうので初投稿です。
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1776年4月11日
今日で転生して6年目を迎えたルイ16世だ。
転生前の名前は思い出せるし、どんなゲームをプレイしていたのかも思い出せる。
初恋の人に振られたことも、りんかい線の駅のホームで大規模同人誌即売会で購入した成年向けの同人誌を詰め込んだ袋が破けてしまって辺り一面にぶちまけたことも……。
俺はルイ16世……フランス国王として転生者ながらも真面目にやっている。
たまに全力でふざける時もあるけどね。
さて、6年目という事でどのぐらいフランスが良くなっていったのかおさらいする必要があるな。
見直しする事も立派な仕事だ。
改革を始動させて6年目となる今年は政治面・経済面においてフランスはヨーロッパで最も安定した地域となっている。
ヨーロッパ方面では投資といえばフランスにしておけと言われるぐらいには増えているんだよね。
まず政治は主に改革を支持するグループを中心に行われており、当初予定していたフランス革命を阻止する為にトップダウン手法による『ブルボンの改革』はスムーズに行われた。
実際に改革では奴隷・農奴制度の廃止や、かつて追放したカルヴァン派や迫害されていたユダヤ人への寛容令と共に優秀な人材がフランスに集まり、従来の貴族・聖職者による税金免除を撤廃して納税義務を課したことで税収も増えた。
貴族や聖職者は税金納める義務はないので納税化反対の意見が強くて失敗してしまった史実の反省を踏まえて、貴族や聖職者が保有する荘園や教会、さらに関連する商業施設は『事業所』として登録し、帳簿を付けさせたうえで税金を納めることを義務化させてやったぜ。
勿論帳簿を誤魔化して不正行為を働いた貴族や聖職者も残念ながら数名出てしまったので、不正行為を行った者に対しては特権的な身分剥奪と資産と土地の差し押さえという厳重処分を行った。
命だけは助命したけど、なんで不正行為をしてしまうんだろうね?
厳重処分を行った者のうち、半数近くが「見栄を張りたいから……」とか「お金に余力があるように見せたかったから……」という理由で不正行為をしていた模様。
帳簿の不正はダメ、絶対。
勿論、この改革を実行するにあたって猛反対した大貴族はいましたよ。
オルレアン派って言うんですけどね。
あまりにも反対したり妨害工作したりとふざけたことをしていたので彼らのトップを逮捕して終身刑に処したり死刑執行をしたら文句は言わなくなりました。
オルレアン派が溜め込んでいたお金とか資産を国家予算や研究費に回してガンガン基礎研究を行い、その基礎研究が実を結んでそろそろ鉄道も完成間際だ。
王族との繋がりもあった大貴族を終身刑に処した事で、本気だと思わせることが出来たようだ。
だけどあまり頻発して処刑を繰り返せばどこぞの赤い大地のスターリンとか言われそうなので、税金は国家予算や災害時の緊急放出資金、インフラ整備や貧困対策に充てると大々的に報じさせた。それによって平民からの信頼を勝ち得ることが出来た。
フランス国民の90パーセント以上が平民なので、圧倒的大多数から支持されることができれば問題ない。
貴族や聖職者だけが納税免除して豪華絢爛な生活を続けているというのも国民は納得しないだろうしね。
せめて税金を納めた上でやった方が、理解されるもんな……。
経済では財務担当のネッケルによる金融政策が功を奏して、国内外から投資が呼び込まれて整備・開発が進められている。
その中でも力を入れているのは首都パリをはじめとする都市部の整備事業と、工場や蒸気機関を駆使した産業構造の構築である。
フランスのパリでは特に下水に関する整備を推し進めた結果、悪臭の根源であった『糞便を窓からポイ捨て』もほぼ無くなった上に、パリの再開発も進んで貧困と悪臭漂う街ではなく、清潔で安定した生活が出来る都市になりつつある。
科学に関しては目覚ましい進歩を遂げており、蒸気機関の重要性を認知した科学アカデミーを中心に、実用的で将来的に普及しそうな機械の発明を次々と発表している。
資金を使って豪遊したり遊びに費やすのではなく、設備や市街地の整備、そして莫大な利益になるであろう蒸気機関に関連する技術に費やした結果これらがスゴイ速度で次々と更新している。
元々18世紀中ごろから19世紀にかけてフランスの科学アカデミー輩出の学者は一際秀才の人が多いのだ。
そんな有能な人材をフランス革命で処刑したり冷遇すれば技術的に遅れてしまうのもある意味では納得がいってしまう。
ついこの間も人力で歯車を回す事を応用して穀物を刈り取る機械を考案している人が出てきたとかでこの間科学アカデミーで採用するとかどうか検討しているというニュースが入ってきたばかりだ。
そのニュースを耳にした時の衝撃は大きかった。
(えっ、もうコンバインみたいな収穫用機械作ったの?!)と思ってしまったほどだ。
まだコンバインのような全部の工程を大型機械で運用するものではないが、コンセプトは元祖コンバインのような代物だ。
四輪の荷車を改造し、荷車の前方部分に水車のような装置を設置し、この装置を人力で回す事によって装置の先端部に取り付けた刃物を動かして穀物を収穫し、荷車の後ろに設置された木箱に穀物を回転で生じる風圧で吹きこむというものだ。
小麦や大麦といった穀類の収穫では大いに活躍するだろうし、実験ではそれまで人力で手作業だった収穫も、この機械を使えば2倍以上のスピードで収穫できるという優れものだ。
ただ、難点としては畑がデコボコしていると荷車が安定しないのと、収穫した穀類を木箱から取り外す作業に時間がかかるという点だ。
これに関しては改良すれば問題ないので科学アカデミーには、是非とも採用してほしいと口添えをしておいた。
こうした技術革新に伴って新しい産業の需要が増えてきており、仕事の量も増えたことで労働を担う人手の不足が目立ち始めているのもまた事実だ。
それまで冷遇されていたユダヤ人を、公務員として採用したり銀行をはじめとする金融業への参入を認めたりした事で、ヨーロッパ各地に散らばっていたユダヤ人が一斉に移住を開始して1775年度だけで東欧を中心に2万人ものユダヤ人がフランスへの移住をしてきた。
労働力を補う上では貴重な戦力であるが、審査を緩めるつもりはない。
こうした移民希望者に対しては慎重に審査などを行い、審査に合格した人から移民手続きを認めてフランス国内への移住を許可している。
閣僚からは「少々移民の審査が厳しいのでは?」と言われることもあるが、慎重になっている理由が現代フランスがヨーロッパ連合の一員として移民・難民を無計画に受け入れた結果の末路を知っているからだ。
移民・難民は奴隷の如く低賃金で劣悪な環境で働かされたり、フランスの文化に馴染めず移民・難民二世や三世が非行に走ってギャングやマフィアなどの反社会的勢力の構成員になる例も少なくない。
挙句の果てには周囲からの孤独や絶望によってフランスを恨み、ヨーロッパを恨んでいる過激思想に傾倒したテロリズムに共感して無差別テロ事件を引き起こすといった行為をしでかしてしまう要因になり得るのだ。
イスラム教の指導者の風刺画を掲載した新聞社が襲撃されたり、パリ同時多発テロ事件などもこうした移民・難民問題がこじれた末に起こったんだ。
成熟したハズの現代における民主主義ですらこんな状態なら、私刑まがいの虐殺行為すら民衆が暴徒化すれば許されるような時代だ。
そうなれば移民でやってきた人々が虐殺されるような事態を引き起こしかねない。
そこで移住計画に当たっては、既に移住先の土地に住んでいる住民たちの職を奪わずに彼らに新しい仕事を与えられるように、大規模な公共事業である上下水道の整備や道路整備を行い、そこから大都市圏郊外への開発としてベッドタウンを開発していたりもする。
丁度日本が高度経済成長期に行っていたやり方ではあるが、何にも仕事がないよりはいい。
摩擦を可能な限り産まないように調整し、フランスの文化を発展させていくつもりだ。
生活基盤を確保した上で工場や商店街などを新設したり、都市計画に則って区分などを整理したり指示を出したりもすることも稀にあるが、都市開発ゲームをしているみたいで計画書を眺めているだけでも楽しかったりもするのだ。
あと夫婦関係は極めて良好だ。
嫁であるアントワネットは美しくなって、ボディーラインとかも大人になって凄く美人さんだし、娘のテレーズに至ってはしっかりと歩けるようになった。
言葉も話すようになってきたので我が子の成長を眺めているのが楽しい。
これが父親になるという事か……。
テレーズやこれから生まれてくる子供たちは愛情をたっぷりと込めて育てていきたい。
父親らしいこと……。
転生前は子供を持った事もなかったし、俺の父親は母親が死んでから爺さんと婆さんに預けて育児というものを父親がしていた記憶がない。
盆と正月に帰ってくるけど、あまり絡んだ思い出は無かった。
母親との間に生まれた子供なのに、殆ど赤の他人のような扱いだった。
だからこそ、俺は愛情を込めてアントワネットとテレーズに接したいんだ。
良き夫、良き父親となれるようにこれからも励んでいくつもりだ。
幸せになるためにがんばるぞい!
さぁて、今日は清国への特使として基隆獲得に向けて交渉を行った使節団がヴェルサイユに報告を行う日でもある。
既に帰国しており、あと一時間後に結果報告をしにやってくるという。
政府閣僚も同席した上で、報告を聞くことになったのである。




