233:ミゼレーレ
気がつけば明日で本小説を執筆して1年となりますので初投稿です。
モーツァルトの演奏が終わり、俺達は拍手をしてモーツァルトを讃えた。
今までクラシック音楽はソコソコ聴いてきたが、彼の演奏するピアノの音色に敵う者はいないだろう。
それぐらいに素晴らしかった。
惜しみなく彼を称賛した。
「いやはや、すごいよモーツァルト!聴いていて魂が震えたよ!」
「お気に召したようで何よりです陛下、そう仰っていただけると私も嬉しいです」
「もし時間があればみんなで君と色々話したいんだが……いいかな?」
「ええ、勿論です!陛下や皆様とお話できるとは……光栄です!」
折角なのでモーツァルトと談話をする事にしたのだ。
まだ帰るには早いし、これ程の天才と話す機会は早々ないのだ。
やはり前世でも名を残した天才音楽家と談話できるならやったほうがいい。
椅子を用意して彼を座らせて一緒にお菓子を食べて談話を始める。
「それにしても凄く演奏が素晴らしかったよ。結構……小さい頃からやっているのかい?」
「はい、3歳の頃から楽器に触れて演奏をしておりました。父親に連れられてヨーロッパ各地を旅しながら演奏会などに参加しておりました」
「成程……3歳の頃から……ずっと音楽を?」
「ええ、あと歌劇の方もやっております。5年前に初めてロンバルディアで歌劇の作曲をしました」
「5年前……えっと、それだと14歳ぐらいの時に作曲したのですか?!」
「はい、ただまだ若いという事もあってか、好評だった割には報酬はあまり頂けませんでしたけどね……」
「そうだったのか……14歳でオペラの作曲とは……すごいなぁ」
「いやいや、陛下も14歳の時には既に改革に向けて準備を進めていたではありませんか。私からしてみれば、その事のほうがスゴイと思っておりますよ」
モーツァルトは神童と謳われただけに、その才能は凄まじく3歳から英才教育を受けていたようだ。
5年前……丁度俺が転生した直後ぐらいにはオペラの作曲を手掛けていたという。
いやー……やはり天才っているものだね。
俺は転生のブーストを使っているけど、モーツァルトの場合は生まれつきの才能でやっているんだ。
皆感心しているが、ここで一つ幼年期にモーツァルトがアントワネットに「大きくなったら僕のお嫁さんにしてあげる!」とウッキウキで語ったとされる逸話が本当なのか確かめたくなったのだ。
アントワネットもいるけど、彼覚えているのかなぁ~と思い、それとなく探りを入れながら聞き出そうとする。
「いやはや……やはりモーツァルトは小さい頃から色んな場所に行って音楽の才能を吸収していったんだね……私の嫁であるアントワネットはオーストリア出身なんだが、オーストリアでも公演をした事はあるのかい?」
「ええ、小さい頃に私はアントワネット様とお会いしたことがあります。その時に私は小さいながらもアントワネット様に助けられたことがあったのです」
「ええっ!そうだったのかい!アントワネット……その時のことを覚えているかい?」
「はい、丁度7歳ぐらいの頃にお母様の前で演奏を終えたモーツァルトが転んで尻餅をついてしまって、その際に私が手を差し出したのです。大丈夫?って……フフッ、あれから大きくなりましたね」
「ハハハ……あの時アントワネット様に助けられたことは幸運でしたよ。実のところ転んでしまったときに緊張で泣きそうだった所に手を差し伸べて下さいましたからね……本当に綺麗な方だったので当時は女性を喜ばせる褒め言葉として『僕のお嫁さんにしてあげる!』って言ってしまったんです。後になってそれがプロポーズの言葉だったとは思わなくて……」
「フフッ、でもその時のことは今でも覚えておりますよ。とっても印象に残りましたからね」
「ほぉ~……そんな事があったとはね……でも可愛らしくていい話だと思うよ。」
昔の話を思い出したアントワネットは懐かしそうな表情を浮かべながら話し、モーツァルトは頬を赤く染めて照れながら話している。
やはりあの逸話は創作などではなく事実だったとは……。
昔を思い出したアントワネットはモーツァルトに色々と尋ねていた。
まるで旧来の友人に会ったように様々なことを話している。
ランバル公妃やルイーズ・マリー夫人とも気さくな会話を弾ませており、とても微笑ましい光景であった。
「あらら、では今は求職も兼ねてパリに赴いているのですか?」
「ええ、そんなところです。やはり私の事を警戒している音楽家の人も多くて……ハハハ、何かと演奏やオペラの作曲で揉めてしまう事もありますから」
「モーツァルトさんの音楽の才能は鋭いですからね……貴方の才能に嫉妬している人も多くいるかもしれません。ですが、それに負けないように私達で出来る事があれば言ってくださいね」
「ありがとうございますランバル公妃様。実はついこの間までリヨンで仕事をしていたのですよ」
「まぁ、リヨンに?それは演奏担当として赴いたのですか?」
「リヨンではこの間オペラ劇場で作曲を依頼されたので、その担当をしておりました。ブルボンの改革を題材とした歌劇の作曲です。今現在はこなされた仕事を終えて間もないフリーの状態なんですよ」
「成程……それでパリで仕事を探していた際に今回こうして依頼を受けて演奏をしたという事なのですね」
「ええ、そんなところです」
どうやら今のモーツァルトは求職中らしいのだ。
作曲家や演奏家としても高い手腕を振るうことができる彼だが、彼の人物像にまつわるエピソードではかなり癖の強い人物であったとされており、仕事ではほんのごくわずかに音程のピッチが違っていたりすると直ちに楽器の調整を行ったというし、私生活では高価な服を衝動買いしたり賭博に興じたりと浪費癖も凄かったという。
なのでモーツァルトも、フラフラとヨーロッパ各地を旅したり史実でウィーンで定住後も曲を作ったり演奏すればそれだけでお金が入ってきたので遊びや買い物にも全力で遊ぶタイプの人間なのだろう。
むしろ、その方が人間らしくていいんじゃないかな?と俺は思った。
さて、そんなモーツァルトが作った歌劇の作曲も中々気になるので、皆がどんな内容なのか挙って聞いていた。
「そのリヨンで作った歌劇の作曲名はどんな名前なのですか?」
「はい、色々と考えた末に【フランスの花が咲く時】という名前です。改革によって次々と生まれ変わっていく社会……そんな目の前で起こっている時代の変わりようを綴った内容となっております」
「フランスの花が咲く時……いいタイトルですわね、パリでも公演されるのかしら?」
「そうですね……まだ正式には決まっていないのですが、リヨンで初公演された時には好評だったので恐らくはパリでも上演されると思います」
「おお、それは凄いな……パリでも上演されるのであれば我々も観に行こうかな」
フランスの花が咲く時……史実ではそんな歌劇はなかったので、おそらく俺が大々的に介入した事によって出来上がった歌劇なのだろう。
タイトルと大雑把な内容を聞くに、改革を賛美する内容なのだろう。
リヨンもオペラで有名な歌劇場が既にあるそうなので、そこで上演したそうだが果たしてどんな歌劇となっているのか興味が湧いてくる。
モーツァルトは作曲や歌劇の話になるとより詳しく話をしてくれた。
彼の目からは生き生きとした活気をも感じる。
「それに、10年前にパリに来たときよりも遥かに環境は良くなりましたね……作曲や演奏をする上で必要な環境も整っておりますし、何よりも街の人達が生き生きとしている……活気に溢れていて私も驚きましたよ」
「これもオーギュスト様が考案したブルボンの改革の賜物でもありますわ。改革を行い既存の政治体制を見直して経済を豊かにする。そして奴隷制を廃止して平民の人達への福利厚生などを取り計らう……民衆から支持を集める体制づくりを行った結果でもあります」
「そして、陛下は決して成果が出てもそれに浮かれることなく次の一手を打つ為に行動をする御方です。一歩ではなく二歩先を見ているのです……私達は陛下に、そして王妃様への支えになる事を誓っております」
アントワネットとランバル公妃がそれぞれブルボンの改革をプッシュしてくれた。
俺はあくまでも今後のフランスをより良い国にしようとしているだけだ。
それでも彼女達が誇りを持ってモーツァルトに語っているのを見て、俺は嬉しかった。
モーツァルトも目を輝かせてその話をしっかりと聞いており、終始楽しそうに会話を弾ませていたのであった。
1年の間に色んな人に読んでもらい、また「第八回ネット小説大賞」を受賞し、サーガフォレスト様より出版するといった大変目出度い年になりました。
これも皆さんの応援のお陰です。
本当にありがとうございます。
これからも精進して参りますのでよろしくお願いいたします。




