表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

233/1014

231:音楽鑑賞会

たまにはプライベートでゆっくりするお話が書きたいので初投稿です

☆ ☆ ☆


1775年10月1日


今朝はルンルン気分で起床したら寝ぼけたアントワネットに顔面を右手でチョップされて悶絶してしまったルイ16世だ。

慌てて起きたアントワネットが物凄く申し訳なさそうに謝っていたが、俺は笑って許した。

見事なチョップであり、空手の瓦割みたいで凄かった。

鼻の頭を強打したが鼻血は出ていないし激痛もしていないので大丈夫だろう。


さてさて、今日はブルボン宮殿で音楽会が行われる。

所謂オペラ鑑賞会だ。

フランスには有名なパリ・オペラ座があるのではないかと思った事もあったが、残念ながらあのパリ・オペラ座は19世紀後半に建設されたものであり、18世紀の今ではそんなオペラはまだないのだ。

……で、オペラ座がないので王立音楽アカデミーとして音楽祭などを主催する立場というわけだ。


最近は新大陸やイギリス、そして台湾基隆の買収を巡って議論やら討論などを重ねていたので、それを見ていたハウザーをはじめとする閣僚たちから「偶には陛下も音楽祭などで三日ほど休息を取ったほうがよろしいですよ」と休むように言われたので、その言葉に甘えて休息も兼ねて音楽を聴きにブルボン宮殿にやって来たというわけだ。


何気にル・マンでオルレアン家の残党が『金塊達の悪足掻き』という紡績機や蒸気機関を新大陸に持ち逃げしてくれるという地味に今後の対新大陸経済政策に影響を及ぼす事件をやらかしてくれたお陰で、報告を聞いて3日間胃の痛みで寝込んでしまった。

アメリカ大陸での工場展開も事件によって技術漏洩防止や安全保障の観点から一旦取り止めとなり、貿易関係に関しては見直しが急務となった。

そう易々とうまくいかないものだな……。


さて、今日これほどまでに音楽が恋しいと感じたことはない。

転生前の生活は音楽であふれていた。

テレビ、ラジオ、スマホ、パソコン……電化製品を触れたら音楽が流れるのは当たり前だった。

それに現代だったらオンラインショッピングでMP3かWAV形式の音楽をダウンロードしてスマホなりパソコンに接続すればいつだって好きな音楽を聴けたが、ここでは専属の音楽家の人が曲を演奏しなければならない。

つまり、音楽という存在はお祭りやこうした上流階級間における特別な時で流れるという事を思い知らされたのであった。


それに、今の時代は俺の愛したアニメソングは当然ないし、ロックもメタルもテクノもEDMもJAZZもない。

あるのはバロック音楽を含めたクラシック音楽だけだ。

この時代では最先端の音楽家による生演奏を聴きながら過ごすというのは凄まじく良いものだ。

音楽プレイヤーなんてないから曲を聞きたい場合は歌手を雇ってアカペラで歌うか、楽器を扱える人をスカウトして音楽を鳴らすしかない。

これに関してはやはり生演奏を聴きながら目を瞑れば壮大な感覚に酔いしれる。


王室という立場もあるが、晩餐会や交流会などでも宮廷音楽家による音楽演奏は本当に素晴らしい。

彼らは血のにじむ努力の末に宮廷音楽家として雇われた人達だ。

腕は物凄くいいのだよ。

音程も外さずにキッチリと演奏をこなしているので、やはりこうした音楽家というのは才能も加味されるのだろう。

そうした音楽家とも引けを取らない、ものスゴイ有名な音楽家がパリにやって来ているみたいなので、その音楽家の生演奏を聴きにやってきたというわけだ。


当初この間使っていたヴェルサイユ宮殿のオペラ劇場で聞けばいいのではないかと思ったのだが、オペラ劇場は今現在レイアウトを変更して大幅な改装工事中なのだ。

なんでも宮廷音楽家の人が試し演奏をした際に後列が聴き取りづらいという意見が多く出た為にレイアウトの変更を要望してきたのだ。

座席の位置をずらしたり、席と席の間隔を調整したりと設備課の人達がわっせわっせと使っているのでパリに赴いてブルボン宮殿に向かっている途中だ。

俺にアントワネット、ランバル公妃にルイーズ・マリー夫人、そして幼いテレーズにも音楽を聴かせたほうがいいかなぁ~と思い、テレーズも連れてきている。


「ふふっ、みんなで音楽鑑賞会をするなんて初めてではありませんか?」

「そうだねぇ~……パリの中心部に来るのも久しぶりだし、帰りに甘いお菓子のお店にもみんなで顔を出してみるか……」

「ええ、音楽鑑賞をしながらコーヒーやお菓子を楽しめるお店もあるといいですわね~」

「そうだねぇ……音楽学校に通う学生を中心にそうした事業を起こすのもいいかもしれないね。帰ったら草案だけでも挙げておくか……」

「パパ!おんがくー!」

「おお、テレーズ。そうだねー、音楽を聴きにいくの初めてだよねー。ちゃんと良い子にしているんだぞ」

「ええ、テレーズ様はいい子ですからね」


テレーズにとっては初めての音楽鑑賞会だ。

1歳ちょっとのテレーズだけど、最近は音楽を聴くのが大好きなので割と結構な頻度で宮廷音楽家に音楽演奏をリクエストしていたりする。

音楽を掛けないと悲しんで大泣きする事が度々あるので、最近は音楽の演奏を聴きながら食事をしたりする事も多い。


テレーズは感性豊かな証拠なのかもしれないが、ワガママが続くようならちょっと怖いんだけどね。

史実だと結構ワガママな癖が抜けなかったとか色々言われているが、それでも俺とアントワネットの娘……初めての子供という事もあってか、やはり可愛がってしまう。

うーん、転生前は育児とかした事無かったな……いや、それ以前に女性とすら付き合ったことのない童貞だったではないか!

ふと、アントワネットが物珍しいそうな顔で馬車の外を指さす。


「あら?オーギュスト様、アレを見てください」

「アレ……?おっ、あれは……キュニョー少佐の作った砲車か……」

「以前お見かけした時の砲車に比べて形が変わっておりますわね……煙突のような突起もありますし……」

「鉄製のレールに沿えて移動できるか公開テストをしているみたいだね……アントワネットはアレに乗ってみたいかい?」

「勿論!砲車も凄かったですし、砲車を改良した新しい乗り物であれば尚更乗ってみたいです!」

「そうだなぁ~……あれはフランス科学アカデミーが力を入れて取り組んでいる蒸気機関車だね……いよいよ実用化できそうだ。あと2年以内に乗れると思うよ」

「蒸気機関車……完成が楽しみですねぇ~」

「そうですね……馬車に代わる新しい乗り物に是非とも乗ってみたいですわね」


馬車の外に映っていたのはキュニョー少佐が設計指揮を取って作り上げている蒸気機関車だ。

蒸気機関を応用した乗り物を開発した功績を讃えて大尉から少佐に昇格させたのだ。

既存の砲車を大規模に改修し、レールに沿って移動する代わりに速度と馬力を上げたものを作らせているのだが、数学者のジャン・ル・ロン・ダランベールのダックコンビによってその開発速度は予想よりも早く完成しそうだ。


キュニョーは確かに技術者としては優秀であったが、砲車ではまだまだ改良すべき点がある。

そんな改良点を見つけ出してくれたのがジャン・ル・ロン・ダランベールというわけだ。

二人は道路をそのまま走らせるのではなく、既にレールの上に車両を載せて馬に引かせて牽引する貨車が存在していたので、それをヒントに「こうしたレールの上に砲車を改良した乗り物を動かせば安定して前進できるし、乗り物としていいんじゃないかな?」とアドバイスした所、ではそれで乗り物を作ってみましょう!という話になったのだ。


今日は実際にレールの上で蒸気機関車を走らせているようだ。

ただし、街中である上にスペースの関係からかサイズは結構小さい。

12分の1スケールといったところだろうか。

それでも大勢の人が集まって模型の蒸気機関車を見て大いににぎわっている。

科学アカデミーに多額の資金を投資したお陰で、こうした技術の躍進を目の当たりにできるのはいい事だ。

将来的には、テレーズが大人になった頃には蒸気機関車が実用化して、パリやヴェルサイユ周辺に鉄道網が構築される事になるだろう。

そうなればパリにちょっとお買い物したいときも鉄道を使っていく事ができるしね。

ふふっ、技術の進歩を目の当たりにするのはいい事だ。


「それにしてもこの辺りは大分綺麗になったね……」

「はい、陛下の国営回収処理業者の方々が仕事をなさったお陰ですわ。皆今まで無造作に窓から投げ捨てていた物がお金に変わるとなった途端に投棄を止めたぐらいですから」

「学生達の下宿先やアパートではそこそこ大きな収入となっていると伺いますよ。それに街が綺麗になった事でパリに来る観光客からも大変好評だそうです」

「そうかそうか……いやぁ……改革をやって良かったなぁって思うねぇ……」


パリを馬車の外から見つめてみると、大きく変わってきている。

何よりも街が清潔になった事だ。

最初にパリにやって来たときは、改革を始めたばっかりでまだまだ改善点もいくつかあるな~と思っていた。

特に汚水処理と汚物の不法放棄の問題が酷かった。

それが今では汚水や汚物を買い取るシステムを導入した事で、見違えるほどパリの街中は綺麗になった。

パリの中心部を流れるセーヌ川からはドブとか汚物をリミックスしたようなこの世の全ての汚い何かを混ぜ合わせたようなヤバイ臭いはしなくなり、見違えるほどに綺麗になった。

改革の成果が実りを見せているのだ。

その実感に嬉しく思いつつ、馬車はブルボン宮殿に到着したのであった。

いつもご愛読頂きありがとうございます。

皆さんからのコメントに励まされています。

意見・感想があってこそ私の原動力、ガソリンとして機能しております。

何度か文章を確認して投稿いますが、どうしてもうまく物語が回っていないんじゃないかと思う事が多々あります。薬を服用している関係で些か文章がおかしくなっている箇所が出てくると思います。

その時は皆さんがご指摘をコメントや誤字報告等で言ってくれると幸いです。

これからも何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー

☆2020年9月15日に一二三書房様のレーベル、サーガフォレスト様より第一巻が発売されます。下記の書報詳細ページを経由してアマゾン予約ページにいけます☆

書報詳細ページ

― 新着の感想 ―
[一言] 作者様、更新楽しみにしていました!! 蒸気機関車だけでなく鉄道及び馬車鉄道も並行して研究されているのだろうか? イギリス・他国発祥の発明や物をどんどんフランス発祥にしてリードしていきたいです…
[気になる点] 一歳の子供が音楽という単語を理解するのは早すぎるきらいがあるかと、少し雰囲気壊れてる気がします
[良い点] 30話ほどからここまで一気に読ませていただきました。ifストーリーでこれだけの長編物は少ないのでとても読み応えがありました。血生臭い争いばかりのというわけでもなく、しかし多少の赤い時間があ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ