214:選ばれたのは台湾でした
ここで主人公のゲーミングパソコンの伏線が回収されるので初投稿です
台湾……。
俺にとってアジア地域で日本に次いで思い入れのある場所だ。
中国大陸に近く、また沖縄やフィリピンにも地理的に近いこの島は現代では大陸への防波堤としての役割を果たし、21世紀にはハイテク産業が飛躍的に発展して多くのパソコンメーカーのパーツを製造している事で知られている。
(台湾……あっ、俺の友達でMUSHITEの重役をしていた鄭さんの故郷じゃん!それに俺のゲーミングパソコンの部品の殆どが台湾製の部品を使っていたからなぁ……グラフィックボードとかマザーボードとか……CPUだけは米国製のInzen11使っていたっけ……)
転生前に沢山遊んでいた俺の相棒とも言えるゲーミングパソコン。
そのパソコンの部品には多くの台湾製の部品が使われていて、その部品を作っているパソコンメーカーMUSHITEの重役であった鄭さんとは長い付き合いだった。
世界的に有名なMMOFPSゲーム「バトル・オブ・タイペイ」でそこそこ上位ランクに入っていたクラウンと対戦した時に知り合い、転生前では一緒にオンラインでHOBFを遊んでいた仲だ。
『いつでも台湾に来てください!待ってますから!』
「いやーでも鄭さんに悪いですよ、それに中々有給休暇が取得できる状況ではないので……」
『それでしたらウチの会社に移籍しませんか?何でしたら日本支局の社長に紹介しておきますよ!』
「いやいや!それもっと気を遣ってしまいますから!でも、長期有給休暇取れたら台湾に行って鄭さんと飲みに行きたいですねぇ」
『でしたら是非来てください!台北の美味しいお店でご馳走しますよ!』
色々と仕事で辛かった時とかも、彼に相談して事なきを得たこともあったし、会社を移籍しないかと声をかけられたこともあった。
今となっては遠い思い出になってしまったなぁ……。
いつか台湾に行って鄭さんと飲みにいきたいですねと話していたことが本当に遠い昔のようだ。
もう転生して5年目に突入するからねぇ。
時が経つのは随分と早いものだ。
鄭さんはかつて清王朝から独立を宣言して数十年間台湾を支配していた鄭成功の子孫だって言っていたなぁ。
この時代、台湾は清国の統治下にあったが、あまり発展はしていなかったらしい。
というのも、台湾は中国本土と比べて土地の開発が進められていない上に、清国政府は「とりあえずこの土地キープだけはしておこう」として福建省に編入したものの、当時の台湾は原住民族が大多数を占めており、彼らとの摩擦も大きく発展には結び付かなかった。
後に台湾を支配した日本帝国統治時代では密林戦・ゲリラ戦に特化し勇敢な事で知られていた山地に住んでいる高砂族の義勇兵が南方戦線で活躍した事でも知られている。
それに本格的に台湾の開発が行われたのが日本帝国統治時代と言われている。
ちなみにこれらの知識は鄭さんがチャットで教えてくれた豆知識でもある。
(地理的に勿体ないよなこの場所……港と農業を開発させればサン=ドマングよりも大きな利益にもなるし、アジア方面のビジネスを広げるチャンスになるんじゃないかな?)
そう、地理的に勿体ないのだ。
清国曰く台湾は一応領土ではあるが、あまり積極的に開発をするまでではないというスタンスを取っているので、せっかくの土地が無駄になっている。
この台湾をフランスが買い取って日本・琉球・清国など東アジア地域への農産物貿易を行えば利益が出るだろうし、台湾は農産物では砂糖やバナナが名産品だと聞く。
十分に投資をして、開発をすれば行けるんじゃないだろうか。
日本は未だ鎖国体制下にあり、貿易に対しても消極的だ。
なので、台湾をフランスのアジア地域における貿易拠点としたほうがいいのではないだろうか。
「アンソニー、一つ頼みがあるんだがいいかな?」
「はい、何でございましょうか?」
「国土管理局に清国の領土である台湾に関する資料を集めるように伝えてくれないか?それと、清国の経済状況に関する情報も知りたい。直ぐに入手できない場合は時間を掛けてもいいから台湾に関する情報を集めてきてもらいたい」
「かしこまりました。国土管理局ではアジア地域の資料もそれなりに揃っておりますので、すぐに見つかるかと」
「ああ、現時点で国土管理局にある台湾の資料があれば持ってきてもらいたい。じっくりと拝見したくてね」
「はっ、すぐにお持ちいたします」
アンソニーは台湾に関する資料を集めに一度執務室を離れた。
その間にどのようにして清国から台湾をゲットするか考えなければならない。
戦争行為は厳禁なので、やるとしたらロシアと清国が戦争をしている今がチャンスかもしれない。
ロシアは進撃を続けているみたいだが、清国との戦争が長期化すれば双方ともに資金面での問題が出始めてくるだろう。
軍事費が賄えそうにない場合に国が採る方針はいくつかある。
まず国債を発行して他国に買ってもらうこと、これは日露戦争時に日本が採用した方式であり、現在アメリカ独立戦争でもイギリス側が採用している。
国債を買い取ってもらうことによって軍事費を賄ってもらえるので、比較的簡単に資金を調達できるメリットがあるが、難点としては膨大な借金に膨れ上がる可能性があるという事だ。
それが無理なら国民から税を搾り取って戦争をする事もある。
清国は中国大陸を支配する大国ではあるが、膨大な土地を維持するためにかなりの借金を重ねているらしい。
あと、今は清王朝の黄金期でもあるが、同時に役人の政治腐敗が進んでしまっている状態なので、借金と合わせて汚職なども深刻化してきている。
HOBFの史実清王朝イベントだと、1820年から1860年に掛けてイギリスとのアヘン戦争や太平天国の乱が勃発し、各地で農民の反乱が沸き起こる嫌な時期になるが、それより前から政治腐敗が進んでいると書かれていたので、もう水面下では役人の汚職も蔓延している頃合いだ。
そうした政治情勢を鑑みれば、あまり積極的に介入せずに放置状態の台湾を安く譲って貰えるかもしれない。
「お待たせいたしました。台湾と清国に関する情報を纏めた本になります。イギリスの東インド会社が今年の4月にまとめた情報ですので、これが一番我々が入手できる最新の情報になります」
「うむ、ありがとうアンソニー、では読ませてもらうよ」
アンソニーが持ってきてくれたのはイギリスの東インド会社が作り上げた清国に関する情勢を纏めた本だ。総ページ数600ページとかなり分厚いが、これでも清国や台湾を含めた東アジア地域の最新情報が載っている。
現代ならインターネットで一発検索をすればいいが、東アジア地域からヨーロッパに情報を持ちこむのには最短で1カ月、長いと2カ月以上掛かる。
今日が5月22日という事を考えれば、3月までの情勢が載っているというわけだ。
(清国方面はロシアが南下してきていることもあって税の徴収が進んでいるのか……やはり幾度も地方や他の民族への征服事業をしているせいでお金が嵩んでいるんだなぁ……)
やはり清王朝の懐事情は寂しいのではないかと書かれている。
税を徴収して戦争に備えており、かつロシアを撃退するために兵士も徴兵しているらしい。
満洲方面は特に軍備が物々しい事になっているらしく、清王朝の不可侵領域である満洲を奪われない為にイギリスに武器の輸入を打診までしているという。
清王朝は国土と人口が多いものの、工業の基礎能力は低いのでまだ武器の大部分は前時代的な火縄銃が主流のようだ。
それも、火縄銃の配備数は日本の半数以下らしい。
農奴や懲罰兵を動員しているとはいえ、ヨーロッパの大国として君臨しているロシアは火縄銃よりも性能の高いマスケット銃を保有しており、軍事面では実戦経験が豊富だ。
尚且つ中国大陸を南下して領土を広げようとしているので、中国大陸北部で清王朝が敗北した場合、ロシアは広大な土地を手にする事になる。
そうなれば清王朝としても資金を工面しないといけない状況下に陥りるだろう。
「一先ず、明々後日に閣僚級会議を開催したいと思う。資金面でも人材面でもフランスはゆとりが出てきた。東アジア地域への進出の時期がそろそろやって来た頃合いだからね」
「では、陛下が目標としていたブルボンの改革最終目標の東アジア地域の進出の時期がやって来たというわけですね」
「そう言う事だ。ささっ、忙しくなりそうだ」
俺はアンソニーに閣僚級会議を開催する事を伝えて、それまでに東アジア地域の情勢を纏めた本を熟読するのであった。




