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179:ライダー

☆ ☆ ☆


「そろそろ時間かな?」

「はい、既に招待券を有している皆様方が集まっております」

「よし、美味しい紅茶を飲んだことだし、行こうか!アントワネット!」

「ええ!行きましょう!」


いよいよ、国際行事の舞台の開幕だ。

第一回:国際フランス服飾見本市で、国内の貴族や有力者……諸外国の来賓の方々がブルボン宮殿に次々と到着し、俺たちが来るのを待っている。

警備体制は万全だ……何かあれば憲兵隊や守衛が飛んできてくれる。

現に、今俺たちが待機所から宮殿の展示中央部の広場に向かって歩いている時も、護衛の守衛が10人体制で守っているんだ。


赤い雨事件以来、守衛として責務を全うしてきているダニエル・ポルナレフは階級が伍長だったのが今では少尉になっている。

時が経つのは早いものだ。

あの時ダニエル少尉が駆けつけてくれなかったらと思うとゾッとする。

赤い雨事件時の功績をさることながら、改めて士官学校のカリキュラムを習い、今年になって士官学校を卒業し少尉となって守衛として再びヴェルサイユ宮殿に舞い戻ってきたのだ。

何かの運命を感じるよ。


「それにしてもダニエル少尉が護衛役を務めてくれると助かるよ……」

「いえ、我々も内国特務捜査室側から陛下の命を守衛として守るようにとの指示を受けています。それに、こうして陛下に仕えることが出来て大変光栄でございます」

「うん、何かあった時は君たちに任せる。よろしく頼む」


ロアン枢機卿の残党が何か攻撃を仕掛けてくるのではないかと警戒は常に行っているが、割とテロリズムというのは抑制が難しいから困るよね。

これからせっかくアントワネットが望んでいたファッション関連のイベントをやる最中で問題を起こすようならただじゃおかねぇ……。

もしアントワネットに危害を加えようとする愚か者がいたら全員まとめて指先一つで倒してやる。


……とは思ってみたが、指先一つで倒せるほど屈強でもないし……神拳を使えるわけではないのでこれは流石に無理か。

咄嗟にアントワネットを守る事ぐらいはせねばなるまい。

俺たちのことは誰にも邪魔させない。

その事を頭の片隅に入れておいて、俺とアントワネットは開幕式を行う場所まで歩いている所だ。

3分とかからないが、少し空気が張り詰めている感じがするな……。

そんな張り詰めている空気が苦手なのか、アントワネットは自分の心境を語った。


「それにしても……様々な衣装をこの目で見れると思うと……胸の高鳴りが凄いですわ……」

「そうだねぇ……アントワネットが気になっている衣装とかはあるのかな?」

「ええ!勿論です!オーストリア製のドレスを見てみたいのと……あと新しい乗馬用の衣装が欲しいのです!」

「乗馬用の衣装?」

「はい、最近では落馬しても身体を傷めないように綿を敷き詰めた乗馬用の衣装が巷では流行しているそうですの!特にオランダ製の乗馬用衣装が最も品質の良いものとの事ですので、その衣装を見てみたいのです!」


アントワネット一押しの衣装が乗馬用の衣装らしい。

最近はあまり乗らなくなったけど、彼女凄く乗馬が好きなんだよね。

テレジア女大公陛下から「若いうちから乗馬をやり過ぎると子供が産めなくなりますよ!」とお叱りの手紙が届いた事があったけど、そのぐらいに乗馬が好きなんだ。

史実でも乗馬好きが災いしてか、競馬で数十万リーブルの借金を抱えるほどに熱中したぐらいだしね。

通りで某ゲームの適性属性が騎乗だったのも納得いくわこれ。


庶民クラスだと、そこまで高くはないが……やはり貴族や上流階級向けの衣装となれば当然装飾品などが加算されるので高い。

建国記念日とかパレードなどで着用する乗馬用の衣装は、高いものだと250リーブル以上もの値段になるという……おまけに、基本的に汚れたら洗濯できればいいんだけど、洗濯できない衣装もあるのでその場合は破棄処分になるという。


キュニョーの砲車を見て以来、蒸気機関で作った自動車が馬よりも高速で走り出す事があるかもしれないと、密かにアントワネットはライバル心を持っているとか……。

この間も、キュニョーの砲車はお馬さんのライバルなので、いつか本気(ガチ)で競争したいとも語っていたぐらいだ。

砲車は実戦運用が可能になるまでにあと数年単位での改良が必要らしいので、それまで待つことをオススメすると俺は返答している。

あとテレジア女大公陛下からのお説教もあってか、アントワネットは第一子の出産後までは乗馬を控えているのだ。


「よし、それじゃあスピーチが終わったら一緒に乗馬用の衣装を見に行こうか」

「ええ!オーギュスト様も一緒に見てみましょう!」

「うんうん、新しい衣装も試着してみたいからねー……それじゃあ、会場に着くから話の続きは終わってからね」


いよいよ開幕式が始まる。

宮殿の広場には大勢の来賓の人々が椅子に座って待っていた。

ずらーッと見渡しても、様々な衣装を身に纏っている。

国内の銀行家や投資家は勿論、プロイセン王国からも参加者が集まっている。

割とプロイセン王国からの来賓希望者が多かったんだが、彼らはフォンテーヌブローの勅命によって祖国を追い出され、プロイセン王国に帰化したユグノー派の元フランス人の人々のようだ。


今回、来賓として訪れたのは彼らの意向を汲んでいるのもある。

ブルボンの改革によって我がフランス王国は宗教的制約を取り払ったのだ。

今後、国内で暮らす上では宗派や人種も関係なく一つの国民としてフランスの発展を促進していく事を盛り込んだのだ。


それがプロイセン王国に移り住んだユグノー派の人々の注目を集め、フォンテーヌブローの勅命は失政であり、多くの人々に迷惑を掛けたと謝罪したのがかなり驚かされたという。

改革が実行に移されてから、そうした宗派や人種間の問題解決の為に新聞のコラムや公布人を使って、時間を掛けて国民を説得させたんだ。


世論調査などを行い、ユグノー派の迫害が強かった地域を除いて彼らへの対応感情が良かったフランス南部地域の協力を得てユグノー派の帰国事業を段階的に行ってきた。

帰国事業によってこれまでに1200名程の人々が帰国しており、特に中南部に位置するオーヴェルニュ地域への帰国者が多く、彼らは絹織物産業経験者が多かったこともあり服飾産業もここ数年で急成長を担う一因となった。


しかしながら簡単にはこの問題は解決できない。

まだまだ問題や課題は多く残されている。

カトリック派が多く占める北部ではまだまだ懐疑的な意見や主張をする人も多い。

しかし、改革が実行に移されて効果が出ているとなれば、フランスに戻ろうとする人もより多くいる。

そうした人々を支援する為に、数週間以内にプロイセン王国側と協議してユグノー派の元フランス人の帰国事業も本格的に開始するつもりだ。


さて、人々の視線が俺に突き刺さっている中で司会進行役のコメディ・フランセーズ(王立劇団)に所属している女優さんがゆっくりと息を吸い込んで大きな声で開幕式の挨拶を始める。


「これより、第一回:国際フランス服飾見本市の開幕式を始めます!先に、国王陛下よりご挨拶がございます。皆様、ご清聴願います」


さすがコメディ・フランセーズ出身だけに、透き通った声の出る人だ。

俺の声より数万倍響くね。

この声で是非ともアニメソングを歌って欲しいと心の中で思いつつ、俺は彼女に負けじとスピーチを始めた。


「お集まりの皆様……ようこそ、ブルボン宮殿へ……この度は我がフランス王国の国際行事となる第一回:国際フランス服飾見本市に参加して下さり、誠にありがとうございます。まず最初に……見本市への出展を協力して下さった各国の方々の力によって支えられた賜物でもあります。この見本市は国際間の協力が無ければ不可能でした。オーストリア、オランダ、プロイセン、イギリス……ヨーロッパ諸国の服飾店が集まり、このような形で互いに顔を合わせ……そして各国の服飾の文化や歴史を感じる良い機会を与えて下さった事は本当に感謝の気持ちで一杯です」


多彩な服飾の数々……モーターショーやゲームショーなどを参考にして見取り図を作り、この時代では画期的な見本市を開くことが出来たのは本当に感謝の気持ちで一杯だ。

紛れもない本心だ。

こうした形で国際交流の場を設けることが出来たのは各国への根回しもあるが、やはり見本市への参加を表明してくれた服飾店の人達のお陰でもある。

彼らへの感謝の意を表した。


「また、こうした形で各国の国際交流が行えるのは、とても良い事だと思っております。今後は服飾だけではなく、医療や経済の面から交流を広げて行けるようにしていきたいです。最後になりますが、見本市でお困りごとがございましたら広場中央に設置しました案内所までお申し付けください。ご清聴ありがとうございました」


頭を下げると人々から盛大な拍手が巻き起こった。

かなり宮殿広場で拍手の音が響き渡っている。

どうやらスピーチはうまくいったようだ。

それから、再び進行役の女優さんから案内などを行ってから見本市が開幕するのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この回だけに限らないが日本語の使い方が間違ってる箇所がたびたびあり読んでて気になる。 [一言] 書籍化する事で校正 校閲されて正しい言い回しや日本語の意味が分かる様になると良いですね。…
[一言] ダニエル・ポルナレフ少尉の活躍はこれからだ!
[一言] いつかは世界各国の食の祭典を開きましょう(笑)
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