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158:貴婦人の魅力

………。

……。

…。


ああ、ついにこの日が来てまいりました。

オーギュスト様との交わりを交わす日です。

私が18歳になったら世継ぎを……と、決めていた日でもあります。

この日をもって、私は王妃としての役目を果たすのです。

大トリアノン宮殿でランバル公妃とルイーズ・マリー夫人と共に事務作業をしながら、今日の夕刻より行われる誕生日会、そしてオーギュスト様とのより深く密接な関係を築く日でもあります。


(18歳になったら君を妻として……夫婦の責務を果たそう)


オーギュスト様の言葉を忠実に守ってきました。

決して他の女性に現を抜かすような事はせず、ひたすら国務を務める国王陛下です。

それでいて、遊ぶ時は私と一緒に遊び、この間は落ち葉でいっぱいの公園で皆さんと一緒に遊んだりもしました。

このようなひと時を過ごせる機会を設けて下さった陛下に感謝しなければなりません。

そして、妻としての夜を一緒に過ごすのです。

この日を待ちわびておりました。


「王妃様、いよいよ今日ですね……」

「ええ、……今日は一生の思い出に残る一夜になりそうですわ」

「……王妃様が羨ましいですわ。きっと今夜は素敵な夜になりますわ」

「ありがとう、ランバル公妃……私、今からもう凄く心が躍ってしまいそうよ!」


ステップを踏み出したくなります。

こうも心も身体も高ぶってしまうだなんて。

ランバル公妃やルイーズ・マリー夫人から話は伺っております。

どんな一夜になるのかを。

大抵の場合は、男性側の気分を高揚させるために演技力を用いて大きな声を上げたり、ささやかながらの愛について語りながら、波に浮かぶ真珠のように全てが収まるまで待っていることが多いのです。

女性はそれを耐えるだけ……。


お母様からもその事をお聞きしたことがございます。

ちょうど先々月の初め頃に……。

お母様は愛していたお父様と結ばれた極めて珍しい結婚だったと言っておりました。

恋愛結婚なんて許される事は、本来王族としては余程の事でない限りはあってはならない事だそうですが、それでもお母様の熱烈なプロポーズにハートを射抜かれたお父様は、異例ともいえる恋愛結婚故に、私を含めて子宝に恵まれました。


私はオーギュスト様の事が好きです。

最初、オーストリアからパリに到着するまでは、結婚だなんて冗談じゃないと思っておりましたわ。

だってウイーンでの生活がいつまでも続くと思っていたからです。

途中で私は泣き出してしまった事もありました。

それだけオーストリアが恋しかったのです。


ですが、オーギュスト様との出会いで全ては変わりました。

ヴェルサイユ宮殿に到着したばかりの私に気を遣ってくれた最初の人でもあります。

殆どの人は、私の事をフランスに嫁いで来たオーストリアの女性として、政治的に利用しようと企んでいる人が多くいました。

特に国王陛下を害した上に、愛妾デュ・バリー夫人を殺害したアデライードがその筆頭ともいえる人物でした。


妹のヴィクトワールが逮捕されて取り調べをした際に、オーストリアから嫁いで来た私をどう扱うかアデライードと話し合った際に、自分達の陣営に取り込んでデュ・バリー夫人への嫌がらせの為の道具にしようとしていた事も判明したのです。

なんと恐ろしい話でしょうか。


その事実をオーギュスト様から聞かされた時はショックでしたが、逆にオーギュスト様がそうした事を察知して私を彼女達から距離を置こうとしてくれた事は、本当に有難い事です。

もし、オーギュスト様が今よりも消極的で……かつ、アデライード達のデュ・バリー夫人への悪口などを信じてしまっていたら……。

きっと、私の評判はかなり悪かったと思います。


「もしあの時……アデライード達の言いなりになってデュ・バリー夫人と対立していたら……そう思うだけでゾッとするわね。そうなっていたら、今こうしてお話を楽しむことすら見向きもしなかったかもしれないわ……」

「王妃様はとてもご賢明な判断を致しました。国王陛下も同じく、御二人は今やフランスにとって欠かせない人ですわ。私もこうして王妃様にお仕えできる事が何よりも幸福でございますわ」

「そうです。国王陛下と一緒に街を散策したり、春の大麦パン巡りを企画したりした結果、王妃様は貴族や聖職者の方々だけではなく、大勢の庶民層からも敬愛されております」

「二人ともありがとう、そう言ってもらえると嬉しいわ」


こうしてランバル公妃やルイーズ・マリー夫人という、友であり素晴らしい部下を持つことも出来なかったかもしれません。

恐らく、自分のやりたいことだけを重点的にやってしまうような……自己中心的な性格のまま、王妃として振る舞って反感を周囲に買ってしまっていたでしょう。

そのような事をしなくて本当に良かったと実感しています。


このぐらいの時間になると、少々おしゃべりが過ぎてしまいますわ。

けど、もう時計の時刻は2時半を回っております。

そろそろおやつの時間ですわ。


「そろそろ休憩にしませんか?もう仕事を始めて3時間になりますよ」

「あら!もうこんな時間ね!今日はどんなお茶を入れるのかしら?」

「昨日仕入れたハーブティーはいかがでしょうか?教皇領のプロヴァンスで採れたハーブを使用したお茶ですので、透き通った香りが特徴的です。お身体にも良いと好評ですよ」

「ハーブティー……それじゃあ是非ともそれを淹れて頂戴」

「かしこまりました」


お湯を使用人さんに持って来てもらってティーポットの中に乾燥したハーブをお茶の葉とミックスさせて注ぐのですわ。

こうして注ぐとあら不思議、香水を掛けていなくても独特のハーブの心地よい香りが部屋中に駆け巡ってきますの。

ああ、こうして香りを嗅いでいるだけでもリラックスできそうですわ。


「とってもいい香りね……身体が安らぐようだわ」

「ハーブは鎮痛剤としても使われていますからね。身も心も安らぐことができる万能薬のようなものですわ……ささっ、王妃様……ハーブティーとブリオッシュでございます」

「まぁ、今日はブリオッシュなのね!それに今日はバターを多めに使ったのかしら?」

「よくご存知で……今日は王妃様のお誕生日という事もあって、このブリオッシュには高品質のバターを多く使用しているとのことです。丁度お伝えしようとしていたのですが……」

「フフフ、これだけバターの香りが漂っていれば分かりますわ」


パンの真ん中部分がぷっくりと膨れ上がったお菓子。

それがブリオッシュですわ。

パン菓子としても甘くて美味しいので、私のお気に入りでもありますの。

そんな甘いお菓子と、心地良いハーブティーと一緒に頂くのはとっても気分が良いですわ。

ブリオッシュを口の中に入れると、不思議と甘みと噛み応えがある素晴らしいものになっていきますの。

普通のパンと比べても柔らかい上に、甘さを重視して作られているので、本当に食べているだけで満足しますわ。

そんな甘いブリオッシュと一緒にハーブティーも飲みます。


透き通るようなハーブの香りが漂うハーブティーを一杯。

飲み込むだけで口の中が爽やかな気分になります。

甘い食べ物を食べた後に、喉を潤して口の中がスーッと気持ち良くなるハーブティー。

どれも美味しく頂きました。


「本当に美味しいわね……このハーブティーも飲むだけで気分が落ち着いてくるわ!」

「はい、なんだが陽気もあってか眠くなってきましたわね」

「いいわ、せっかくだし30分……いえ、1時間ぐらい仮眠しても問題ないわ。使用人さん、1時間後に起こしてくれるかしら?」

「分かりました。では、それまでごゆっくりとおやすみ下さい」


ハーブティーを飲んでから、段々と眠くなってまいりましたわ。

毛布を膝にかけてすこしソファーに寄りかかってランバル公妃やルイーズ・マリー夫人と一緒に仮眠休憩を取ることにしましたの。

もう本当に……眠くなる時は一度仮眠をしてから休んで、それからまた仕事に取り組めばいいですわ。

休むことも仕事の一つだとお母様が仰っておりましたし、こうして休むことも大事なことです。

それに、今夜の事がありますから今のうちに寝ておきましょう。

浅い眠りから覚めたら仕事を再開しましょう……。

それではおやすみなさい。

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