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153:人参構想曲

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★ ☆ ★


ニンジン……ニンジン……ニンジン……オーギュスト様と一緒に作ったニンジンを中心に出来上がった料理の数々。

基本的に庶民の家庭でもお金を掛けることなく、手軽にできるようにとオーギュスト様自らが考案なさった料理です。

実は3日前までに8品までレシピを絞り込んだのだそうですが、これが思った以上に悩み抜いた末に出そうと考えたのだそうです。


『王のニンジン料理』として昨日寝る前に机で何かを思い出すような感じでメニューを練っていたのが記憶に新しいですの。

あまり材料費が高すぎては庶民の手に届かず、かといって美味しく無ければ人々に食べて貰えない。

生のままだと苦味が強いニンジンに対して、そんなジレンマを抱え込んでいるようにも見えました。


「美味しいものを沢山食べてこその人生か……うーんやはりあのアニメのようにカレーに人参をぶち込むのもアリか……いやでも香辛料は高いし庶民向けじゃないな……」

「オーギュスト様、何かお考えですか?」

「おお、アントワネット……いや実はね、皆に振る舞う予定のニンジン料理なんだが……少々悩んでいるんだ」

「悩みですか?私でよろしければお話をお伺いいたしますわ」

「有難い、ニンジン料理を普及させるためにアントワネットの知恵を貸してほしいんだ」

「知恵……ですか?」

「そうだ、俺とは違う視線から見てみるニンジン料理と言えばいいのかな……うん、ちょっと料理のメニューをいくつか考えたんだが、どれがいいか悩んでいるんだ」


オーギュスト様はニンジンを使った料理をいくつか考案していたのですが、いずれも費用がかさんでしまう為に、ニンジンを単純な作業で美味しくさせる方法というのを考えていたのです。

単純そうにみえて、これが意外と苦戦していたようです。

ニンジンは生のままでは苦味が強い野菜ですので、そのまま丸かじりで食べると……ちょっと私でも苦手になってしまうかもしれません。


「できれば一般庶民にも普及をさせたいんだ。ジャガイモの栽培が広がっているのと同時に、ニンジンをはじめとする様々な野菜を育てて食べるようになれば、人々の食生活も良くなると思っているんだ」

「食生活の改善ですか?」

「そうだ。例えば皿に盛りつけられているのが薄っぺらいウサギ肉一枚だけよりも、レタスやカブといった色とりどりの野菜が皿に盛りつけられているほうが沢山食べれるだろう?肉と野菜をしっかりと食べれば栄養も取れるし、病気になりにくいと言われているんだ。庶民にも食べられる野菜の種類と出荷量が増えれば、その分様々な野菜が市場に出回って食事も豊になる。まさに一石三鳥だよ」


オーギュスト様は目を輝かせて力説していました。

私は野菜を食べるのが苦手でしたが、料理の盛り付けに使われている野菜も選ばれた農家の人から毎日鮮度を保たれた状態で出荷されている野菜と知ってから、食べるようにしましたの。

まだまだレアな血の滴るようなお肉は苦手ですが、野菜は苦手を克服できそうです。


「野菜を多くの人に手にとって貰えるようにするのですね……で、あれば今日の夕食にニンジン料理を作ってもらうのはどうでしょうか?シンプルな料理と、複雑な形式で完成する高級料理を作ってから、味の比較や価格を抑えれるようにする工夫などが見えてくるかもしれませんわ」

「なるほど、料理を作ってから比較する方法か……うむ、では今日はニンジン料理尽くしといこうじゃないか!アントワネット、手伝って欲しいのだが……いいかな?」

「勿論ですわ!」


まだ夕暮れ時でしたので、私は夕飯の際にニンジン料理を出してもらって再度考えましょうと提案すると、すぐにその案に乗ってくださいました。

シンプルな調理方法と、複雑で高級料理として位置付けられている料理で出されるニンジンの調理法の違いと、味の比較……。

美食家や料理研究家ではないのですが、ニンジンの風味や食感などを確認してからしっかりと決めようとしたようです。

召使い長にこう仰っておりました。


「料理総長に伝えてくれ、今日の夕飯はニンジン料理尽くしで頼むと……それから、ニンジン料理のうち数品は単純に茹でたり焼いたものを出してほしい。調味料なども付けずにね……」


ニンジン料理という事もあって、オーギュスト様は高級料理で使用されるニンジンを注文いたしました。

キャロットラぺを注文して、オレンジ色のニンジンを味わっている間にオーギュスト様は料理総長を呼んで色々と聞いておりました。

というのも、高い料理では調理の際にどんな素材を使っているのかを調べるためだったそうです。

さらに料理総長にお話を伺い、ニンジン料理で最適なゆで時間なども熱心に耳を傾けて聞いて、そこから作りやすい料理を絞り込んだのです。


「ニンジンと塩漬けイワシの和え……キャロットスープは沢山の香辛料なり具材を入れないといけないから逆に単価が高くなってしまうな……塩漬けイワシも高いからな……であればサラダと葉っぱ部分のおひたしにでもするか!アントワネット!俺たちでも作れる料理が出来そうだぞ!」


その決定を決めた時のオーギュスト様はとにかく楽しそうにしておりました。

料理といえば、複雑で形式の高いものがフランス流だと教わりましたが、オーギュスト様はそれよりも庶民でも食べれるように工夫をこらした料理を作ろうとしておりました。

なので、私と一緒に作れる料理を考えてくれたのだそうです。


後で知ったのですが、料理総長も「国王陛下に教えたのはニンジンのゆで方程度で、それ以外は何も教えていません」とのことでした。

つまり、何処かでオーギュスト様が「にんじんのおひたし」と「にんじんの千切りサラダ」を考案したということになります。

前日までには事前に料理を作って味見をしていたので、恐らく最終的な調整をしていたのでしょう。

眠る前にオーギュスト様は囁いて言いました。


「きっとうまくいくよ……だから明日は一緒に料理を作ろう」

「はい、お願いいたしますわ……」


そんなオーギュスト様の背中を見守って、いよいよニンジン料理の試食会が始まり、会場は徐々に盛り上がっていくのでした。

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