136:立ち上がる者
800万PV突破したことと、今回はサービスシーンも兼ねて初投稿です。
なお、本話には小説家になろうのガイドラインにおけるR-15相当に当たる描写が入っております。
ガイドラインに従って適切に使用しておりますが、何卒ご了承ください。
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同日
フランス・リヨン
フランスでも有数の地方都市の一つであるリヨン。
この街では、二人揃ってプライベートでくつろいでいる国土管理局のメンバーがいた。
アンソニーとジャンヌである。
好青年であるアンソニーと、世の中の男性が美貌に惹かれて必ず振り返るほどの豊満な身体つきをしているジャンヌは現在国土管理局公認のベストカップルでもある。
ルイ16世は1月13日にフランス本土に帰ってきた二人を呼び出してサン=ドマングで活躍して事態を鎮静化させた事を褒めた上で、労いとしてリヨン郊外の屋敷を二人に貸し出したのだ。
それも召使い付きでだ。
これは諜報員の二人にとっては破格ともいえる待遇でもあったのだ。
「二人の献身的な任務によってサン=ドマングは救われたと言っても過言ではない。この功績を世間一般に広めることが出来ないのが残念だが、政府としても……そして国王である俺からも改めてお礼を述べたい。二人の迅速な行動によって騒動は最小限に食い止められた。よって、この功績を讃えて二人には臨時ボーナスと臨時休暇として本年12月末までリヨンにて休養を与える。ゆっくり休め」
「ありがとうございます陛下。本当に何から何まで……」
「いいってことよ、アンソニー君やジャンヌ君が奮闘してくれたおかげで被害は最小限に食い止めることが出来たんだ。これは後世の歴史書に記されるべき功績だよ!だけど……その事を公表してしまうと国土管理局の本当の姿が露呈しまう。だからこうして裏でひっそりと祝辞しか述べられないのが辛いんだ……だから今は二人でゆっくりしていきなさい」
「では、お言葉に甘えてリヨンで休ませていただきます」
「うんうん、二人でゆっくりと休んで静養するように、年末まで休んでいていいから二人でゆったりとした時間を過ごすんだよ」
去年発生したサン=ドマングでの騒乱が治まって、ようやく二人で落ち着いた雰囲気でリヨン郊外の屋敷で滞在していた。
この屋敷はオルレアン派の貴族が所有していたものであり、その貴族が捕まって以来空き家になっているので、二人に与えて住まわせているような状態でもあるのだ。
本来この時代における諜報員というのは、一定額の報酬などを受け取るのが通例だが、今回の報酬は正に戦争とかで手柄を立てた人物などに贈られるような褒美に一度は断ろうと思ったアンソニーだったが、ルイ16世がアンソニーとジャンヌの恋仲の事を知っていて、ゆっくり屋敷で過ごすようにとの配慮を知ったアンソニーとジャンヌは満額通りの言葉を受け取ってリヨンで長い休息をしている。
勿論、事態の解決に向けて努力や情報収集を行っていた国土管理局のメンバーやジョセフ・サン・ジョルジュなどへの臨時ボーナス、休暇申請などを通している。
だが、その中でも現地の国土管理局を指揮してサン=ドマングの危機を救ってくれた影の英雄である二人をどうにかして最大限に労いたいとルイ16世は考えてこのような決断を下したのだ。
成果を出した者には最大限の報酬と褒め言葉を渡すルイ16世。
その言葉を受け取った二人は1月31日にリヨンの屋敷に到着した。
屋敷はバロック様式で建設されたものであり、1638年に建築されたものである。
ちょっとしたお城風の建物であり、周囲からも洒落た建物としても有名であった。
「これは、まるで城だな……」
「本当にねぇ……さぞこの辺りでは有名な貴族の人が使っていたのだわ。けど、その貴族の人はもういないというわけね」
「ああ、オルレアン公に仕えたばっかりにな……途中で抜けれなくてそのまま公の取り巻き連中共々獄中送りだ……ここの主はもうこの世にはいないよ」
オルレアン派に仕えた貴族達の中でも、とりわけ中心人物に近い者達の運命は死か長い刑期で過ごす獄中生活の二択しかない。
フィリップ2世が裁判所で自殺して以来、オルレアン派の名声は地の底に落ちた。
それまで陰ながら応援していた者達も、フィリップ2世の行った行為に賛同できずに次々と離れていった。
取り巻き連中も同様であった。
少しでも罪が軽くなるようにと、積極的な自白を行ったほどであった。
結果的にオルレアン派の取り巻き連中だった主だった者のうち、領地や私財没収などの処分が下された貴族は16名、死刑を除いた終身刑などの刑に下った者は8名、この屋敷の持ち主であった貴族の主は残念ながら死刑判決が下されて、1771年9月22日に刑が執行されている。
つまり、控えめな表現をすれば死罪になった者が使っていた屋敷でもある。
とはいうものの、この時代には事故物件という概念はあまりない。
屋敷内で殺人事件や死亡事故が起こった場合はともかく、屋敷自体に不具合があるというわけではないし、何よりもこうした改革派が躍進した間にアデライード派やオルレアン派に属していた貴族や聖職者の屋敷が現在リヨンだけでも7軒以上存在するのだ。
大きい屋敷などは公共施設に改築する予定だが、いかせん数が多いのでどれから使用するべきか国土管理局でも調査している程である。
「さて……ここでどのようにして休みをすればいいのやら……」
「あら?休みの日なら大抵する事は決まっているんじゃないの?」
「何をだい?」
「ほら、こうして二人っきりで過ごす時はワインを飲んでから……でしょ?」
「ああ、そうだね……それじゃあとりあえずワインでも開けて飲もうか」
アンソニーとジャンヌが屋敷で真っ先にした事は、荷物を全て部屋に置いてからこれまたルイ16世から贈られた高級ワインを開けてグラスに注ぐ事であった。
こうしたワインは諜報員として働いている身である二人にしてみても、然う然う飲めるものではない。
それこそ大が付くほどの貴族や商人クラスの人物でないと飲めないような代物だ。
こうしたワインを飲んだ事はアンソニーは人生で2回ほど、ジャンヌは諜報活動の中で男を相手にした後で一度だけしか飲んだ事がない。
フランス西部で熟成されたロワールワインの中でも、最も赤ワインとして成熟されたワインで高級ワインの原料であるカベルネ・フラン種のぶどうを使用したコクのあるまろやかな風味が特徴的なシノン産のワインを嗜む。
成人である二人は、ワインを開けるだけではなく屋敷に到着する直前に立ち止まった商店でそれぞれ購入した燻製の干し肉やチーズなどを取り出してツマミとして食べ始めた。
「ンンッ……香ばしい高級ワインを飲みながら庶民や俺が普段お世話になっている燻製の干し肉やチーズを食べる贅沢……中々味わえないな」
「組合せは素晴らしいって陛下が仰っていたけど、本当にその通りだわね。ところで陛下はワインはお飲みにならないのかしら?」
「知らないのか?陛下はワインが飲めない事で有名だぞ。コンドルセ侯爵閣下も言っておられた、陛下は酒……特にワインがお飲みになれないと……だから献上品として渡されたワインの大半は誰かに与えておられるそうだ」
ルイ16世は今現在酒は飲まない。
年齢的な意味合いもあるが、飲まない理由としてはルイ16世に転生した中の人が20歳まで酒を控えており、アントワネットとの初夜を迎えるまでは飲酒によって産まれてくる子供に影響が起きないようにするという徹底ぶりのためでもあったのだ。
なので、そうしたワインというのはドンドン部下や功績があった人に下賜しているのである。
「だいぶワインが舌を回してきているみたいだな……」
「ええ、本当に……これからもっと舌が回るようになるのにね……フフフ、アンソニーったら」
「そういうジャンヌだって……ほら、ここじゃなくて寝室に行こう」
「そうね……それじゃあ続きは寝室でしましょうか」
赤いワインが舌を回す前に、アンソニーとジャンヌは肉体的に近づいていく。
互いの顔が近いと思う距離まで近づいていき、それとなく恋が着火して激しく燃え上がるような空気になっていく。
ワインを溢さないようにとコルクでしっかりと蓋をしてから二人は寝室に入って愛し合う事にしたのだ。
サン=ドマングではそうした時間は無かった。
いや、あったといえばあったのだが、いかせん船旅や報告書などの作成に時間が掛かってしまいそうした時間にリソースを割り振る事がなかったのだ。
それに船は狭いし、生活の殆どを狭い部屋で過ごしていたのだ。
もし、そんな場所で愛し合ってしまえば、直ぐに分かってしまう。
国土管理局公認のカップルだけあってか、そうした互いを慰め合う時間というのは欲しかったのだ。
一時の恋ではなく、末永く幸せに暮らしたい二人にとっても、国王が与えてくれた報酬は十分すぎるほどでもあった。
若いと色々とお盛んだと言うが、二人の場合は本気の愛を語り合ったのだ。
その詳細をこの場で語る事は出来ないが、どのくらい愛し合っているのかを示すとすれば、彼らの召使いがその証言をしてくれるだろう。
召使いの女性は40代半ばに差し掛かった女性だが、国土管理局のメンバーとして雇入れている諜報員でもある。
秘密情報が外部に流出しないようにと派遣されており、別の女性メンバーと3日交代制で働いているのだ。
その女性が語ったところによれば、アンソニーとジャンヌの愛というのは「本物」であるという事に間違いはないのだ。
「お二人ともお若いですねぇ……私も若い頃はあのぐらい二人っきりの時間の時に夫の名前などを言っておりましたが……フフフ、それだけお互いに好きで愛し合っている証拠ですよ!」
どの時代でも恋バナとかそうした愛にまつわる話というのは女性陣にとって話の種になる。
現に女性の召使いとして働いている彼女達は、そうした二人の愛を見守ると同時に、二人っきりの時間を決して邪魔したり無粋な事を言わないように気を付けながら世話をしていた。
そんな愛し合っている状態から2カ月が経過した。
二人の恋を阻むものは存在しないも同然であった。
両親は互いに死別しており、アンソニーはカトリック、ジャンヌはプロテスタントと宗派も違ってはいたが愛の前ではそんなものは些細な問題に過ぎなかった。
ブルボンの改革で発表されたユダヤ教やプロテスタントなどへの寛容令によって、宗派間が異なる結婚も認めるようになった。
まだあまり国民への理解や制度化が進んでおらず、これからの課題が見えるものだが……それでも二人にとってしてみれば国王の存在は若き指導者であり、同時に二人の愛の成熟を見守っている保護者のような存在でもあるのだ。
リヨンで二人が愛し合っている間にも、フランスの歴史は刻一刻と進んでいくのであった。
次からはお待ちかね「ポーランド分割」にまつわるお話です。
アントワネットを中心にオーストリア、そして4chanで毎度おなじみのポーランドボール…じゃなくてポーランドが登場します。
もしかしたらポーランド君は生き残るかもしれません。
頑張れポーランド!東欧諸国をまとめ上げている底力を読者の皆さんに見せつけるときだ!
次回「ポーランド死す」




