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132:サンソン兄貴!俺と協力してフランスの医学を発展していこうよ!

☆ ☆ ☆


1772年3月10日


蒸気機関の開発が進み、国土の開発も滞りなく進んでいる報告を受け取りながら史実とはだいぶ異なる歴史を歩ませてしまっているルイ16世だ。

これ絶対前世の史実歴史クラスタに見つかったらネットで誹謗中傷の嵐に合うんじゃなかろうか。

歴史にIFなど無い!こんなでたらめな歴史に改変した俺の首を街頭に吊るしてやるのがお似合いだ!


(♪脳内で某歴史シミュレーションゲームの宣戦布告のBGMが流れる♪)


……とおっしゃる人もいるかもしれんが、現に俺はルイ16世に転生しているんだからどうしようもないんだよなぁ。

アントワネットと寄り添いながら良き夫として、そして国民からは良き国王となるように常に頑張っている。


科学に農業と色々と当初の改革の計画通りに進んでいるので、そろそろこの国の医療関係にメスを入れないといけない。

この時代の医学というのはねぇ……手術前でも手を洗わないんだよね。

もう一度言う、手を洗わないんだよ。

消毒液も何も付けずに……まぁ、血とかついたらタオル等で軽く拭く程度。


そんな衛生概念だから感染症が広がるのは当たり前だよなぁ?!

この衛生概念のままだとよろしくない。

実際問題、ルイ16世にとって世継ぎとして期待されていた長男ルイ・ジョセフも病弱だったうえに結核を患って7歳という若さで亡くなっている。

おまけに亡くなった時がフランス革命前夜で政治的にゴタゴタしていた時期だけに、最愛の息子を失ったルイ16世がショックのあまり議会での質疑に応じられない程だった。


(そんな辛い想いはしたくないもんなぁ……実の息子に先立たれる悲しみは相当なものだった筈だ……)


特に赤ん坊とか生まれた時とかも産婆さんは普通に手洗いせずに取り上げるんだぜ。

なのでこの時代の赤ん坊の死亡率も現代に比べたらべらぼうに高い。

あと、せめて消毒液がなくても石鹸を使えば衛生的に良くなる。

それを証明しているのは意外にもユダヤ人の人達だったりする。


食事の前に手洗いをしていたのはユダヤ人の風習であり、衛生概念が最悪だった中世でも手洗いの風習を守っていた彼らはペストなどの伝染病の疾患率が低かったとするデータもある。

ただ、彼らの疾患率が低いのは病気を持ってばら撒いているからだと因縁を付けられて度々虐殺されるという憂き目にも遭っている。


石鹸でしっかりと手洗いをしてから手術に臨めば術後に容態が悪化するケースは低くなるのではないだろうか?

という考え方を持った方はあまりいらっしゃらないようで……。

俺が説明しても医学に関してはあまり専門的な知識はないし……フランスの医学会に対してどうしたら意見を通してくれるのかと頭を抱えているんだ。


だって俺の麻酔無しで先天的性不能の手術の時だって最初、熱処理せずに道具とかで手術しようとしていたからね!

主治医達も「直ぐにピッと先端を切るだけで済みますから(笑)」と言っていたけど、道具を扱う以上除菌の徹底だけはマジでやって欲しいと願った。


あのまま手術をしていたら最悪感染症になって大事な息子(マグナム)とサヨナラバイバイ……いや、これ以上言うのは止めておこう。

想像しただけでゾッとするぜ。


この時代にはこの時代なりのルールがあるわけだし、19世紀に手洗いの大切さを教えたドイツ人の医師はその当時では手洗いの大切さを理解していない医学会から説明を失笑された事へのショックから精神病を患ってしまう程だったと言われているしなぁ……。

……かといって強引に自分の意見を通してしまうと、今は良くても後年になって医学会との対立を招きそうだ。


うーん、これが時代の考え方というものなのか……。

頭を抱えながら何かこうした医療革新を広めるにはどうしたらいいのか考えていると、ふと……脳内でとある人物の顔が浮かんできたのだ。

現代のサブカルチャー文化では割と知名度のある人物。

フランス関係で知っている人も多いかもしれない。


「あ、そうだ!サンソン兄貴がいるじゃないか!立派なお医者さんがいたぜ!」


シャルル=アンリ・サンソンことサンソン兄貴だ。

兄貴と呼んでいるのは個人的なリスペクトを込めているからだ。

父親のシャルル=ジャン・バチスト・サンソンと共に死刑執行人としてその名をフランスに轟かせている人で、処刑人という立場でありながらも死刑廃止を望んでいたとも伝えられており、ルイ16世を個人的に崇拝していたにも関わらず崇拝している王をギロチンで処刑しなければならない事を悔やんだとも言われている。


そんなサンソン兄貴だが、彼も死刑執行人であると同時に父親と共に処刑をしないオフの日は医師として働いている。

庶民に格安で医療を施している上、死体の解剖などを経て人体に関する記述文章などを拝見すると……この時代で主流だった宗教的な(悪く言えば現代における反ワクチン運動のような非科学的)ものではなく、現代医学でも通じるような『科学的』な視点で医学を行っている貴重な人物だ。


最近サンソン兄貴と会話する機会が中々無かったので、王の権限とやらを利用して呼び出してみました。

現在大トリアノン宮殿の応接室で待機して彼を待っている。

なぜ大トリアノン宮殿で会う事にしているのか?

それはサンソン兄貴が国土管理局の正式メンバーになっている事と、改革派として大トリアノン宮殿で会議に参加しているからだ。


現在、国土管理局は今後の活動が大きくなることを想定して小トリアノン宮殿から大トリアノン宮殿への移転をするようにしたんだ。

普段俺やアントワネットが使わないので、大トリアノン宮殿をこの際国土管理局の省庁として移設しましょうという事になったのだ。

また、改革派にも様々な役職の人を集めて時折会合を開く場として大トリアノン宮殿が使われていたりもする。


今現在は移転作業の真っ只中、普段使わずにほったらかしにしている離宮を放置するのは勿体無いというわけで再利用だ。

諜報機関も場所を広くしたかったし、所属している職員の人数も増えたからねぇ。

小トリアノン宮殿での作業も少々スペースの都合上きつくなってきたので移転だ。

勿論これまで通りに小トリアノン宮殿で活動も行うけど、あくまでも幹部クラスの会合などの場として利用する程度になるだろう。

元々離宮目的でルイ14世の統治時代に作られて以来、度々使われていたみたいだけどここ30年あまりは掃除以外で手入れはされていない。


大金をかけて建設したのに、手入れはされているとはいえ使われないのはいけないよね。

宝の持ち腐れとはこういう時に言うべき言葉なのかもしれない。

1月11日に行われた国土管理局内の定例会議で、この場所ではこれ以上職員の増大が出来ないという事を受けて俺が「それじゃ、現在全く使われていない大トリアノン宮殿に本部機能を移設することを提案したいのだが、みんなはどう思う?」と言った事で決まってしまったのだ。


なので、大トリアノン宮殿を改装がてら仕事をしながらも職員の休息を行いやすくするように一部の部屋の改装工事をしているが、これも本部機能が移設完了する4月までに完了しそうだ。

新築で大きな施設を一から作るよりも、お金をかけずに既存の施設を改修して使えるようにすればコストの面から見れば大金をかけずに済む。

まさに一石二鳥だ。


内装を含めて再来年までには大トリアノン宮殿は国の諜報機関として国内外で活躍するだろう。

また諜報機関らしく新しく「王国内務公安部」とか「内国特務捜査室」など中二病をくすぐるようなネーミングの部署を新たに設置した。

それでいて皆その部署の設置に対して咎めるどころか、逆にノリノリだったのは秘密だ。

さてさて、ちょっとサンソン兄貴から話のピントがだいぶずれてしまったので大トリアノン宮殿の話は一旦隅っこに置いておく。


サンソン兄貴は国が公認した死刑執行人の頭領でもあるので、技量や人物のプロファイルを参照しても問題ない。

むしろサンソン兄貴は凄く礼儀正しく、紳士という言葉を彼の称号として贈りたいぐらいに良い人なんだよね。

おまけに医療に関する知識もそこら辺の医者よりも科学的なアプローチで挑んでいるのでとっても良い。

サンソン兄貴は医者のお手本とも呼ぶべき人だよ。

マジで。


「サンソン兄貴を医療福祉省の大臣にすべきか本気で検討している。そのぐらい俺はサンソン兄貴をリスペクトしているのさ……」


ただ、まだ彼をはじめとして死刑執行人に対する差別や偏見は無くなっていないのが実情だ。

死刑執行人は執行人の界隈以外の人と結婚してはいけない、執行人の家族は学校に行ってはならない。

執行人やその家族は頭巾をかぶらずに教会に行ってはならない等……。

改革で、そうした事はやめましょうと正式に命じて執行人の家族を学校や教会に行くことを許可しているのだが……死刑執行人やその家族へ向けられる考え方というのは無くならない。


犯罪を犯す者がいれば、その犯罪を裁いて罰を与える人間も必要になってくる。

犯罪者にも人権があるという人もいるが、なら殺された人の人権が犯罪者によって踏みにじられている現状ってホント辛いもんな……。

社会秩序の為に職務を真っ当している人への仕打ちは無くしておかないといけない。

これからの教育でもそうした事を徹底しないとね。

職業差別ダメ、絶対。


あと、サンソン兄貴は死刑執行した死刑囚の遺体を解剖し、その解剖から基づいた独自の医学書……俺はそれを「サンソンノート」と呼んでいるが、そうした医学書は現代医学の解剖生理学にも通じていると言われており、この時代の医学会でまとめられていた医学書よりも信憑性と有効性が高いと思っている。


おまけにサンソン兄貴は開明的な政策を打ち出して、改革に励んでいる俺のことをメチャクチャ信頼しているからね。

俺としてもそれは非常に嬉しい。


「お待たせ致しました。シャルル=アンリ・サンソン、国王陛下の命により只今到着いたしました。陛下はこちらにおられますか?」


ドアの前で守衛とやり取りしているサンソン兄貴の声が聞こえてくる。

おお、サンソン兄貴ご到着だ。

俺はサンソン兄貴を出迎えて腹を割って彼としっかり話すべきなのだ。

フランスの医療を向上させるべく、俺はサンソン兄貴と交渉を始める用意を整えて彼を出迎えた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 漫画「イノサン」を愛読していたので、サンソン兄貴はどうしてもあの美麗な絵柄に脳内変換されます☆ でもルイ16世はコミカライズ版で脳内変換されるので、頭の中では全然タイプの違う絵柄が会話してい…
[気になる点] まだ「ドイツ人」という区分はないです。 そして、ゼンメルヴェイス・イグナーツはハンガリー人です。
[一言] 尊敬していた王様の首を落とし、元恋人の首を落とし、それを指示した人々の首を落とし…、そりゃ苦しむよ…、つーか狂うよ。としか言いようのない人生を歩んだ人だもんなぁ…。報われるなら、報われて欲し…
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