12:ヴェルサイユでピクニック
アントワネット妃は資料を見る限りでは肉類が苦手だったみたいなので初投稿です
「あら、オーギュスト様!」
「おまたせアントワネット、待ったかい?」
「いいえ、今来たところですの!」
アントワネットは侍女さんと一緒にアポロンの泉水で待っていたようだ。
恐らくヴェルサイユ宮殿の庭園で有名な場所だろう。
かの有名なシャルル・ルブランという芸術家が設計したこの泉水は既に設計・製作がされてから一世紀になろうとしている。
それでも色褪せずに立派な姿を見せているのは凄いと思う。
んでもってアントワネットはかなり気合いをいれたドレスを身につけていた。
ベージュと白色が重なり合ったようなドレスだ。
純白という意味合いを兼ねているようだが、その姿は美しい。
やはり嫁は可愛いものだ(最重要)
俺とアントワネットは泉水を中心に、ヴェルサイユ宮殿の庭園を一緒に歩きながら見て回りだした。
侍女さんや随行員さんの人たちも俺たちに危害が加えられないように後ろと前から見張ってくれている。
行きかう人々も、俺の事を知っている人から一斉に頭を下げている。
まさに王家のお通りなのだ。
いやー、時代劇でしか見ないような光景だ。
モーゼの如く人がサーッという音と共に道を開けてくれる。
庭園では一般人も多いので、王族に対して彼らなりの敬意を払っているのだろう。
「こうして……緑のある場所を歩くのもいいですわね」
「そうだね、ちょっとした運動にもなるね……あっ、そうだ!アントワネット、今日のお昼なんだけど……予定とかある?」
「いえ、特には予定はありませんが……」
「良かったらサンドイッチを作ってきたんだ。一緒に食べよう!あと侍女さんや随行員さんの分も持って来ているんだ」
「まぁ!!本当ですの?!」
ふふふ……。
いやー、愛の行動力って凄まじいよね。
(せっかくだから、アントワネットと一緒にピクニックをしたい!)
そんな思いからさっきルイ15世の部屋を出た後で、厨房の料理人に頼んでちょっとだけ厨房を使わせて貰っていたのだ。
んで、随行員の一人にサンドイッチの入っている箱とみんなが飲むように郊外の井戸から汲み上げた新鮮な湧水で冷やした紅茶を入れた水筒を持たせている。
もちろんコップも人数分だ!
無論、料理が得意だったわけじゃない。
俺は自炊こそしていたが大半は加工食品を使っていた身だ。
つまりコンビーフを焼いてそれから溶かしたバターで炙ったり、インスタントラーメンのスパイスを変えてみたりしていたのでそこまで凝った料理は作っていなかった。
しかしだ……。
そんな俺でも軽食ぐらいなら料理は作れる!
それがサンドイッチだ。
パンとパンの間に素材を入れ込んで挟めばいいのだ!
別に凝ったものを作る必要は無い!
でもちょっとは凝った感じのも食べてみたい(わがまま)
簡単で、一口でつまめる食事なら外で食べるにはうってつけだ。
というわけで、厨房で俺が30分ほど時間をかけて作って参りましたサンドイッチを食べるために芝生の上に座っても汚れない布を被せて、そこで食事を取る事にした。
「ささっ、座って食べよう。アントワネット、大丈夫かい?」
「ええ、問題ありませんわ。それでオーギュスト様はどんなサンドイッチを作ったのでしょうか?」
「気になるかい?フフフ、これが俺が作ったサンドイッチさ!!!随行員さん、箱を開けてください」
「はい、只今すぐに!」
座ってから随行員さんが箱を開けると、そこには俺特製のサンドイッチが並べられている。
まず一つ目はアントワネットと彼女の面倒を見ている侍女さん向けのサンドイッチだ。
春キャベツを優しくほぐし、その上にゆでたまごを刻んでオリーブオイルと胡椒を振りかけたものだ。
さっぱりしていて味付けも中々良い。
各自にコップを行き渡らせてから、一つずつたまごサンドイッチを渡して食べさせてみた。
「まぁ、卵を入れていたのですね!彩りも綺麗ですわ!」
「ほのかなオリーブオイルの香りがいいですね!」
「食欲をそそりますわ!」
おお、好評だったぞ。
野菜があまり無かった……というよりも、この時代の保存技術や製造技術を考えるとどうあがいても夏から秋にかけて収穫されたものを使うしかない。
それでもそれなりに見栄えがある食べ物になったのでよしとしましょう。
たまごサンドイッチ好評で良かった。
んでもって、次のサンドイッチなんだが……これはちょっと手が込んでいる。
パンの間に油で揚げたカリっとしたハムをぶち込み、さらに目玉焼きと溶かしたバターをその上に重ねたものだ。
しっかり油で揚げたベーコンを細かく刻んでから目玉焼きとバターを乗せれば女性でも食べやすい。
あとアントワネットの事を調べてると、どうも牛肉類が苦手だったらしいとのことだったので、なるべくベーコンを強調せずにチーズと目玉焼きがメインになるように調整した。
あとちょっとした遊び心で目玉焼きの白身を四角形に整える型取り板を作ってもらったので、それで焼いたのだ。
お陰でパンに合うようにピッタリに挟まっている。
「まぁ!四角い形をした目玉焼きですのね!これはパンに合わせて白身を切ったのですか?」
「いや、あえて型取りしてその中で焼いたんだ。そのほうが白身を無駄に使わずに済むからね」
「すごいですの!」
「ベーコンのカリっとした食感とチーズと目玉焼きが口の中で絶妙に絡んできますわ!」
「すごく美味しいですね!これは王太子様がご考案されたのですか?」
「そうだね、もう本当に簡単なものだけど……アントワネット、美味しい?」
「ええ!!!とっても美味しいですわ!!!」
アントワネットが笑みを浮かべて特製のサンドイッチを食べてくれている。
いや~本当に最高だな!
アントワネットの笑顔が見れて俺は本当に嬉しい!
作って良かったサンドイッチ!
その日は日が暮れるまでアントワネットや随行員さんや侍女さんと囲んでピクニックを楽しんだ。
多分この日から歴史が大きく変わったんだと後々に思ったのであった。
最初はスクランブルエッグを作る予定だったのですがスクランブルエッグの作り方が複雑だったので没にしました(没にした文字数は2000字弱)