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1085:遊覧

★ ☆ ★


1796年8月12日


オーギュスト様が予想していた事が、現実味を帯びてきてしまったようです。

北米大陸において、占領したフロリダ州を起点に流感が流行してしまっているようです。

それも、この夏場において驚異的ともいえるぐらいに広がっていることも踏まえて、フランス以外のヨーロッパ諸国も警戒を強くして各カリブ海諸島に点在している地域において、感染症対策を徹底的に行うように指示が出たそうです。


今、国土管理局の方が資料を持ってきてくださいました。

今日まで報告されている北米大陸における流感感染者の発生状況と、欧州協定機構軍の感染者の割合を示したグラフが記載されているものです。


「王妃様、デオン様の指示で作成された一週間分の流感感染者の統計表になります。分かりやすいように棒グラフで表しておりますが、問題ないでしょうか?」

「ええ、問題ありませんわ。ありがとう」

「はっ、失礼いたします」


デオンが渡してくれた資料によれば、この流感は普通の風邪に比べても発症から3日ぐらいは熱とだるさ、それに鼻水などが出るような症状が主に見られるそうですが、この流感のタチが悪いのは若くて風邪を引いたことがないような人でも、感染して発症すると稀に肺炎などの重篤な症状を引き起こすことがあるという事です。


(オーギュスト様が難しい問題だと語っておりましたが……これは想像以上に厄介な事になりそうですね……重症者が思っていたよりも多い気がします)


今現在までにフロリダの占領した街や村でも感染者が増えており、これらの感染者の割合は判明しているだけで1万人をこえており、そのうち重症化を起こして病院などに運び込まれた人達の多くが肺炎症状を訴えており、既に180名以上の方が亡くなったそうです。


また、スペイン軍やポルトガル軍においては後方支援要員として派遣されている部隊の多くで活動が難しくなっている所もあり、一部で作戦に支障をきたす程の感染者が出ているそうです。

判明しているだけでも3000名以上の兵士が罹患したとされており、このうち100名以上が肺炎などの重篤症状を引き起こして20名が亡くなってしまったそうです。


この事態を受けて、現地では感染予防対策として布で作られた口元を覆うマスクが配られているのだそうです。これはオーギュスト様が以前からペストなどの感染症が発生した際に、外出などをしなければならない人達のために口元から発せられる唾液などを経由し、病気が身体に入り込むのを予防するために必要なものであると説得して作らせたものです。


ベルリンの戦いの後に発生したベルリン市内でのペスト流行時には、マスクの重要性を訴えたオーギュスト様が市内で活動する治安維持の軍隊のために布マスクを作るように命じ、それから部隊にも衛生兵などを中心に支給された経緯があります。

この布マスクの生産が間に合っていないという報告を受け取ったオーギュスト様は、今現在生産されているマスクの増産を行うように命じており、今ある在庫のうち半数を新大陸向けに輸送するように命じたのです。


(布マスクの重要性を以前から訴えておりましたが……こういう形で活躍するなんて想定外でしたわね……元々、ペストやコレラなどの感染症対策として活用するために保管されていたそうですが、季節外れの流感が流行っている現状では、放置しておくわけにもいきませんからね……何よりも、オーギュスト様は人々が免疫を持っているものであればそこまで危惧しなくてもいいが、もし今まで罹患したことがないような未知の流感であった場合は、感染者数や重症化が多くでるようになると警戒しておりましたわね……)


オーギュスト様の予感は当たってしまっているのかもしれません。

今回の季節外れの流感が流行している地域においては、現地の医療リソースが割かれている状態にあり、多くの感染者が自宅療養を余儀なくされているそうです。


最も、今回の流感は10人中9人は重症化することなく、そのまま完治するとのことです。

重症化しやすいペストやコレラなどの感染症に比べたら致死率は低いそうですが、もしこれがヨーロッパに持ち込まれた場合、大流行を引き起こす可能性が高いとして、港湾や海軍基地を中心に警戒態勢が取られております。


港ではカリブ海諸島などを含めた地域からやってきた船の乗組員や積み荷の荷卸しなどは原則として最低3日間は禁止となり、4日目以降に検査を行って熱が高い人や、体調不良の人がいれば、その分船に抑留する代わりに賃金や補償費用などを支払うことを決めているため、感染している人が隠しているという事例は今のところ報告はされていないそうです。


サン=ドマングにやってきた連絡船においても、2名ほどが流感の症状を訴えている者がおり、検査などを行って治療に当たっているとのことです。

グラフの数値からして、感染が主に都市部で広がっていることから、この流感がフロリダ州をはじめとした北米大陸南部地域において少しずつ広がっているのは明確でしょう。


(オーギュスト様が恐れていた感染拡大……この季節に流感が流行してしまうのも恐ろしい事ですが、夏風邪よりもタチが悪い上に、老人や痛風などを罹患している人が重症化しやすいというのも、身体の体力が消耗してしまっているという事も考えられるのでしょうね……)


民間人の死亡者の多くが老人であったり、痛風や常習的に喫煙を嗜んでいる人が多く見受けられると記載がありました。

これらの記載には発症者の大半は重たい風邪で治癒していくのに対して、肺炎などの症状を引き起こし、発症から僅か2日程度で一気に重症化を引き起こしてしまっているという記載が載っております。

これらの重症化した患者の中には、肥満体の方も多く含まれており、医師から生活指導を受けていた者も多くいたそうです。


特に、北米複合産業共同体においてはとにかく甘い食材を使って労働者階級への褒美として、菓子などを振る舞う文化があったらしく、甘いお菓子を毎日のように食べていた人達の間では病気になってしまった方も多くいるとのことです。

そうした影響もあってか、軍人よりも民間人で多くの重症者や死亡者が多いのも、こうした生活習慣などによって発症する病気などが関係しているのではないかとオーギュスト様が語っておりました。


(治療が進めばいいのですが……大勢の人が犠牲になるような惨事になることだけは防ぎたいですね……)


ベルリンの戦いが終わった直後ぐらいに流行したペストでは、述べ7万人以上が犠牲になり、街には死体が溢れていたという記述もあります。今回の流感はそこまで大きな致死性はないとのことですが、高齢者や病気を患っている人が罹患すると重症化しやすいという症状から、冬に流行した場合の被害は今以上に大きなものになるとの予測もなされています。


オーギュスト様は異国の地であっても自軍や欧州協定機構軍の将兵、そして現在占領している地域に住んでいる方々の為に尽力なさっているのです。

私もオーギュスト様のお手伝いをして、少しでもお力になれるようにしないといけませんね……。

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