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1081:感染対策

新型インフルエンザ対策……もとい、このインフルエンザが従来流行しているものではない場合には、フランス国内でも対策をしなければならない。

特に人との交流が活発な港や国境の都市、それからパリなどの大都市圏にインフルエンザが流入すればそれ相応の感染が拡大するだろう。

これが新型インフルエンザでない事を祈っているが、万が一この時代の人達に免疫がない新型インフルエンザであった場合はペストと同程度の脅威に準じたやり方で感染症対策を講じることが義務化されている。


「オーギュスト様……流感が北米大陸で流行しているとしたら、ここにも影響は来るのでしょうか?」

「少なくとも、大きな影響が来るのは一か月ないし二か月後ぐらいからだろうね……まだサン=ドマングに物資搬入のための船が向かっているという情報が入ってきているけど、これらの流感が毎年冬に流行しているものではなく、真新しい流感だった場合が怖いんだよね……」

「流感にも種類があるのですか?」

「うん、流感にも様々な種類があって、比較的症状が軽くて熱が出る程度のものがあれば、脳に炎症を起こすような重篤なものまであるんだ。その中でも鳥を経由して運んでくる流感が一番危険と言われているんだ」

「と、鳥が流感を運んでくることがあるのですか?」

「……これはまだ仮説として言われているんだが、流感に罹患した鳥と長く降れていたりすると発祥すると言われているんだ。この場合、流感の毒性が強くなって通常の流感よりも致死率が高いとされているんだ。まだ仮説であるから、この話は仮定として聞いてほしいんだが、今回の北米大陸で発生している流感が鳥由来のものであれば、その感染力や致死率が高いものが入ってくる恐れがあるんだ。だから慎重に、そして厳重に警戒しなければならないものでもあるんだ」


鳥インフルエンザではないかもしれないが、鳥インフルエンザに類似したインフルエンザは過去にも流行したことがあるとされており、ロシア風邪と呼ばれた19世紀末の風邪に至っては鳥インフルエンザ由来のウイルスが変異したものではないかとされている。

このロシア風邪は致死率はそこまで高くは無かったものの、味覚障害などを引き起こすことがあったとされている。


いずれにしても、感染症対策を徹底的に講じなければならないし、今後はこの対策に準じたやり方で港湾都市を中心に、流感感染症予防注意情報を市民に向けて発信していく必要がある。

まだ目に見えるような感染症であれば人々は危機感をもってやるが、インフルエンザの場合は熱を出さないと分からないので辛いのだ。


ペストであれば適切に隔離や着衣していた服などを処分し、専用の収監施設ないし自宅に隔離しないといけないように法改正を行い、感染症対策としてはこの時代における最大の感染症対策を講じることができる法律を作らせたのである。


……いや、元々ペストが発生した際の対策法みたいなのが既にマニュアル化されており、1720年にフランスのマルセイユで大流行したペストの際には地獄を味わった経験があり、その時の出来事を描いた誌や絵画が残されているほどだ。

マルセイユでのペストの大流行では、マルセイユ市内において多くの人が罹患し、感染者の多くが死亡するに至る惨事となった事案だ。


このマルセイユのペストの大流行においては、何と言っても死亡者が多すぎたため、亡くなった人が何日、何週間も路上で放置されてしまうという凄惨すぎる光景が広がっていたとされている。

結果として、亡くなった人を齧ったネズミやノミなどが別の人にペストを移すという悲惨が連鎖が起こり、最終的な死亡者数は資料によっても異なるが、最低でも2万人以上、最大で6万人前後といわれている。

当時のマルセイユでは死者が多すぎて遺体の収容が出来ないと言われたほどなので、その惨事が分かるだろう。


この時代の人達は、人の肌が内出血を起こして黒く変色する黒死病と、肌に無数の水疱のような腫物が起こり、死に至らしめることの多かった天然痘のような、一見してすぐに分かる病気に対する感染症対策に関しては迅速に行うことが出来るようにはなっていた。

マルセイユのペスト大流行以降は、ペストの症例がある場合は沖合の島に停留して、市内に感染拡大がおこるのを防ぐために対策を講じることが完全に義務化され、また感染症例があるにも関わらず、その報告を怠った場合には上層部の責任となること明記されているため、水際対策なども強化されている。


病気に関しても次々と分かってくるようになってきた時代でもあり、ワクチンの開発が本格化するのもあと50年後ぐらいの19世紀半ばぐらいからである。

故に、ワクチンなどの特効薬に類似したものがない現状では、これらの病気が発生した際のマニュアルとしては強権的なやり方を使用しても、感染拡大防止のために発症者が出た地区の閉鎖や、感染者が着用ないし使っていた寝具類などの破棄と焼却処理、マスク・手洗いの義務化などを徹底するようにしている。


感染者が出たら、その感染者が罹患するまでにはタイムラグがどうしても発生してしまう。

新型コロナウイルスが流行した2020年においてはそれが顕著になって現れたのは記憶に新しいだろう。

中国国内で流行していたにも関わらず、当局が感染拡大情報を遮断した結果、武漢市内での感染が広がっていき、そこから更に世界中に拡散してしまったのである。

結果として、新型コロナウイルスの大流行はあの時代にとっては物流や経済だけでなく、人々の精神的にも大きな影響を及ぼし、その傷はまだ癒えてすらいないのが実情だ。


マスク・手洗いの義務化に関しては、俺が強く推し進めた影響が大きい。

マスクはペストマスクが有名であるが、この時代であれば布マスクでも何もしないよりは効果がある上に、貧困層の人達にも無料で配布できるように大量に生産できるようになる。

布とはいえ、咳やくしゃみなどの飛沫が飛ぶのを抑える効果はあるし、新型インフルエンザであった場合にも、感染者が咳やくしゃみでウイルスを拡散するのを防ぐことができる。


それに加えて手洗いが一番重要でもあるのだ。

手洗いをするだけでもウイルスなどは落ちるし、アルコール消毒液に至っては殺菌によって感染を増やすことを抑制することができるのだ。

手洗いの重要性としては、付着した菌やウイルスを洗い流すことで感染拡大を大幅に減らす事が出来るという事だ。


ベルリンでのペストの大流行時には手洗いやマスクによる徹底した感染予防措置を行っていた部隊でのペストの感染報告は無かったし、この事例を踏まえた上で全軍や市内、農村に至るまでペストなどの感染症が流行した際のマニュアル化が実現し、貧しい農村であっても徹底するように呼びかけている。


今回のインフルエンザに関しては、毒性が強く致死率が高いインフルエンザではないかもしれないが、過剰であっても感染症対策を徹底すべきであるのだ。

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