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1079:頓服

☆ ☆ ☆


1796年8月5日


おはよう、随分と今日は暑い。

この時代のフランスの夏場の平均気温は25度前後のはずなのだが、今日は実に33度を超えている。

どうあがいても暑いのだ。

水銀温度計の気温からみて間違いないのである。


すでに1720年頃にプロイセン王国において水銀温度計が発明されており、その改良版をフランスでも実験室などに設置している。

自室にも設置してみようかなと思って設置したが、ここで思っていたよりも高温になっていて内心ビビっているのは言うまでもない。


「オーギュスト様……本当に今日は暑いですね……」

「うむ……ここ数年では考えられないような暑さだね……それにしてもタオルが汗でビショビショだよ……」

「幸い、水風呂なども浴びることができる環境なので良いですが……庶民の方々にとっては暑さでセーヌ川に飛び込んでしまいたいと思っている方もいるでしょうね……」

「セーヌ川はこれでもだいぶ綺麗になったから大丈夫だと思うけど、それでもあまり飛び込むべき川ではないからなぁ……いやはや、これはたまらん……」


まさに暑い。

いやはや、もう暑くてたまらないレベルで額から汗がこぼれ落ちていく。

カラッとした暑さであれば耐えきれるのではないかと言われているかもしれないが、こういった暑さは転生前に嫌という程経験しているのだ。


日本の蒸し暑い猛暑……を通り越した酷暑を経験している身としては、これでもだいぶマシではあるのだが、アントワネットに至っては暑い暑いといいながら水風呂に入って身体を涼んでいる程なので、かなり暑いのだろう。

それでも33度でこの暑さはしんどい。

クーラーが欲しいところだが、扇風機もないので涼む手段として一番手っ取り早いのが水風呂に浴びるか、シャーベットのお菓子を食べるのが一番この時代で楽に涼む方法だ。


特に、ヴェルサイユ宮殿でも氷室が存在しており、フロマージュグラッセというチーズを冷やした食べ物があり、アントワネットはこれが大好きなのだ。

史実でもフロマージュグラッセを食べていたとされている上に、この氷菓はアイスクリームに似た感覚なので、実際に食べてみたが美味しい。


(王族や富裕層はともかく、まだ氷が貴重だったから氷菓は贅沢品の一つなんだよなぁ……庶民が手軽に氷菓食べれるようになったのは20世紀からなのを考えると……技術の進歩ももっと進めていかないとね)


冷蔵庫の開発・研究も進んでいるが、まだ道半ばである。

これに合わせて冷風機やクーラーのような装置が欲しいところではあるが、まだまだ開発に時間が掛かるのは致し方無い。


それにこの暑さは地球温暖化などではなく、偶々熱波がサハラ砂漠や地中海付近の暖かい空気がそのまま乗ってヨーロッパに到達している影響であることが原因なのかもしれないが、そうした原理は発見されていないし、かと言って寒ければいいということではなく、ラキ火山噴火の時の様に作物が枯れたり、欧州を中心に寒冷化が起こってしまえば不作や凶作の原因になってしまう。


「この暑さは流石に堪えますわね……どうしてこんなに暑いのでしょうか……」

「うーん、流石に分からないが……やはり熱が籠っているような空気だからね、しばらくはこの暑さが続くんじゃないかな……こまめに水分補給をして、身体に熱が籠り過ぎないように気を付けるべきだよ」

「そうですわね……身体に熱が籠って身体を駄目にしてしまう事例があるみたいですし、気を付けますわ……」


アントワネットも水分補給をこまめにしてくれているようなので、こちらとしても一安心だ。

史実では、今日は北イタリアにおいてフランス革命軍がオーストリア軍と交戦し、勝利したカスティリオーネ会戦が起こった日でもあり、この会戦で勝利したナポレオンは名声を挙げたとされている。

そのナポレオンも、史実以上に階級も上がっている上に、今現在は北米複合産業共同体との戦闘でノーフォークに向けて進軍を続けているはずだ。


(この熱波はヨーロッパだけの問題であればいいんだが……もしハリケーンが発生して暖かい空気が押し上げているとしたら、ちょっと厄介な問題になるかもしれん……)


そう、北米大陸は何かとハリケーンが接近して上陸することがある。

2000年代初頭にアメリカ南部で猛威を振るい、千人以上が犠牲になったハリケーン・カトリーナも丁度8月に発生してカテゴリー3のまま上陸した事でも知られている。

日本の台風とは呼び名が違えど、メカニズムは同じだ。

熱帯低気圧が空気を押し上げて接近して猛威を振るうのだ。


アメリカ独立戦争中に大西洋で大きなハリケーンが直撃し、独立戦争中で戦争に参加していたグレートブリテン王国やフランス軍などに甚大な被害を及ぼしたりと、この時代には既に大きな嵐を起こす事が知られてはいたが、風速などを調べても直前まで観測する術はなかった。


(そうだよな……確かグレート・ハリケーンとか言っていたような気がしたけど、カリブ海地域を中心に甚大な被害を出したハリケーンなんだよな……この世界ではグレート・ハリケーンは発生はしていない……だが、もし今それに匹敵するような大型ハリケーンが南部を襲っていたとしたら……?)


大西洋上で発生したハリケーンが勢力を維持してヨーロッパまでやってくるとは滅多にないが、ごくまれに温帯低気圧が暴風となってサイクロンを発生させることがある事なら知っている。

もし、北米大陸で大きなハリケーンが発生し、駐留していたフランス軍などをはじめとする欧州協定機構軍に被害が出ていたら……。


「……それは、不味いかもしれないな……」


そう、不味いのだ。

既に南部には重要な補給線を構築してヒューストン・ニューオーリンズ・マイアミなどの南部の主要都市に補給ハブを確保しているのだ。

この補給ハブがハリケーンによって甚大な被害を受けていた場合、補給物資の運搬に支障を来すことになり、最短でその報告がやってきたとしても電報などを通じても一週間以上は掛かってしまう。


(マズいな……それ考えると色々と問題が噴出してしまっているように感じてしまうな……これで問題が起きていなければいいが、仮に起きてしまっていたらどうやって対応すればいいか考えなければならないな……保存食が駄目になっていれば本国から輸送して新しい食糧を送り届けるようにしなければならないし……やる事が多いぞ……)


救援物資などを満載した船などを使ったとして、前線を支えている後方都市からの補給が届かない場合は、必然的に現在の進軍を停止して補給が整うまで待たなければならないのだ。

これが杞憂であればいいのだが、嫌な予感というか直感というのは大概当たりやすいものだ。

それに加えて、ハリケーンで発生した温帯低気圧に押し上げられる形で熱波がやってきているとしたら、その熱波の直撃を受けているであろうカリブ海一帯に保管している保存兵糧食などの発酵が進んで中身が傷んでしまうリスクも挙がってしまうのだ。

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