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1075:加速

幾何学的な建築物を建造するにあたって、球体型の建物なども建設予定ではあるが、これはあくまでも地震が少ない地域などを中心にモニュメントとして建設をする予定だ。

当然ながら、この時代……耐震補強に関する知識はまだまだ発展途上であり、イタリアとの国境に近いアルプス山脈地帯では地震は滅多に起きないが、万が一今後地震が起きた際に球体型の建物を沢山建てたが故に地震で倒壊して被害甚大……なんてことにならないようにするために、休憩所など小規模かつ少人数が利用する施設を除いて、原則として頑丈な建物を作るように指示を出している。


「大型集合住宅の建設ですが、まずは試験用として一棟を建設し、そこで実際に居住をしてみてから問題点を洗い出し、建設方式を量産する方針で計画は進められております」

「最初の試験用の高層住宅は完成まであとどのくらい掛かりそうかな?」

「約2か月です。パリ郊外にて参加希望者の中から素行に問題の無い者、及び身分証明が成されている人物を選定し、そこから一年間居住をして問題点などを探り、改善点を施した高層集合住宅を建設する予定です」

「高層集合住宅ね……今の集合住宅もいいかもしれないけど、し尿処理の問題なども多いからね、これから多くの人が住む上ではそういった処理に関して欠かせない措置を行ってから、集合住宅を建造する方針を執り行う予定という事か」

「はい、集合住宅に関しても現在の方式ではなく、新しいコンクリート建築とレンガを組み合わせて強度を補強したものを作成する予定です」


集合住宅……。

これは増加しているパリの住宅問題を解決する上で、都市郊外に大規模なベットタウンを建設する上で必要不可欠なものである。

そして、これらの建築に関しては昭和中期……日本の高度経済成長期を支えたアパート団地のような規格化された集合住宅を建設して、都市化を押し進める構想の一環で執り行うことが閣議で決定されたのである。


幸い、コンクリート技術に関してはメリッサからのアドバイスで、現代のコンクリート製造に欠かせない石灰石や砂利などの素材は手に入っており、これらのコンクリートを混ぜ合わせる混和剤に関してもフランス科学アカデミーの研究者が火山灰を混ぜ合わせて強度を確保する目途が付いたため、イタリアから輸入するという形で生産を開始している。


ローマン・コンクリートよりもコスト面で安くなっており、火山灰に関しても石灰と混ぜ合わせることでコンクリートに欠かせない混和剤の役割を果たしてくれているのだ。

故に、ローマン・コンクリートはかなり頑丈な建築ができるが、その分イタリアから火山灰を輸入して多くの費用が掛かる。


代わりに混和剤として使用する場合には強度補強として使うことで使用量を減らす代わりに、現代のコンクリート建築物と孫謙ないレベルの強度を確保出来る上、石膏を使ってモルタル補修を行う事で強度の確保にも成功したのである。


見栄えも大事ではあるが、地震だけでなく火災や竜巻などが発生したさいに、崩壊しないようにしっかりとした建物を作り、尚且つしっかりとした基礎を築いて未来都市の建設に着手することが重要なのだ。

高層建築物も予定では将来的に上下水道を完備させた高層住宅群の設置を予定しており、これはフランス科学アカデミーなどの実験と、メリッサからもたらされた上下水道に関する建築技術なども実践として役立てるために実験施設も建設中なのである。


(この実験で成功すれば、今後もフランスにおいて高層建築が普及する第一歩となるだろうな……)


実験施設はパリ郊外に建設されている試験高層住居「未来アパート1号」という名称が与えられており、高さ30メートル、8階建ての40世帯が入る事が出来る計算で作られている。

鉄筋は入っていないものの、上下水道の導入を行う際に必要な水圧などを調整し、トイレなどを完備して糞尿処理などが迅速に行えるように試験運用を行う施設でもあるのだ。

間違っても下水が上水に流れ込まないように分別を行い、浄水場とし尿処理場を分けて1年間に渡ってパリ郊外に居住している身分証明がされている住民から希望者を住まわせて実験を行うつもりだ。


トイレは各部屋……ではなく、各階層に二か所ずつ設置し、上水に関しても水汲み場を階層ごとに設置して集合住宅としてのデモンストレーションかつ実際に居住をして問題点などを洗い出すための実験を行うのである。

し尿処理に関しても、現代のやり方を知っていたメリッサからのアドバイスにより、先進的なやり方を行った処理方法でし尿処理ができるように施設を建造中でもあるのだ。


個室にトイレとシャワーを……と考えたのだが、まだ今の技術では個室にトイレやシャワーなどを取り付けた場合の費用概算だけでも一部屋の制作費が高騰してしまう上に、排水処理などを考慮して各部屋の台所に関しても、予め水を溜めておいてから、水を捻って使うシステムを採用するらしい。

つまり、食器洗い用の水と飲料用の水を買った上で使った分だけ使う仕組みを採用するという事でもある。


(そして何よりも……未来的な建築物をスケッチや実際に手掛けている新古典主義的な人達が建物の設計を行う事はいい事だ。ただ、球体型の建物は費用もコストも高いから試作のみにして、古代ローマみたいな建築物を建造する感じになるだろうな……)


エティエンヌ・ルイ・ブーレーやクロード・ニコラ・ルドゥーは球体型の建物であったり幾何学的な建築物のデザインを重視しており、未来派的な建築をイラストなどに手掛けていたことが知られているが、その大部分は現実に設計をしようとすれば柱の強度などを考えても建設するのが難しいとされている手法で作られているのだ。


球体型の建築物として有名なのは2023年に完成したラスベガスの球体型の複合アリーナ施設で、外面にはLEDパネルが取りつけられており、これらのパネルを通じて映像などを流して真夜中に太陽の映像などを流すことが出来る疑似的な立体映像を作り出すことも出来る。

しかし、あれには竣工費用がとてつもない額の金額を投資している上に、現代の技術で作り上げられたものである。


この時代の技術で生産するとすれば、どうひっくり返しても予算も技術も足りない。

故に、一軒家程度の大きさで球体型の建物を作らせた上で判断するという事にしている。

予算などを含めても試験的に1~2軒程度を建設して、そこからコストやモニュメントとして活用できるかどうか検討をする段階だろう。

俺個人としてはそういった新古典主義と未来的な建築物は憧れの対象でもあるが、流石に予算配分などを考えて作らないといけないからね。


都市計画では新古典主義的な古代ローマのような威厳のある街をつくり、大通りには自動車や鉄道が行き来できるように整備された区画を作ることになるだろう。

機能的な都市の開発……それが本格的に始動するようになれば、戦後の発展が始まる時だろう。

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