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1073:花火

北米複合産業共同体への侵攻作戦を行う上で欠かせないのが、主要都市の攻略と占領地での政策だ。

ノーフォークをはじめとした工業地域は北部地域に集中しており、現在欧州協定機構軍が占領下に置いている南部地域の大部分はプランテーション農園によって開拓された土地である。

これは史実でも同じであり、黒人奴隷を使役して綿花栽培を使って収益を確保していた土地でもあるのだ。

故に、工業化が進んでいない地域が多く、大部分の都市においては市役所や富裕層でしか蒸気機関を扱っていない事が多いのである。


北部の都市を攻略する際には、蒸気機関を内蔵した武器や兵器と対峙する事が予測される。

先ほどの蒸気帆船に搭載されている武装もそうだが、これらの武器や兵器を製造しているのがニューヨークの工業地帯で生産されているものが多いという話だ。


「現在までに確認が出来るだけでも、南部地域には重要な穀倉地帯であると同時に主要生産されている小麦や綿花などは黒人労働者を中心に生産されていたものです。彼らは三等市民としての扱いを受けている状態であり、待遇などを平民として一律に定める事にするべきだと思いますが、給与の面で白人労働者階級からの反発が懸念されております」

「占領地である以上は欧州協定機構で同意した平等法案が適応されるだろうな。少なくとも、我々は農奴制や奴隷制度を廃止にした上で、彼らにも市民権と平民として暮らしていける給与の支給を法によって定めているからね……それに、過酷な労働によって肉体的にも精神的にも疲弊して疾患症状を患ってしまっている人達にも救いの手を差し伸べてあげて欲しい。彼らも北米複合産業共同体が行ってきた過剰な階級制度による犠牲者だ。決して肌や人種で区切ることなく、白人労働者階級には説明と欧州協定機構の法を重視するように説得を行ってもらいたい」

「畏まりました。占領地においてはフランス……ひいては欧州協定機構の法を重視するように徹底を致して参ります」


白人労働者階級の多くが二等市民であり、彼らは特別ではなかったが三等市民としての扱いを受けている黒人労働者などに比べたら比較的マシな労働環境であったと伺える。

その状況において、黒人労働者の扱いを平等に行うことは決して彼らにとっては受け入れがたい事のように感じるだろう。


元々、黒人奴隷として綿花栽培で使っていた上に、救世ロシア神国が活発だった頃は阿片栽培も行って、救世ロシア神国に輸出することでロシアの保有していた金貨やモスクワに保管されていたイエスキリスト関係の聖遺物なども取引で送られたという話が挙がっている程だ。


今現在占領地域となっている場所の多くが綿花や阿片、そして麦を栽培して生産している地域となっており、これらの地域の大部分が工業化が進んでおらず、17世紀のヨーロッパ諸国の農村とあまり変わらないレベルの状態でもあるわけだ。


当然ながら、これらの地域では未だに有色人種への差別が公然と行われている状態であり、欧州協定機構軍が南部の港湾都市を占領した際には、地主や自警団として活動していた面々が挙って集団で軍に投降したほどだ。


この投降をした理由も、集団で降伏を意思を示さない場合は有色人種や白人労働者階級の貧困層を中心に【狩り】の対象となり、場合によっては罪がなくても集団暴行の的になってしまうからだそうだ。

現に、フランス軍が把握しているだけでもニューオーリンズやマイアミだけで36件の襲撃事件が発生しており、内地主や自警団構成員、警備部隊の軍属出身者合わせて130名近くが集団暴行や性暴力を受けて死亡している。


これらの事件において闇が深いのが、目撃者を含めて事件に関わったとされる人物の逮捕に至っていないという点だ。

街中で襲撃された事例では目撃者が多くいたはずなのだが、フランス軍の憲兵隊が駆け付けた際には、被害者が野ざらしに晒されている状態であり、加害者も目撃者もいなくなっていたケースが殆どだったという。


「有色人種との間の人種差別問題の溝も深いですが……その多くが報復行為も影で行われている形跡が見られるのです。特に、地主や自警団を襲撃したと思われる黒人労働者が一人で出歩いている際に、集団暴行を受けた事例が20件うち死亡した事例が7件確認されております。関係者による見せしめの報復と思われますが、人種間の対立が根深いこともあって、白人労働者階級は白人層で組んで有色人種を特定の地域に入れないように自衛のための手段として行動を起こしているケースが目立ってきております」


当然ながら、白人の地主や自警団の関係者も黙って指をくわえているだけではなく、報復攻撃を行った事例も挙がっているそうだ。

逮捕者も出ているものの、彼らの多くが白人階級こそが選ばれた民であり、よりよい社会を構築するために必要な行為であったと犯罪を正当化する事例も報告されている事から、人種間問題に関しては厳しく切り込んでいかなければならないようだ……。


「欧州協定機構で加盟している奴隷制度の廃止をベースに、三等市民としての扱いを受けている人々の解放と、それと同時に人種間での対立激化を避けるために勅命を以って本国から警察を派遣して治安維持に当たらせたほうがいいかもしれないな……」

「警察……つまり、現地警察だけでなくフランスから警官を派遣して、中立的な立場で対応を行うという事でしょうか?」

「そうだ。白人層と黒人を含めた有色人種が対立を激化してしまうと、今後の統治中に大規模な暴動が起こって治安が極端に悪化するケースも想定される。最悪の場合は占領地域において内戦となって北米複合産業共同体側のスパイが対立を焚きつけて治安維持に当たっている憲兵隊や後方支援要員への攻撃に使う恐れも出てきているからね……デオンは知っているとは思うけど、元々綿花栽培を通じて黒人奴隷を多く受け入れてきた地域において、黒人の人達の評価というのはあまり芳しくはないんだよ。その理由も、奴隷という身分であった事と、彼らに対するイメージが悪いままの状態だ……この状態が長引いてしまえば、反発する白人層からの大きな衝突が起こるのも時間の問題だ。故に公平かつ中立的な立場で介入できる警察機関が必要なのだ」


どっちにも付かず、トラブルが起こった時には公平かつ中立的な立場で介入できる警察官の存在。

理論的には正しいかもしれないが、実際には難しいだろう。

とはいえ、人種間での問題に対しては可能な限り公平かつ中立的な思想を持っている人物によって介入し、双方を落ち着かせて解決できるようになるのが望ましいのだ。


(この時代では現代以上に人種に対する差別が根深い時代……だからこそ、こうした問題を少しでも減らすべき時でもあるんだ。双方の対立激化で大暴動にでもなったら後方の兵站が破壊されてしまう……)


占領したニューオーリンズやマイアミの重要拠点で大暴動などが起これば、これらの地域において活動している軍隊も治安維持のためにリソースを割かなければならない。

故に警察官を派遣してこれ以上の人種間対立を阻止する役割が必要でもあるのだ。


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