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1073/1081

1071:浸透強襲作戦

北米複合産業共同体への打撃になる攻撃方法……。

それをデオンなど国土管理局や陸軍大臣が説明してくれるという。

彼らが持ち出してきたのは大きなボードであり、そのボードにはコロンビア市を中心とした具体的な地図が描かれていたのだ。

すでに郊外には第三軍を主軸としたフランス軍の主力部隊が展開しており、対する北米複合産業共同体は赤色のマークで描かれている軍隊ユニットが存在している。

このユニットに関しては、今現在得られているスパイなどから得られた情報を元に作られており、緻密な地図には思わず唸った。


(ここまで精巧に作られている地図となれば……内部の協力者から入手したものなのだろうな……)


具体的な地区名まで記載されている地図であり、スケールでいえば10キロ四方を描写した地図でもある。

確保している陣地や歩兵などの人数も詳しく載っており、まさにHOBFでやっていた戦略シミュレーションゲームのような画面にも見えてくるのだ。

コロンビア市を守備する北米複合産業共同体の兵力も、現時点で把握している数を記載しており、その数は約4万人程度とする数値が書かれている。


「現時点でのコロンビア市の守備隊の人数は4万人程度と推定されます。これは守備を任されている守備隊の多くが専門の職業軍人ではなく、二等市民などから徴兵された兵士が大部分とされております。さらに北部の工業地域から三等市民としての扱いを受けている有色人種なども派兵されているとのことです」

「有色人種か……主に弾除け用だろうな……彼らは白人労働者階級を最重要としているはずだ。つまり、犠牲を出したとしても白人種の犠牲を最小限に抑えるようにせよというお達しでもあったのか?」

「その通りです、主に白人労働者階級の中でも優秀な技能工などを優先的に疎開させているそうです。次に技術者やその家族、比較的好成績を納めている労働者や学生を中心に避難を許可している一方で、ノルマ達成が出来ていない者であったり、業務成績の悪い部署などを中心に都市部での徹底抗戦と死守命令を出しているそうです。彼らは防衛の任務に就かなければ三等市民として降格し、貯蓄なども全て没収するという通告を受けているそうです」

「白人労働者階級の中でも、優秀な人物は助かるが……それ以外の者も徴兵して前線に立たせるつもりか……」

「北米複合産業共同体としては優秀な者を生き残らせようとしているのでしょう。でなければこのような戦術を考案しません。コロンビア市を防衛している軍人の中でも職業軍人として技能を身に着けている者は全体の2割程度であると推測されますので……」

「比較的訓練されていて練度もある敵部隊が一個師団程度というわけか……」


コロンビア市を防衛している兵士の多くが徴兵された兵士であり、職業軍人として訓練を受けている兵士は2割程度……8千人前後と見られる。

規模としては一個師団……。

決して数は少なくない。

8割が素人であっても、2割の熟練兵がいるという事だけでも警戒するに越したことはない。

戦闘において装備が劣っていても、兵士の士気が高ければ高いほど徹底抗戦を行って軍事的に優勢な軍隊であっても苦戦するのだ。


有名な戦いでいえば圧倒的に制海権や制空権を確保していた米軍が当初の予定では一週間程度で攻略可能としていたペリュリュー島や硫黄島の戦いでは日本軍は地下壕や要塞化した陣地において決死の抵抗を行い、アメリカ軍が多大な損害を被ったことでも知られている。

士気が低ければ戦闘を諦めて投降したり逃亡するのが常であるが、決して退却せずに遅滞戦術に伴う徹底抗戦を貫いた場合は攻撃側にも多大な犠牲や負傷者を強いることにもなる。


故に、北米複合産業共同体に忠誠を誓って抗戦をしてくるであろう正規軍部隊に対しては、最も警戒すべき敵と言っても過言ではない。

俺はデオンに尋ねた。


「この正規軍部隊ではあるが……指揮官の名前とかは判明しているのかね?」

「はい、元農民から兵士に転向したダニエル・シェイズという人物が指揮官を務めているそうです。新大陸動乱の際に農民兵として活躍した人物で、北米連合時代にその手腕を買われて将官まで上り詰めたそうです。ただし、本人は農民出身者ということもあり、主に後方支援要員としての部隊を任されていたと聞いております」

「後方支援部隊をまとめる人物が将校に赴任するのも珍しい話だな……こういう場合は戦闘部隊の扱いに慣れている人物を赴任させるのが常だと思うが……」

「はい、故に正規軍部隊の指揮官に任命されたのも、農民出身者ということだけでなく、替えの利く尉官として赴任されたと推測されます。臨時で階級を上げて中佐として師団長に抜擢されているようですが、部隊の士気に関してはあまり芳しくないという報告も挙がっております」


ダニエル・ジェイス……確かマサチューセッツで起こった元農民兵の武装蜂起事件で指揮を執っていた人物の名前だったはずだ。

この武装蜂起事件では、退役軍人や負傷兵などが負債を抱えたまま治療などを十分に受けることができず、おまけに負債を抱えた状態で返済能力が見込めない場合は、債務刑務所に移送されて収監される事を嘆いて、政府に直談判をするために蜂起したとされる事案だ。


この事件では反乱を起こすもすぐに鎮圧されてダニエル・ジェイスは逮捕、翌年まで拘束されていたはずだ。あまり知られていない事件でもあるが、HOBFにおいてアメリカ独立戦争に勝利するとイベントが発生し、低確率ではあるが他の労働者階級にも彼の考えが波及して労働者階級の反乱が発生し、農民や貧困層を中心とした反乱軍がマサチューセッツに出現する仕組みになっている。


(しかし、ダニエル・ジェイスが登場するなんて予想外だったな……史実では小規模な反乱を率いていた人物だったはずだが……ここでは軍人としての頭角が出たのだろうか……)


この世界においては、ダニエル・ジェイスは反乱者ではなく軍人としての頭角を現して佐官クラスまで上り詰めたのだろう。

史実同様に負傷はせずに、実績を積み重ねて出世をした事になるが、農民出身者であり一兵卒で尉官から佐官になるのはかなり珍しいケースだ。

あのプガチョフですら文盲ではあったが少尉としての地位を確立することが出来たことを考えれば今後、マイナーな人物が現れてくる可能性も高くなった。


少なくとも史実でも反乱軍を一時的に率いるだけの実力と指揮能力があったと考えれば、彼の能力が侮れないという点だ。

史実では確か一兵卒だったからそこまで軍隊での地位は高くは無かったはずだが、佐官まで昇格している点からして恐らく捨て駒、もしくは増援が来るまでの時間稼ぎとして赴任されたのだろう。


いずれにしても、手を抜くわけにはいかない。

フランス軍としては全力でコロンビア市の守備隊を排除して占領する必要がある。

ここを占領すればノーフォーク造船所への道のりを確保出来る上に、後続部隊の補給拠点として活用できるからだ。

出来れば犠牲者と建物への破壊は最小限にとどめてもらいたい……。

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