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1066:ワルツ

★ ☆ ★


オーギュスト様がシャルルを連れて改革派の会合に参加し終えた後……。

私はオーギュスト様と今後について語り合うことになりました。

今現在の情勢が落ち着いた後に、今後のフランスをどうしていくか……。

その事について考えていたのです。

北米複合産業共同体との戦争が続いておりますが、未だフランス本国では遠い国の出来事であると思っている方々も多くいらっしゃいます。

フランス軍の多くの将兵が参戦していることもさることながら、一般市民の方々はこれまで通り変わらない生活を享受しているのです。


「オーギュスト様、この先北米複合産業共同体との戦争が終わったら今後のヨーロッパと北米大陸はどうなさるおつもりですか?」

「北米複合産業共同体との戦争が終わった後か……その事に関してまだ詳しく話していなかったね……折角の機会だ。じっくり話しておくよ」


オーギュスト様は北米複合産業共同体との戦争が終わった後のヨーロッパ新秩序体制構築について語りました。

まず、今のヨーロッパ諸国においてロンドン革命政府軍や薔薇十字団の残党が僅かながら存在しており、これらの組織や団体が北米複合産業共同体側と手を組んで組織だった裏社会との繋がりを強化、合法的な企業を保有して活動していた事を明かしてくれました。


ストックホルムやケルンで摘発された事業者の多くが、スペインの植民地であったメキシコを経由して貿易をしており、そこで北米複合産業共同体のスパイを通じて欧州各国での情報収集や裏社会を経由して人身売買や贋金製造などの違法な手段で利益を享受していたことも判明したそうです。


「彼らは違法な活動内容をしていたが、表向きは至って普通の食堂や宿屋、それに人材派遣業といった真っ当な会社を用意していたんだ。彼らの摘発が遅れたのも、そういった普通の人と変わりない産業構造を構築していたことが判明し、彼らを摘発した結果……北米複合産業共同体と国交を断絶した1790年よりも前に既にメキシコを経由してスペイン人のパスポートと持った人物が入国していたんだよ。いずれも北米複合産業共同体側が放ったスパイたちがそれまでプロイセン王国と関係を結んでいた薔薇十字団、それから現地で関係構築をしていた北米複合産業共同体のスパイに資金提供などをしていたんだ」

「つまり……北米複合産業共同体側がフランスなどを含めた欧州各国に一見すれば合法的な仕事を保有して活動していたという事ですか?」

「そう言う事だ。スコットランド政府に北米複合産業共同体側が支援したと思われる高官関係者が、革命政府側と繋がっていた事案もあったが、あの時にもメッセンジャーとして活躍していたのが北米複合産業共同体側のスパイであったといわれているんだ。彼らのスパイ網は欧州全土に蜘蛛の巣のように張り巡らされているといっても過言ではない……」

「そのスパイ網を摘発しないと、北米複合産業共同体側が投降しても彼らが活動を続けるというわけですね……」

「そうだ。彼らが苦し紛れに王族や改革派のメンバーを狙った暗殺事案を引き起こす可能性もあり得る。故に、既に摘発が進められているストックホルムやケルンだけでなく、フランス本国でもパリやリヨン、マルセイユ等でも摘発をしなければならないだろう。隠れ蓑にしているとなれば、まだ捜査の及んでいない地域や都市部に彼らの拠点がある可能性が高い」


北米複合産業共同体のスパイたちは、行動を起こす前に摘発を行うとオーギュスト様は語っておりました。曰く、諸外国で既に40名以上のスパイが摘発されている関係上、知らず知らずのうちにフランスに入国して活動している北米複合産業共同体のスパイたちがいるのは間違いないでしょう。

その中でも、オーギュスト様が警戒しているのは、メキシコを経由して偽のパスポートと書類で入国したと思われる人物の特定を急いでいるとのことです。


主に港湾都市などを経由して入国をしたスペイン国籍の人を中心に、本当に書類が正しいものであるのか確かめる必要があるとも語っておりました。

メキシコの汚職官僚が北米複合産業共同体と結託して偽のパスポートに出生書類を作成していた事が判明しており、諸外国で逮捕や拘束された北米複合産業共同体のスパイたちの出生地がスペインだったことも大きな理由でしょう。


スペインからの移民や技術者の流入はそこまで多くはないですが、それでも都市部を中心に工場勤務等で技術技能取得のために派遣されている者達もおります。

彼らの中にスパイが紛れ込んでいると、彼らは間違いなく破壊活動の方に行動を移すのではないかと言われています。

今は目立った行為をしていなくても、機械の強度をワザと弱くして故障を頻発させたり、最悪の場合は工場に放火などを行って操業が出来ない状態にするケースも考えられるとおしゃっておりました。

武器や兵器などは軍の工廠で身元のチェックをしっかりと行いますが、それでも油断は禁物でしょう。


「武器や兵器関連の工廠でも、彼らのスパイがいる可能性はゼロではない……が、表立って破壊工作を仕掛けるという事まで進めるには時間を掛けるだろうな……」

「それは……発覚を遅らせるという意味ですか?」

「それもあるが、今仮に破壊工作が露見した場合、工廠の者の中でそういった武器や兵器に携わる士官や技師の中にスパイがいるという事を宣言しているようなものであり、それを行ったら確実に彼らの中に工作員がいることが露見するだろう。スパイが行うとしたら何時でも逃げる準備が整った場合に行うのであって、直ぐに実行しようとは思わないはずだ。確実に安全圏に逃げる準備を整えてからでないと彼らはしないはずだ」

「スパイがいるとすれば、そういった逃げる準備を整えてからというわけですか」

「ああ、闇雲になって破壊工作をするはずがない。既に北米複合産業共同体に関してはノーフォークから20キロ手前まで追い詰められている。彼らからしてみれば、自分達の軍勢が劣勢であることが明らかであり、賢い人物に至ってはスパイであることを隠したまま穏便に過ごそうとするはずだ。もし、これで北米複合産業共同体が降伏した場合、彼らは間違いなく本国への情報の送付だけでなく、体制転換した場合にはスパイとして積極的に密告や逮捕状が出されることを知っているはずだ。故に、ケルンやストックホルムで飲食店や人材派遣業を生業にしていたのも、いざという時に自分達で生活できる基盤を作るために行っていたのさ……最も、裏社会との繋がりをもっていた上に、人身売買や贋金製造といった事をしたために事態が露見することになったがね……」


ケルンやストックホルムで露見されたスパイたちは目立つことをしてしまったが故に、逮捕されてしまったそうです。

……となれば、本当に隠密行動を心掛けている者達は静かに嵐が過ぎるのを待っているという事になります。

我慢比べになるかもしれませんが、今後もこうした北米複合産業共同体のスパイたちも静かに行動をしていくのではないでしょうか……。

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