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1064:擬態

北米複合産業共同体のスパイと薔薇十字団の残党の摘発……。

それは一筋縄ではいかぬものなのは誰の目から見ても明らかだ。

特に、ストックホルムにおいて摘発された組織に至っては、北米複合産業共同体が解体されたことを想定して動いていたからである。


贋金を製造していた薔薇十字団の残党しかり、本国との連絡が途絶えた後でも自分達の判断で行動を継続していることから、彼らも一般企業に擬態して活動していたことは明白である。

北米複合産業共同体は1785年までに述べ数百名のスパイを欧州各国に解き放っており、スコットランド政府では阿片の密売に役人を巻き込んで加担していたことが証明されている。


スコットランド政府での摘発を受けて、北米複合産業共同体のスパイたちは地下に潜り、各国の間で摘発や関係者の逮捕などを行っても尚、彼らはネズミの如くしぶとく生き延びていた。

薔薇十字団に至っては、プロイセン王国との国交があった際に北米複合産業共同体の船舶を受け入れており、その際に多くの工作員や連絡員などを潜ませていたらしい。


「プロイセン王国時代に北米複合産業共同体の人員を複数取りこんでいたことが判明しておりますが、これらの資料に関しては薔薇十字団が敗戦直前に資料の多くを破棄しており、捕らえた薔薇十字団のメンバーも全容を知らないと語っておりました。尋問も行いましたが、どれも反応は芳しくない状態です」

「各々が任務を与えられて、それを黙々と実行している状態であるからな……単独でも行動ができるようにしていたのだろう」

「その通りです。ケルンで拘束した北米複合産業共同体のスパイに関しても、ミュンヘンやウィーンのスパイとは直接やり取りをしていたものの、ストックホルムのスパイに関してはメッセンジャーを通じてしかやり取りをしていなかったそうです。万が一関係が露呈した場合でも手紙の場合は何時でも焼却処分ができるように暖炉の傍に置いていたとのことです」

「メッセージもスパイでしか分からない言葉で語られていた状態か?」

「はい。主に企業の報告書といった感じですが、彼らはこの企業報告書を読み解きながら相手がどのような状態か、そして必要な資金の調達や援助などを行うためにそれぞれやり取りは限られた時間の中で行われていた事も判明しております」


北米複合産業共同体のスパイが摘発しても、大規模に芋づる式に捕まらなかったのもこれが要因だという。

北米複合産業共同体にとって、スパイはあくまでも契約している諜報員であり、企業の成績に応じて彼らの待遇も決めている。

北米複合産業共同体との国交があった状態の際には、メキシコを経由して彼らに資金が送られており、主にストックホルムを経由して旧プロイセン王国領に点在している北米複合産業共同体のスパイ拠点や、交流のあった薔薇十字団のメンバーに対する資金援助などを淡々と行っていたそうだ。


それも、複数の拠点と現地協力者を経由して行われていたようで、主に運送業や海運業に携わっている者達を中心に、先のハニートラップや赤字経営続きだった会社を合法的に買収して、表向きはクリーンに活動している会社に擬態していたようだ。

実際にこういったスパイによる合法的な会社経営というのは昔から行われており、古くは酒場や教会などで協力者を集い、寄っている兵士などから情報を盗んだり、牧師や神父がスパイの諜報員として懺悔する兵士達の悩みを聞いて、軍事作戦などを把握する事に長けている者達がいたのである。


何よりも、北米複合産業共同体は産業国家であるために、プロイセン王国に残留した北米複合産業共同体のスパイたちは、フランスやスウェーデンで生産されている蒸気機関の部品などをかき集めて、本国に輸出していた疑いも出てきている。

彼らは表向きは何の変哲もない会社であるが故に、擬態してスパイ企業として成り立っていたのだ。


曰く、薔薇十字団と共に本国が危機的状況に陥った際に反乱や経済混乱を引き起こす役割を背負っており、その時が来るまでは原則待機の指示を出していたそうだ。

スリーパーとしてスパイ活動をするのは目立たずに静かに執り行うことで、彼らは企業などを隠れ蓑にスパイ拠点を構築していったのだ。

こうした諜報活動はフランスでも行っているが、北米複合産業共同体がここまでシンジゲートを持っていたのは、プロイセン王国との関係もさることながら、メキシコの植民地政府との癒着があったからこそ、スパイを第三国経由で入らせていたのだろう。


(国土管理局と同じやり方でスパイを浸透させていたのか……この時代においては割と先進的かつスパイをしていても問題なく行えるやり方だな……デオンがロンドンで諜報活動をしていた際にも、社交界などで活動をしていたと語っているが、今はそのような表舞台で堂々と名乗りを上げるのではなく、裏でひっそりと過ごすやり方が一番目立たないんだろうな……)


これは現代でも言える話ではあるのだが、スパイというのは目立ってはいけない存在である。

政治家にせよ企業スパイにせよ、彼らが表立ってスパイ行為を堂々とすることはまずない。

彼らは基本的に静かに浸透することを徹底して行うのだ。

某スパイ映画みたく、派手な暗殺方法はやらないし、やるとしても『病死や事故死』に見せかけたやり方で行われるものだ。


北米複合産業共同体にとってみれば、欧州各国の情勢をスパイ網を通じて7か月前までは把握されていたと見た方がいいだろう。

ケルンやミュンヘン、それにストックホルムにスパイ網が構築されていたとすれば、フランスにもまだ摘発を免れている拠点があるのは間違いないだろう。


フランスも北米複合産業共同体にスパイを放っているが、情報がどんなに早くても2週間程度かかる上に、彼らは大規模な破壊工作などを行う立場ではなく、具体的な軍事施設関連の情報などを収集し、北米複合産業共同体の軍隊に関する情報などをかき集めている。

破壊工作も指示を出そうか考えていたが、流石にスパイ行為が露見された場合のリスクを鑑みれば、下手に動いてスパイ網が壊滅することだけは避けたいのだ。


「北米複合産業共同体のスパイや薔薇十字団の残党……それから、ロンドン革命政府の残党も僅かながら潜伏していると思われる地域や場所、それに企業などを中心に捜査を進めるべきでしょうな……彼らは少なくとも点と点で繋がっているはずです。我が国だけでなく、欧州協定機構内においても活動をしていたとなれば、多国間でやり取りをしてメッセンジャーを含めた現地協力者なども複数名存在していると見なした方がいいでしょう。今回の件に関してはお互いの捜査機関の情報を共有し、彼らの拠点と関係者の摘発を優先していきましょう。彼らが反乱や経済的混乱を引き起こそうとすれば一番厄介になります」


捜査は多国間で行うべきだろう。

第三国を経由したやり方であったり、現地協力者を使ったスパイの摘発……。

やる事は多いが、取り決めを行う上では必要不可欠だ。

彼らを包囲するために、国土管理局の内外対策を担う部署にも動員をかけることになったのである。

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― 新着の感想 ―
流石は世界一になる可能性があった北アメリカ大陸の国だわ トップがアホ貴族でもやることに卒無く無駄が無いように見える ただ開戦時にフランスの重要施設で破壊工作出来る人材を育てる時間は無かったのかな
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