表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1038/1054

1036:新武器

会議は順調に進んでいる。このまま進んでいけば欧州協定機構軍がどのように行動するべきかお互いに考えて意見を出し合える環境になっている。

たとえ、中小国であっても彼らの意見を無碍にすることはしない。もし、加盟国の盟主がそのようなことをしてしまえば、同盟関係は悪化してしまうからだ。

クラクフ共和国から派遣されている大使からの報告で、北米大陸に派兵されている騎兵部隊の運用に関する提案がなされたのである。


「現在北米複合産業共同体で使われている騎兵隊の装備ですが、長距離を移動しているために蹄鉄の破損なども目立ってきております。特に、平原が多い事もあってか農村部における奇襲攻撃を受けるケースが多々報告されていることもあり、騎兵専用の連射式空気銃の配備を進めてもらいたいのです」

「騎兵専用か……」

「はい、プロイセン王国軍が使用していた蒸気式空気機関銃は連射力と火力はマスケット銃にも劣らないほどの威力を発揮しますが、背中に発動機を抱えているため重く、それに点火をするまでに一分以上掛かります。敵からの奇襲攻撃を受けた際に即応的に対応するのが難しく、また騎兵部隊でも運用はしておりますが、これは先行した騎兵部隊が守備陣地を構築するために持っているケースがほとんどであります。正式に連射式空気銃の中でも、騎兵隊が携帯しやすいように小型化されたものを製造できるのであれば、それを欲しいのです」

「携帯式の空気銃か……」


クラクフ共和国側が提示したのは小型化された連射式空気銃の開発である。

実際にこれはフランスの陸軍工廠において作られている新型空気銃があり、これに関しては現在実戦投入もできる状態に改良が施されたものが存在している。

ジランドーニ銃とプロイセン王国軍で使用されていた連射式空気銃の利点を組み合わせた半自動空気銃が開発されており、これは冷却された空気を圧縮して発射する仕組みであり、現代でいう所の遊戯銃としても知られているガスガンの構造に類似しており、この銃は作られている。


とはいえガスガンは無いが……実銃を持ち込んだメリッサの銃を解析した研究者によって火薬式の弾丸を開発する場合の紙薬きょうの方式などが適さないため、MARK23拳銃をベースに弾倉の入る部分に圧縮した冷却空気を装填し、薬きょうを輩出する場所に弾丸となる鉛玉を詰め込んで発射するという仕組みを作っているのだ。

結果的に、日本ではエアガンどころか銃刀法の法規制に引っかかるような威力を発揮できるように改良されたものである。


弾倉の部分……銃を握りしめるグリップの部分に圧縮空気を入れてから、弾丸を装填する部位には長方形状のマガジンに10発から15発程度の弾丸をバネの力を応用して自然落下する仕組みを採用しているため、チェコ機銃のように弾丸を発射したら取り付けて連続発射することが可能になっている。

火薬式の銃ではない上に、仕組みがガスガンに近いこともあってか、連射性能などはトリガーをその都度引き金を引けば連続発射可能になっている。


これはSKSカービン銃とチェコ機銃を組み合わせたのような扱いであり、実際にMARK23拳銃をベースに分解して開発研究されているとはいえ、この時代でも生産できるように様々な部分で改良が施されて実施された最も先進的な空気銃が誕生したのである。


明らかに時代を先取りしすぎている気もするが、待ってほしい。

この時代の技術者と研究者に予算を割り振ればこのようなことが出来てしまうのだ。

流石にメリッサの持ち込んだスマホやノートパソコンは解析は出来なかった上に、電池切れによって既に使用不能になっているが、空気銃に関してはこの時代には既に基礎となるメカニズムが出来上がっているのだ。火薬式薬きょうではなく、空気銃として転用することが出来ればこの時代でも作れる代物なのだ。


今現在の試験内容では射程は約80メートルまで有効であり、圧縮した冷却空気を入れる作業なども蒸気機関があれば可能であることも相まって、このカードリッジを入れる装置と弾丸も合わせて一兵士につき180発近い弾丸を携帯することが理論上可能でもあるのだ。

金属製薬きょうを輩出しないため、ある意味では環境に優しいのかもしれない。

まぁ鉛玉を使っているので、被弾したら鉛中毒になって臓器が損傷して死亡するリスクが増えるけどね。


ただし、原型となったMARK23の面影は機関部に当たる形状だけであり、実際にはライフルとしての基本設計を踏襲しているために一回り大型化している上に銃床も装着されているので、拳銃とライフルを併せ持ったような形をしているのだ。

原型が無くなっているような気もするが、フランス軍ではこの半自動式空気銃から発せられる発砲音が子猫の鳴き声に聞こえるため『voix de chaton(子猫の鳴き声)』の頭文字を取って試作VDC銃という名称で開発が進められている。


VDC銃の特徴は形状もさることながら、先進的な技術を詰め込んだ現代でも通用できる銃という意味合いが大きい……ただ、やはりというべきか、現代の拳銃をベースに色々と研究・開発、そして試作をした結果、高コストな銃となっているのも事実だ。

圧縮空気を漏らさないように使う弾倉もある程度使い回すことができるが、内部の銃部品は繊細であることから物凄く高くなってしまう。


このVDC銃を一丁作るのに、15000リーブルも掛かっている……現代の紙幣価値に換算すれば750万円以上もするのだ。銃一つに対してコストが高いのだ。

この金があればモデル1786マスケット銃が100挺作れる。

グリボーバル砲なら5門、重マイソールロケット砲1発分に匹敵する。

これを量産したら陸軍の予算が直ぐに底を尽きる。

特殊部隊や諜報活動などを行う国土管理局向けに限定生産するしかないのだ。

フランス軍の幹部と国土管理局の職員が顔を見合わせて、その試作空気銃が実戦投入まであと一歩であることを会議の場で伝えることとなった。


「連射式空気銃ですが、現在ジランドーニ銃を小型化し、さらに連射可能にした半自動式空気銃を開発しております。この空気銃でありますが……今現在、試作品が数廷ありますが、これを実戦投入するにはあと三ヶ月は欲しいところです」

「つまり、実戦投入する頃までにライセンス生産という形で生産許可を頂けるのでしょうか?」

「いえ、これに関しては精度の高い部品などを使用しており、熟練の工員でなければ製造できない代物となっております。特に、腕時計のようなネジの部品なども使われているため、非常に繊細でもあるため耐久性に難があるのです。それに非常に高額であり、1挺につき150000リーブル相当もするのです。仮にライセンス生産という形で委託できたとしても、現在開発中の空気銃は技術漏洩防止のためフランスの工廠にて生産、月に生産される分から欧州協定機構加盟国に分配する仕組みを取るつもりです」


VDC銃は信頼のおける同盟国の特殊部隊向け……という形で生産することになるが、一か月で生産できるのは予算も考えれば15から30挺ぐらいだろう。

実戦投入も兼ねるとしたら、北米大陸で活動している国土管理局の破壊工作員と、ナポレオンのいる部隊に最初は配備するつもりだ。

彼ならこの銃を上手く使いこなせるはずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー

☆2020年9月15日に一二三書房様のレーベル、サーガフォレスト様より第一巻が発売されます。下記の書報詳細ページを経由してアマゾン予約ページにいけます☆

書報詳細ページ

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ