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1034:発展の欧州

軍事面においては欧州協定機構軍の戦力と兵器の質は上である。

ただ、北米複合産業共同体は随時即席の兵器や武器を投入できるという利点を活用して東海岸部地域を中心に防衛線を構築しているという情報が入ってきている。

これに関してはフランス軍陸軍大臣より情報共有が行われており、捕虜となったフロリダ防衛線司令官のクリントン氏への尋問により数々の詳細な内容を聞くことになった。


「捕虜となった北米複合産業共同体のフロリダ防衛司令官であるクリントン司令官の情報によれば、その場しのぎの爆弾を抱えた兵士を敵陣に突入させるという戦法が各所で報告されており、一部では銃撃をかいくぐって爆弾を起爆し、少なからぬ損害を与えている自爆兵の存在があります。我が軍も自爆兵の攻撃によってこれまでに140名近い兵士が死傷しており、一部の兵士は精神的に疲弊して後方に下がらせる事態になっております」


当初聞いた話では、有志で募った決死隊を作って爆弾を放り投げるという戦法を取っていたそうだが、これが一定の戦果を挙げた事で、北米複合産業共同体では有色人種や囚人などで混成された懲罰部隊による爆弾を抱え込んだ兵士を敵陣に突撃させる作戦が決行されることになっているという。


(自爆兵……それも三等市民の中でも人権がないとされる有色人種や囚人を主体に構成されているのか……つまるところ……彼らは自発的ではなく強制的に自爆を強要されている兵士というわけか……)


これまでにも、ロンドン革命政府軍や救世ロシア神国軍で自爆を主体にした兵士が登場しているが、これらの軍に関しては自発的、もしくは阿片の投与によって精神的にハイになった人物が爆弾を抱える事案であったが、今回は一般市民を無理やり兵士に仕立て上げて自爆要員として敵陣に突入させるという最悪のやり方でやっている所が恐ろしいのだ。

さらに、捕虜になった自爆兵からは有色人種がこの作戦においては自爆を成功させて帰還しても意味がないことが供述されてもいるのだ。


「自爆兵を戦場で投入するとはな……しかも、資料によればそのほとんどが囚人のみならず黒人などの有色人種を優先的に選抜して攻撃の手駒にしていると書かれているが、これは事実なのかね?!」

「事実です。彼らは有色人種を人間と見なしておらず、爆弾を抱えて敵陣を破壊する道具として使っているのです。破壊の実行が確認できれば二等市民に昇格したり恩赦によって釈放するという文言を添えて行われているそうですが……実際には実行した兵士のほとんどがこちらの哨戒に捕捉されて死亡したり、爆弾を抱えて突っ込ませて自爆させるという方式により、生存者は爆弾が不発のまま突っ込んで足首を挫いて転倒、その場で気を失っていた黒人兵士のみが助かりました。彼から事情を聞いたところによれば、白人の三等市民や囚人兵であれば二等市民になれるチャンスはあれど有色人種の兵士にはその機会すら与えられないとのことです。仮に成功したとしても『戦果が足りない』『敵前逃亡した可能性がある』と難癖を付けられて二等市民への昇格が出来るどころか、懲罰房に送られて拷問されるケースもあったそうです」


白人の三等市民や囚人であれば、その功績を認められて二等市民に昇格できるが、有色人種に至ってはそのチャンスすらも建前であり、彼らをすり潰しても構わないで攻撃し、それでも帰還した場合には懲罰房に送られて戦果を無かった事にされるというものだ。

あまりにも悲惨な内容に、会議に出席していた参加者からはどよめきが起こり、報告書を見ていた高官や大使らも絶句している。


有色人種に対する奴隷制廃止や、差別の撤廃などを法的に定めている欧州協定機構加盟国にとって、ここまで有色人種を人間扱いしないやり方に対して、あまりにも想像を上回るやり方ですり潰している上に、有色人種を人間としてカウントせず、話が通じる別動物という認識が北米複合産業共同体の方では根強いてしまっているのだ。


そのため、北米複合産業共同体における総人口の割合なども、白人の労働者などを中心に統計されており、黒人や中南米から連れてこられた先住民族をルーツに持つ労働者などは『労働備品』としてカウントまでされているという。こうした扱いを受けていたこともあり、北米複合産業共同体においては占領下においた都市部では有色人種への差別撤廃と人権の尊重、これに加えて有色人種に対して過剰な報復攻撃などを控えるように通達を出しているというわけだ。


通達を出していても、人が受けた恨みというのは永遠と残る。

これはイジメでもそうだが、イジメを行った加害者は「ああ、アイツをイジメていたなぁ」程度でしか思っていないが、いじめを受けていた被害者は「あのイジメのせいで心に傷を受けた」となって、それが原因で精神的に疲弊したり、メンタルが安定しないなどの被害を延々と引きずってしまうのだ。

これを人種間のスケールでやっていれば、その恨みつらみは大きなものになる。


だからこそ、治安を安定する上ではこれまでに虐げられてきた有色人種の人達が過剰な反撃や、暴動にならないように説得する必要があるのだ。

ムラートとしてサン=ドマングで産まれた人達を中心に、各都市の有色人種コミュニティにおいて説得を行っており、説得によって何とか彼らの怒りも想定よりも抑え込んでいるというのが実情だ。

ただ、それでも闇討ちとして北米複合産業共同体の白人の兵士がリンチされて吊るされているという状況が時々見られるようだがね……。


で、南部地域が抵抗を続けている間にも随時戦力を投入して中部防衛線を構築しており、これらの防衛戦に備えて海軍ではノーフォークの造船所で作られているとされる新型艦艇を投入するそうだ。

その証拠にスウェーデン側の代表者としてやってきたフェルセンが立ち上がって全員に資料を配ってくれたのだ。


「これはスウェーデンが北米複合産業共同体側に忍ばせたスパイによって送られてきたノーフォーク造船所で建造されている船のスケッチです。模写になりますが、先に鹵獲した船よりも大型化した蒸気船と思わしき船が複数隻建造されているのが分かります」


これは外輪船のシステムを取り入れた物のようで、スウェーデン側から提示された資料には船体の横に大きな水車のようなスクリューが取り付けられているのが分かる。

蒸気船として開発が進められているのも、アメリカに蒸気船に関する技術者が複数いるからだろう……史実では19世紀初頭にお披露目されたシステムではあるが、この世界ではフランスなどの例にもれず開発速度が史実よりも数年以上早まっているのが分かる。


「鹵獲した蒸気船に関しても、これと同じかそれよりも大きな艦船を建造ないし竣工しているのはほぼ間違いないでしょう」

「では、カリブ海で鹵獲した船よりも大型化した蒸気船を運用できるだけのノウハウが向こうにはあると言うことか……」

「その可能性が極めて大きいです。」


蒸気船の実用化……沿岸防衛用としての採用かもしれないが、これを実現して大々的に行うとなればこちらとしても対処を考えないといけない。

思っていたよりも北米複合産業共同体は底力を見せれば強いのだろう。

ここで戦線が膠着しないように各国が連携をしなければならないのだ。

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