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1023:税金

メリッサはシュークリームと紅茶を頂きながらリラックスした様子で椅子に座っていた。

今なら話しても問題なさそうだ。

近況はどうかと尋ねてみた。


「……それで、今の所何か不都合な事はあるかね?」

「特になにも……強いて言えば外に出れないぐらいかしらね……」

「すまないね。今はフランスは北米複合産業共同体という企業国家との戦争中でね。まだ君を外に出すわけにはいかないのだよ。説明の時に聞いているかもしれないけど」

「ええ、聞いているわ。この世界だとアメリカ合衆国が誕生せずに連合政府として北米連合が誕生するも、拡大主義を図った軍部によるカリブ海戦争でフランスを中心とした欧州協定機構軍によって壊滅させられて連合政府が企業によって乗っ取られたんでしょ?」

「そうだ。アメリカは存在しないんだ……ジョージ・ワシントンも北米連合が瓦解した後に、北米複合産業共同体の政治犯収容所に収監されて以来、安否不明となっているんだ。恐らく殺害こそされていないだろうが、存在そのものを抹消されているに等しい状況になっているのは間違いないだろう」


北米複合産業共同体が誕生し、これによって今現在フランスとの戦争状態になっている事はメリッサも理解していた。少なくとも、彼女も歴史に関してはそれ相応に知っている人物であり、俺が介入した結果歴史が大きく変わっていることも理解している。

何と言っても、フランス革命が起きずに改革派として薙刀を振るうように、貴族や聖職者などの身分によって税金が免除されているという事にメスを入れて身分や収入に合わせて税金を徴収するシステムに関しては、評価してくれていたのはありがたいことであった。


「貴方の行った貴族や聖職者でも例外なく税金を徴収する仕組みづくり……とてもいい心掛けだと思うわ。だいぶ反対されたんじゃないかしら?」

「実際に反対派として筆頭だったオルレアン派もいたけどね……ただ、彼らが国王の失脚を望んでいたから先に退場してもらったんだ。改革をしなければフランスの財政を改善できない……必要な犠牲になってもらったよ」

「……だいぶ、思い切ったことをしたのね……」

「無論、反対する人もいたけど……そういった人達の多くが帳簿の粉飾決算をしていたり、収入を誤魔化して過少報告していたりしていたケースが多かったんだ。だからそれだけだと収入源として正確な情報が入らないから、正しく帳簿を付けさせて事業所として登録させたんだよ。この時代の貴族や聖職者は副業としてワインの醸造所とか、不動産事業によって収入を得ていた人達が多かったからね……王の勅命として税収入確保のためにやったのさ……」


貴族や聖職者、そして大地主からは収入に見合った額を徴収し、これらの収入をどのように使うのか明確に示した上で税金の徴税を行うことにしたのである。

特にこの時代の徴税人はガチで嫌われており、フランス革命時には貴族や聖職者よりも真っ先に徴税人にヘイトが向かう状況であった程だ。

彼らが平民や貧乏人から本来徴収するべき税金のみならず、私服を肥やすために多めに税金を取っていた事案もあった為に、時には住民たちが徴税人を吊るし上げたり、裁判で死刑となった徴税人のギロチン刑をライブ感覚で楽しんだ記録も存在している程だ。


故に、俺は徴税人制度を廃止にする代わりに、一定の所得を持っている人に対しては税金を取る代わりに、その税金を道路整備などのインフラ整備や医療福祉費として徴収し、必ず国民に還元されるように仕組みを整えた。

日本の国民年金制度に近いものではあるが、税金を必ず役場にいって届け出を行い、税徴収課という部署を設けてその窓口で税金を個別に回収する。


個人の収入などを一年で纏めて納税するか、それとも毎月納税するかは個人の判断に任せるものの、納税期間などを定めており、地区ごとに納税者がどのくらいいるか、そして納税金額に応じて還元率などを定めた上で、税金の納税証明書の発行などを行う事を設けたのだ。


「徴税人制度は廃止にしたよ……流石に本来徴税するはずの金額から逸脱した多重徴税を行っていた事例が多かったからね……中にはちゃんとやっていた人もいたけど、この時代のヨーロッパ諸国の民衆が嫌っていた職業トップ3に入るぐらいには汚職に手を染めていた人も多かった……だから徴税人制度を廃止にする代わりに、納税証明書の発行を行って税金の管理・運用を行う仕組みを作ったのさ」

「この時代にしては先進的な取り組みね……貴族や聖職者からはどのくらい税金を取ったのかしら?」

「全体の3割程度だよ。よく貴族や聖職者を目の仇にしているとは思うけど、彼らが保有している企業や資産などを換算しても全体の3割……ただし、地方都市では半数を上回るケースもあるぐらいさ。それくらいには納税者の所得が大きい反面、経済的な格差もあるのは事実だ」

「地方だと大地主が幅を利かせて特権階級としての地位を確立していたはずだけど……そういうのはどう対策しているのかしら?」

「まず荘園や不動産、それに富農として成功した人物は必ず事業所を立ち上げて正式に企業として運営するように義務化しているんだよ。身分関係なく平民でも貴族でも合計で5ヘクタール以上の土地を持っていれば大地主として登録する仕組みを作ったんだ。その土地の運営費なども過少申告していないか第三者機関によるチェックを義務化しているよ。これまでに違反によって追加徴税や悪質と見なして貴族としての地位を取り上げられた者も少なからずいる。俺はそういった悪事に関しては容赦なくやるさ」


富農や不動産事業などを手掛けている人の多くが、この時代においては地域や社会において権力を持っていた時代でもある。

貴族に関しては、金回りの良い人達の多くが、不動産事業等で成功を納めており、尚且つ貴族であるという理由で税金を払っていなかった結果、その分の負担を平民が背負っていたのである。


これは変えなければならない。

その一心でブルボンの改革で貴族や聖職者への納税義務を発布し、不動産事業を手掛けている場合は土地や建物の売買に掛かる費用の策定や、賃貸物件であれば徴収した賃貸料収入から税を取る。

大地主で富農であれば、農業収入に加えて利益率から換算した分の税金を支出することなどを明記したのだ。


これにより、税金を領収した場合には必ず役場で発行されるスタンプ付きの納税証明書を役場・納税者双方が保管することなどを定めているのだ。こうすることで納税を行う仕組みを整えることができた。

何と言っても、この時代にはある程度誤魔化して税金をちょろまかす輩がゼロではない故に、帳簿をしっかりと記載した上で、不正が起きたらすぐに分かる仕組みを作ったのである。

これには経済学者などを動員して不正が起きる仕組みなどを検証してもらい、対策案としてこの時代でも出来る対策法による法改正なども大きい。


それに万が一、自宅が火災や洪水などによって焼失したり浸水被害を受けて納税証明書を紛失してしまったとしても、役場にコピーを残していれば必ず納税証明書を再発行できるようにしたのである。

納税システムに関していえば20世紀頃の水準に引き上げることが出来たと自負している。

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