100:17歳
100話達成記念なので初投稿です。
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1771年8月23日
ルイ16世に転生して早1年と4カ月が経過した。
今日は俺の17歳の誕生日だ。
誕生日……欲しいものはあります。
だって人間ですもの。
プレゼントの一つや二つぐらいあるわい。
まず一番欲しいプレゼントはPARAMONIC製の4TBSSDにMUSHITE製の64GBメモリー、水冷式の高性能ゲーミングマザーボードを欲しいなと思ったが、そもそもここは近世フランス。
そんなものはない。
マジで。
精密電子機器すら無いから転生前で欲しかったものは諦めるのだ……。
64GBのメモリーを3つ増設させてゲームをすればさぞかし快適に動いただろう。
転生前に一番好きだったもの。
それはゲーミングパソコンのパーツを組み立てて、最高品質の高性能処理機能推薦の最新のゲームに触れることだ。
いわゆるPCゲーマー勢でもあったんだ。
こう見えても俺は休みになれば秋葉原にちょくちょくネット仲間と共に赴いてPCパーツ巡りの旅に出かけたものだ。
秋葉原……電気街でもあり、オタクの聖地。
このままルイ16世のままならもう秋葉原には行けないな。
いや、行けないことは無いのだが……仮に今行ったとしてもあの辺りはまだ江戸時代中期ぐらいから商人の街として栄えていたようだし……。
恐らく江戸の一角にある街となるだろうね。
そうさ……俺は……いつまでもアキバを愛するオタクの端くれ……。
SNSの友達がそう教えてくれた……。
で、話を戻すとしてだ……。
今日、この日がルイ16世の誕生日なので当然ながらお誕生日会というものが開かれるわけだ。
ウン、それは分かる。
今現在国王だからそうしたイベントがあるのは理解できる。
去年は赤い雨事件の事後処理などで忙しくてそれどころじゃなかった。
精々ケーキを食べて祝った程度だ。
「去年はドタバタしていたからなぁ……今日は誕生日だしゆっくり過ごせるかな?」
だが今日は違う!
誕生日を祝うためにヴェルサイユ宮殿のオペラ劇場で行う取り決めをしているのだから!
ゆっくりは過ごせない!
残念!
ちなみに去年、ここで俺とアントワネットとの成婚晩餐会を行ったわけだが……。
その晩餐会に掛かった費用というのはオペラ劇場の建設費を上回る金額だったようだ。
現代の紙幣価値にしてみれば50億円ぐらいは掛かっていると思う。
催事担当部に問い合わせたところ、これでもオペラ劇場を貸し切って行ったことで費用が安く済んだのだという。
「今日の晩餐会……それから前座の社交ダンス会もあるからなぁ……やる事だらけだぞぉ~」
そう、晩餐会でご飯を食べたり要人と話すことだけが仕事じゃない。
晩餐会の前に行われる社交ダンス会の方が一番重要かもしれない。
何と言っても改革の影響からか、平民階級の人でも財を築いて政界と強い結びつきを持った人が現れたり、反改革派を一掃した結果、今までヴェルサイユ宮殿内でも冷遇扱いを受けていた者達が息を吹き返したんだ。
そうした人達はルイ15世から敵対視されるほどではなかったが、宮廷内における勢力図から駆逐される寸前の末端勢力でもあった。
フランス王国に影響力を持ったオルレアン家が取り潰されて、パンティエーヴル公爵など改革派貴族・聖職者が穴の開いた勢力を埋めるように、彼らも宮廷から一定の勢力を盛り返すことに成功したのだ。
その中でも、とにかく新勢力として目立ち、かつ中立派だった者たちをまとめ上げようとしている者がいる。
それがポリニャック伯爵夫人であった。
そう、フランス王国関係者の中でも悪名高い事で有名なポリニャック伯爵夫人である。
史実ではランバル公妃のライバルであり、アントワネットのお気に入りの一人となると、権限を悪用して大した実績もないのにお気に入りという理由だけでポリニャック伯爵を公爵にランクアップしたり、国庫から金を巻き上げるだけ巻き上げてから、フランス革命が起こると真っ先に家族揃って国外逃亡した人である。
早い話がハイエナみたいな人であり、用済みになれば責任を丸投げしてから猛スピードで逃げてしまうような人……。
どこかの賭博漫画に登場したらきっと説明欄にどんな称号が似合うかと言えば『人間のクズ……!』の称号を与えるのに相応しい人物だ。
「そもそもポリニャック家は色々と黒い事をしでかしている家柄だからなぁ。アントワネットから離れていればそこまで勢力を伸ばさないとは思ってはいたが……これはチョット予想外デス……」
報告書を読んでいるが、ポリニャック伯爵夫人の女の魅力たるもの恐るべしである。
ポリニャック伯爵夫人は反改革派が一掃され、ルイ15世が死去した12月末ぐらいから中立派へのサロンを開いていたようだ。
部分的改革賛成派とも呼ばれている政策を見極めようとしている人達の前に立って演説を行い、伯爵家の領地に中立派から巻き上げた金を使って将来への投資と言わんばかり、パリで投資説明会などを開いてポリニャック伯爵家所有の店舗を次々に増やしているようだ。
例えるならそれまでそこそこ仲の良かったオタクのサークルの中に美女が入り込んで来て、オタク連中を巧みに誘って物を買わせる手法に似ているな。
所謂オタサーの姫状態とでも言えばいいのだろうか。
それでも彼女が集中的に行っている分野の投資が現時点で成功しているので詐欺として扱うことも出来ないので、ある意味でやり手でもある。
「やはり、この人は油断ならない人だな……ちゃんと見張っているように伝えよう」
誕生日ではあるが、やはり中立派……特にポリニャック伯爵夫人には注視するべきだろう。
彼女は魔性の女性だ。
それも、異性だけではなく同性であるアントワネットの心情を掴むことが出来た歴史的事実を踏まえても気を付けたほうがいいに決まっている。
今までは大した勢力ではなかった上、不祥事などを起こす様子もなかったので現状維持として見張らせてはいたものの…中立派を抱え込んでいる様子を見るに、大きな勢力ではないが無視は出来ない一角として王国で勢力を拡大しているのだ。
この無視できない勢力の拡大に懸念を抱きつつ、俺は公務を行うのであった。
当初、この小説はギャグ全開で行こうとしたのですが、そうしたギャグを出す雰囲気がなかなかできなくなってしまったので少々心細く感じるときがあります。
因みに本小説を書き終えるとしたらあと50万字ぐらいは掛かりそうです