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1006:ペレストロイカ

「……と、ここまではデメリットを述べたわけだが、余としては共産主義における一部の意見も大事だと思っている事もあるんだ。現に一部の事に関しては実現可能であると考えているし、現在進行形でこちらのフランスでは、彼らの考え方においても理にかなっている部分は実現しているんだよ」

「それは……どういう事だ?!王政政治をしているのに共産主義の意見を取り入れているというのか?!」

「うーん……共産主義の理念的な資産共有とかではなく、一定の収入以下で暮らしている貧困層への定期的な食糧配給であったり、病院での薬品類の補助や手術費用の免除などの社会保障制度の制定などを盛り込んでいるんだ。資産ではないが、現物支給や病気を患った際に治療できるように環境を整えているんだよ」

「……北欧諸国が行っている社会保障制度システムを採用したのか?」

「いや、生憎余はそこは詳しく無かったのでね……遠い島国の保障制度を真似てやってみただけさ。こちらのほうが余とて詳しいからね」


メリッサが驚いていた社会保障制度……これは元々戦後の日本から導入された制度を覚えている範囲で描き記した上で、それを閣僚などに指示を出して提言。国庫から必要経費として捻出して貧困層や傷痍軍人を中心に支給した制度でもある。

この制度によって、これまで社会的には見捨てられていた弱者に該当する人達を可能な限り救ってきていると考えている。


この時代には貧困層出身者の多くが低賃金で重労働を強いられることが多く、かなり劣悪な環境であったことはいうまでもない。

そこで、最低賃金制度の導入を行った上で9時間労働以上働いた場合は、それに見合う賃金を出した上で最低でも報酬を出す事を義務化したのである。

無論、それで是正した場合もあるが、中にはグレートブリテンやネーデルラントからやってきた難民の人々を最低賃金以下でこき使って禁輸品の製造を行っていたグループも存在しているため、法の抜け穴をかいくぐって手配師などを使って不法な労働への斡旋なども未だに行われているのも事実だ。


それでも、貧困層の人達の生活が改善できるように色々と手を打っているのもまた事実だ。


「格差を完全になくすことはできないが、王政政治においては国王の権力は絶対だ。それを利用して貧困者の人達であっても社会保障制度を受けて暮らしていけるように基盤を整える下地を作ることができるのだ。我が国では多くのユダヤ人やユダヤ系の人々が高額納税であったり資金援助をしてくれているお陰で、その資金を確保することが出来たのだ」

「ユダヤ人やユダヤ系……でも、あの人たちはこの時代では迫害されていたのでしょう?」

「そうだとも、ユグノー派を含めて迫害対象でもあったが、余がその悪い迫害概念を禁止にさせたのだ。国王代行になってからは余の側近にもユダヤ人の商人がいてね……その人がユダヤ人のコミュニティを通じて欧州各国にいたユダヤ人やユダヤ系の人々の資金を集めてきてくれたのだ。彼らの協力があってこそ、今のフランスがあるのだ。……恐らく、君の事だから中東に出来上がった新興国家の事もあって、ユダヤ教を示すマークに抵抗感を感じ取る事があるのではないかね?」

「……お見通しって事かしら?」

「あれはあの国を統治している治世者と、その治世者を支援している超大国の関係もさることながら、最初に国家建設の際にイギリスが二枚舌外交でユダヤ人と現地民との間で別々に独立を交わす取り決めをしたのがいけないのだ。それが拗れた結果引き起こされた悲劇の始まりであり、結果としてあの世界においては、未だに両者が和解に至っていない根本的な原因の理由でもあるのだ」


ユダヤ人やユダヤ系の人たちには本当に助けられている。

ハウザーもそうだったが、この時代においては多くのユダヤ人やユダヤ系の人達は世界各国に散らばった民族の集団という認識であり、その多くがコミュニティの外で取引をしていてもユダヤ民族という理由だけで迫害を長年に渡って受けてきた歴史があるのだ。


彼らのルーツなどもそうだが、千年以上に渡って民族の悲願である国家の樹立を行うために行動を続けてきたのだ。アメリカや西側諸国などに大きな影響を与えたのも、彼らが持っていた情報収集能力と、資本力によって成り立っている。

ハウザーからの紹介で銀行関係者や、ユダヤ人の金融関係者とも縁が繋がりがあった為に、こうして金銭面で不自由なく行えるという所だろうか。


ただ、メリッサとしてはあまりユダヤ人の人達に頼るようなことはしたくないような素振りを見せている。彼女のことだから、現代において国際的な大企業のCEOなどがユダヤ人やユダヤ系をルーツに持っている人達が多いことに対して気に入らないように感じ取っているのだろう。

そして、ファシズムや共産主義にとって、資金力のある人物や集団が敵対的な行動をしてしまうとマズいので、ナチスドイツ時代であったりソ連時代においてはユダヤ人やユダヤ系の人々は迫害を受けて国外に避難したり、収容所に送られて死亡するケースが後を絶たない。


ましてや、世界大戦後にアメリカやイギリスを中心にユダヤ人やユダヤ系の創業者の企業や次々と世界の株式市場において上位を席巻するまでに成長したことを踏まえると、彼らが富を独占しているように見えてしまうのだろう。


「君はユダヤ人やユダヤ系に対して、あまり良い印象を持っていないようだが……」

「当然よ。彼らは世界中の富を集めているじゃない。それで大企業を作って様々なSNSやメディアを通じて世界を支配しているのよ。共産主義にとって、彼らの資金ネットワークが入ってくるのは問題だわ」

「だが、彼らは国を失ってから金融関係で力を付けたのだよ。キリスト教が金利付きの金融業をやっていなかった時代から、彼らは利子を得て比較的安定した生活を送れるようになったのだ。最も、それで裕福になっていくことを妬んだ教会や民衆によって襲撃されたり、食事の前に手を浄める風習があったから中世の暗黒期に大流行したペストでも被害を最小限に抑えることができた。だが、これも結果としてユダヤ人やユダヤ系の人達がペストをばら撒いたという悪質なデマとなって迫害や虐殺の正統性を広げた……結果として20世紀までそれが続いたというわけだ」

「……」

「彼らが独占しているのではない。すでに金融関係のシステムを組んで発展したのだ。そしてそのシステムによって社会保障制度が成り立っているのだよ」


ユダヤ人やユダヤ系の人達の金融関係で得られた税金などを使って社会保障の手当てに充てる。

何も保障も手当もないよりはマシである上に、保障に関しても一定額の収入がない世帯への援助なども行っているため、これによって路頭に迷う貧困層の数が大幅に減少し、彼らの多くには新規に建設されたアパートメント住宅に住まわせることにもなったのだ。


「それに、社会保障制度が誕生して安価で建設が直ぐに出来る木造建築の住居をパリ郊外に作ったのだよ。主に貧困層の中でも劣悪な環境にいた人達の改善目的で作ったわけだが、これが結構うまくいってな……ソ連の集合住宅のようなアパートメント方式に近いが、そこでの家賃を抑えて収入にゆとりを持たせているんだ。そこでメリッサ、これからが本題だが君の力を借りたいのだ。」

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