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第四十八話 親友

 俺たち4人の前に巨大な扉が立ちふさがっている。


 ロンダルギーアダンジョン、50階層。

 明らかに、今までの場所と雰囲気がガラリと変わり真っすぐ伸びた通路とその先にあった巨大な扉。

 ダンジョンの最深部で間違いはなさそうだ。


「さすがのブレイドも、いきなりドアをバーンと開けたりしないんだな」


「酷いなライオネンは俺だって空気ぐらい読む」


「「「え?」」」


 思わず3人がシンクロしてしまった。

 向こう見ずなブレイドのせいでどれだけ危険な……いや、今はやめよう。


「この扉は、みんなで開けよう」


 シンサールが扉に手を当てる。それぞれ、今までの冒険の日々を思い出しながら扉に手を当てていっているだろう……

 そう、ダンジョン攻略の、楽しくも地獄のような日々……

 昆布様がいなければ絶対に不可能だった、最深部到達。

 今、俺達が成し遂げた……


「開けるぞ」


 ブレイドの号令でぐっと手に力を込める。

 巨大で重厚な扉が音もなくゆっくりと開いていく……

 ピリッとした冷たい空気が足元を抜けていく、その奥に強敵が待っていることは肌で感じる。


「やべぇな……」


「ああ、肌が粟立っている」


「引き返します?」


「まさか!」


 ブレイドが部屋の中へずんずんと進んでいく。

 ライオネンとシンサールもやれやれとそれについていく、そして俺がその後ろにつく。

 すでに昆布は展開している。

 そして、正面に立つ巨大な三面の顔を持つ巨人がこのダンジョンの主であることはわかっている。


「阿修羅像……」


「アシュラ……なぜかしっくりくるな、この鬼の名前か?」


「うん、そんなところ。俺のいた世界では神様だったよ」


「神に挑むか、滾るな」


「来るぞ!」


 巨大な像が立ち上がると更に迫力がある。

 三面六臂、3つの顔と6本の腕、武器は俺の知っているものと違い剣とか斧とか槍とかファンタジーな感じになっている。3つの顔は死角がなくこちらの動きを完璧に把握している。

 6本の腕から絶え間なく降り注ぐ攻撃は苛烈の極みだ。

 俺たちも必死にその攻撃を避けることに注力するハメになる。


「これはきつい、ツユマル! 転ばさせられないのか?」


「さっきからやってるんだけど、もしかしたらちょっと浮いているのかも!」


「なるほど、だから変な動きをするのか!」


 時々地面を滑るように高速移動してきて間合いを狂わされている。

 地面に配置した昆布が全くダメージを受けていないことからも間違いないだろう……

 阿修羅像の手足に昆布を巻き付けて動きを阻害したりもしているけど、凄まじいパワーで拘束を破ってくる。それでも昆布ぐるぐる巻にして少しでも動きを制御しないと、息つく暇もない攻撃を浴びせられるのでこっちも必死だ。

 

「少しづつ慣れてきたぞー! オラァ!!」


 ブレイドが突然敵に突っ込んでいく、これ、よくあるパターン。

 完璧に攻撃が見切れているわけでもないのに、とりあえずちょっと突っ込んでいく。

 結果として残りのメンバーがブレイドに攻撃が当たらないようにフォローする事になる。

 いやね、事前に言ってくれれば合わせることだってできるのに、思い立ったら突然行動に移すんだブレイドは、でも、不思議とその瞬間が、機であったりするのが怖い。天才怖い。

 周りの人間と昆布の献身によって、ブレイドの一撃は深々と阿修羅像の顔面に突き刺さり、一面を砕いた。3面による6つの目による監視が減ることにより死角ができ攻撃のタイミングが増える。

 ただ一度の攻撃によって戦闘の流れがガラリとかわる。

 ブレイドはそのタイミングを見極めるのが抜群に上手い。と、言っても本人はそんなことを考えてはいない、勝手にそのタイミングに体が反応するみたいだ。天才怖い。


「見えた! 胸の中心が核だ!」


 ようやく分厚い外角を剥ぎ取って、阿修羅像を動かす心臓部である巨大な魔石が顕になる。

 すでに頭部はグラグラと動くたびに揺れており、視覚情報がきちんと伝達されているのかもわからないが、魔力探知的なものでこちらの動きに必死に対応してくるが、俺たち4人のチームワークは付け焼き刃な方法で躱せるはずもない……


「邪魔だぁ!」


 ライオネンの一撃が、ボロボロだった腕を数本吹き飛ばす。


「シッ!」


 シンサールの静かな一撃で、剣を持つ手首から先が借り落とされ地面に落ちた。

 超加速世界を走って残る腕を破壊し、昆布で全身を捉える。


「ブレイド!」


 俺の声に反応したわけじゃないが、溜めに入っていたブレイドの大技が発動する。


「くらええええぇぇぇ!!」


 ブレイドの全力の一撃が阿修羅像の胸板を貫き通し、魔石が砕け散る。

 石像は、がくりとすべての力を失ったようにその場に倒れ込むのだった。


「ほいほいっと」


 俺はすぐさま昆布で魔石を集めて綺麗に元の形に作り上げてそのまま包んでおく。

 魔石はある意味生きているので、こうしておくと元の通り巨大な一つの魔石になる。

 これだけの規模の魔石は貴重なのでね。


「つっかれたー……」


「流石にしんどかったな……」


「ツユマル……腹減った」


「わかったよライオネン、休憩がてら軽くお祝いしよう」


 ボスの部屋に似つかわしくない家具を取り出していく、料理も作り置きの物を惜しみなくテーブルに並べていく。みんなも出汁を飲んで体力を回復させて席に着く。

 かれこれ半日ぐらい戦い続けていたので、流石にお腹が空いていた。眼の前の料理の数々にみんなの腹の音がやばい。


「それでは、お疲れ様でした。いただきます!」


「「「いただきます!」」」


 緊張感0である。

 この緊張感のなさが、このダンジョンを攻略させた原動力だろう。

 無限に続くような気もする巨大なダンジョンを抜けるには鈍感力もないと精神がやられてしまう。

 勇敢で、楽観的で、計画的で、客観的である。これらの要素が必要だなと感じた。

 そして、その要素は俺たち4人のパーティには存在した。だから、この結果につながったんだと思う。

 だしの効いた煮物を食べながら軽く酒も飲んだら眠気が襲ってきた。

 見回すも全員同じ状態、おっさんは食べたら眠なる。


「さて、風呂入って一眠りしたら最後の部屋とご対面と行こうか!」


「とうとう、来たんだな」


「この歳で、こんな日が来るとは……」


「みんなで、一緒に行こう。寝過ごさないようにね置いてくからねブレイド」


「ハハッ、胸が高鳴って眠れるかもわからないぜ」


 皆、子供みたいなキラキラとした目をしている。

 たしかにドキドキがすごい。この先に何があるのか……

 でも、体は正直で、あっという間に眠りについてしまった……


「おーい、ブレイド、ライオネンいつまでも寝てると置いてくぞー」


「何が眠れるかもわからないだ……片付けも俺とツユマルでやったんだぞ?」


「ふぁ……もう、朝か……?」


「もうちょっとだけ……」


「何回目のもうちょっとだよ……ツユマル、もう二人は置いていこう。

 お前も結婚するのに先立つ物が必要だろう。このレベルのダンジョンの宝を手に入れれば国だって起こせるほどの富が手に入るぞ」


「ま、まて、すぐに起きるから……顔洗ってくる。ほら、ブレイドも行くぞ……」


 ライオネンはブレイドを引きずって洗面所へと向かっていく。

 結局きちんと起きたのは俺とシンサールだったが、いつものことだ。


 結局ダンジョンの最後に待っていた宝の数々は国家間のバランスを崩しかねない代物で、俺の異空間にお蔵入りとなった。金銀財宝だけを報酬だったと対外的には示すことが俺たちの間で決まった。

 それだけでも国家の貧困問題などが解決してしまいそうなレベルなので……

 そして、転移して地上に戻った俺達はギルドによる執拗な追求を受けることになったが、実力者がいるっていうのはこういう時に非常に有り難い。

 様々な手段で自然な形で俺たちの偉業は伝えられることに出来た。良かったよかった。


 その功績の御蔭で俺はサーナと結婚するのに対等以上の地位を得ることが出来、無事に彼女を妻として迎えることが出来た。

 毎日、毎日、幸せが溢れ出して止まらない。

 

 溢れ出すといえば海に広がった昆布は全海域を浄化した。

 魔物が溢れる島は今では冒険者に人気の腕試しの場所になっている。

 どうやら魔物の島の正体はこの世に溢れる瘴気を集めて魔物という形で人間に処分させるというシステムになっており、この世界を維持するおおいなるシステムの一つだった。

 魔王という形骸的な存在はそのシステムを管理するモノを表すもので、必要悪、としか言いようがないために放置することにした。

 もちろん人間が魔物の犠牲になるようなことを極力防ぐためのシステムは作らないといけないし、すでにブレイドを中心に作り上げている。

 費用ならいくらでもあるからね。


 なんにせよ、この世界は今も回り続けている。


 俺はサーナと一緒に領地を治めながら趣味の蕎麦屋でいまでも4人で馬鹿騒ぎして暮らしている。

 もうすぐ4人目が生まれるので良い加減落ち着けと怒られるが、親友たちが離してくれないんだから仕方がないんだ。


 いろいろあったけど、毎日が幸せに満ち溢れている。

 俺の異世界生活は、鰹節と昆布によって最高な物になりましたとさ。














 幸せな生活をしてたまに冒険なんかをしながら自由に暮らしていたある日、海に広がった昆布から奇妙な信号を感じた。


「……世界が……広がる?」


 子どもたちも同様に昆布からの信号を受け取ったらしい。

 子どもたちの体から昆布や鰹節は出ないが、昆布の声は聞こえるようだ。

 俺なんかよりも遥かに素質溢れる子どもたちの冒険は、また別の機会に……


 今日も、健康のために一杯のだし汁を……


 



思いつきで始めた作品でした。

結構ふざけていくつもりが、いつものな感じになってしまって……

次はもっとはっちゃけたものを書けるようにがんばります。

これからもよろしくお願いいたします。


他の作品も覗いていただけると喜びます!


最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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