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第四十三話 圧倒的な昆布と鰹節の力ですべてを切り開く回

「昆布様、半端ねぇな……」


 第五階層も探査が終了して走って第6階層への扉へ向かっている途中ライオネンが呟いた。

 

「ほんとにね……凄いよね」


 第5階層は広大な砂漠だ。

 ところどころに巨石群があったり、登れない砂丘を利用して広大なダンジョンを形成している。

 道を間違えると、それだけで敵だけの問題ではなくパーティが壊滅する可能性がある。


「乾かないんだな……」


 シンサールも地面の昆布を触って不思議がっている。

 昆布の表面の粘液は非常に強力な水分保持能力を持っている。

 なんてったって海水の中にいて昆布の体内に水分を保持できるんだもの。

 砂だって、照り付ける太陽にだって負けない。

 ま、普通の昆布なら数分で乾燥昆布になっちゃうな。

 俺と繋がってる間は、そんな心配はいらないのだ。


 どうして走っているのかは、この階層が特に広いからだ。

 歩いていたら一日で階段までたどり着けない。

 鰹節を上に広げて日傘にして、昆布で探索をして一気に突破する。

 砂に潜って不意を突いてくる敵も昆布レーダーで事前に把握して、三人でボコボコにする。

 

「昆布で仕留められればそのまま窒息死、仕留められなくても昆布で動きを封じて封殺、どんなに強固だろうが鰹節で一刀両断。正直、俺たち要らなくない?」


「いやいや、人捜しだろ目的は!」


「そうなんだが、想像以上にツユマルがすごくてな……」


「確かに、しかし、おかげで光明が見える。

 これなら、前人未到……といってもブレイドが行ったとこまでだが、きっとそこまでたどり着ける」


「頑張るよ、とりあえず……今夜の安眠のためにもがんばろー!」「「おーー!!」」


 砂漠の敵は定番の巨大なサソリやら砂を泳ぐ魚みたいなのとバリエーションが想像以上に豊富で驚いた。ただ、この階層は自然の動物や植物が極端に少ないから、正面からの攻略は非常につらいと思わせる作りだ。


「はぁはぁ……ついた……」


「だらしないなライオネン」


「お前な……こいつ担いでんだぞ俺は……」


「す、すみません……」


 基礎体力が追い付いていませんでした。

 こっちにきて随分と動けるようになったと思ったんですが、長年一級冒険者だった人たちに比べると、月と鼈でした……


「夜ご飯はちょっと奮発しますんで許してください」


「許す!!」


 と、言うわけで5日目ともなると少し疲れてくるので、今日は豪勢なご飯にしてみましょう。

 閉塞感は少ないですが、ダンジョンにいるという事実は精神面を疲れさせるそうです。

 今日は少量の飲酒も許可しております。


 おじさん大好き焼き鳥です。

 ビールとの相性も抜群。

 すでに串打ちは済んでいる物を、オーダーを受けてから一本一本焼き上げていきます。

 マジックバッグの凄いところは、火を起こした炭もしまえます。


「とりあえず鳥、皮、ぼんじり、つくね、手羽を5本づつ、たれ塩はお任せで」


「あいよ、それとキンキンに冷えたビール、これつまんで待っててね」


「皮ポン酢とガツ刺しをダンジョンで味わえるなんて……」


 二人とも焼き鳥の魅力に取りつかれているが、シンサールはポン酢にハマっている。

 鳥はこっちで育てた太陽の恵みと大地の恵みをたっぷりともらった鳥たち。

 運動もたっぷりとしているから、ちょっと固いんじゃ? って思うぐらいの歯ごたえがあります。

 その分ぎゅむっとした歯ごたえと、じゅわーっと広がる鳥のうま味は極上になっています。

 

「あー、うめぇ! レバーも半生塩で!」


「ささみポン酢頂戴」


「あいよ、いやー、旨いよねぇほんとに。

 このビールとの相性は……悪魔的だぁ……ため息が出る」


 もちろん自分の分も焼きながらみんなの分も焼いていく。

 これだけ人気が出るなら蕎麦と焼き鳥の居酒屋スタイルもいいな。

 刺身も出して……隣には……あー、頑張らねぇといけねや!


「よっしゃ! いっぱい食べて明日からもガンガン頑張っていきましょう!」


「おうよ! ビールお替りで!」


「ウイスキーのソーダ割だ!」


 ダンジョン内で焼き鳥タイムを満喫する。

 自分も楽しいし、人に喜んでもらうのは本当に嬉しい。

 やっぱり俺はお店を出したいと再確認する。


 締めはもちろん特製出汁茶漬けだ。


「まずはたれで焼いた鶏肉に卵を落として卵かけごはん風で、ご飯はちょっとね。

 これでご飯の舌を作ってもらってからの、鯛の出汁茶漬けと行きましょう!」


 たれを多めにかけたご飯に卵を落として良く混ぜて食べれば……濃厚な卵とたれが合わさって、甘くまろやかな美味しさ……少なめの量のご飯の性で卵のおいしさがより引き立ってしまう。

 口の中が濃厚な卵の味になった状態で、さわやかなゆずの香りが少しだけした出汁茶漬け。

 表面だけさっとあぶった鯛の切り身をご飯に乗せてあっつあつの出汁をそーっとかけていく。

 この出汁はタイの骨を入れて濃厚な鯛エキスもまとわせている逸品だ!

 まずいはずはない、ずずっと出汁をすすれば鼻腔から鯛の香りと出汁の香りがダンスをしながら飛び出していく……最後にゆずがふわりと頭を撫でてくれる。

 鯛のみはほん~のり香ばしくほろほろーーーーって崩れていく。

 さらさらさらーってお米が食べれちゃう。

 そんな一品。


「以上で、本日の夕食締めとさせていただきます。毎度ありがとうございます!」


「「ごちそうさまでした!!」」


「なお、こちらお新香は置いておきます。ごゆるりとお酒をお楽しみください」


「……ええい、もう締めたはずなのに!」


「最後だ、これで最後、ブランデー……す、す、ロックで!」


 出汁をちゃーんと飲んでいれば翌日の心配はございません!

 こうして、魂の洗濯をしてダンジョン探索を進めていくのでありました。

食事描写楽しすぎる……

細かくは書きませんでしたが、異世界の鶏っぽい鳥と、鯛っぽい魚って感じで大目に見てやってください。

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