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第三十六話 覚悟を決める回

「サーナ様、お久しぶりです」


「ツユマル様、お勤めご苦労様でした」


 出所したみたいな挨拶だけど、まぁそうだよな……

 そんなこんなで、ようやく自分の街に帰ってこられたのだ!


「なんだか随分と久しぶりのような気がしますし、帰ってきたなぁって感じる物なんですね」


「ふふふ、そう言ってもらえると嬉しいです。本当にお疲れさまでした」


「サーナ様もあの後色々と大変だったと聞きましたが?」


「そうですね、ツユマル様と縁故を結びたがる人間が……中央よりも地方の方が逞しいですから……」


「すみませんご迷惑をかけて」


「お気になさらずに、そう言えば今日はライオネン様とご一緒じゃないんですね?」


「ギルドの方に顔を出すって言ってました」


「そういえば、ご一緒に旅に出られるとか……ロンダルギーアのダンジョンに挑むとか……?」


「……はい」


「ツユマル様の強さは存じていますが……それでも危険がありますよ?」


「そうですね、それでも、友人探しの手伝いを俺自身がしたいんです」


「ツユマル様らしいですね。そう言われたら、止められませんね。

 もともと、私が止めるような話ではないですからね。

 ツユマル様の自由は王様のお墨付きですからね!」


 心配を無理やり隠して笑うその顔が、たまらなく魅力的で、思わず抱きしめたくなってしまう欲望を必死で抑える。


「その……サーナ様……いや、殿、じゃないな……サーナさん」


「は、はい!」


「その、やっぱり長いダンジョン探索にはなってしまうと思うんですが、なんていうか、終わった後、帰ってくる場所がないと、こう、頑張れないような気がするんですよね」


「はい、わかります」


「それで、ですね。あの、俺、その、帰ってくるので……

 待っていてくれませんか? 俺のことを……」


「そ、それは……」


 俺は、なんとか言葉を絞り出しながらポケットから小箱を取り出して、サーナさんに開けてみせる。

 給料3か月分のアレだ。3か月分じゃないが。


「わ、私なんかで……いいのですか?」


「い、いや、なんというか、俺なんかには、ああ、だめだ。これは言わないようにって、じゃなくて、その。サーナさんが、良いというか。そ、その、好きです!」


 中学生か! 俺の馬鹿! それでもサーナさんは優しく微笑みながら小箱を受け取ってくれる。

 でも、その小箱を閉めてしまう。目の前が真っ暗になったような気がする。


「今はこれはつけません。帰ってきたら、つけてくださいますね?」


 暗闇がバッと取り除かれる。


「も、もちろん、死んでも帰ってきます!!」


「ふふ、死んじゃだめですよ?」


「は、はい!」


「ツユマル様、私もお慕いしております。

 でも、帰ってくるまで、その気持ち、温めておきます。

 どうかご無事にお帰りください」


「絶対に、絶対に帰ってきます! それまで待っていてください!」


 こうして、俺は絶対に無事に帰らなければいけなくなった。


 外に出ると、まるで世界が別世界のように輝いている。

 ああ、こんなに幸せな気持ちになるのか、はーん。


「大丈夫かツユマル? 主に頭が」


 スキップをしながら町を歩いているとライオネンに声をかけられた、気がつけばギルド前についていた。いやー、愛の戦士の時間はあっという間に過ぎてしまうんだな。


「あー、なんていうか、おめでとう。ただ、その面で外歩くと衛兵につかまるぞ?」


 シンサールもギルドから出て来て、俺を見るなり第一声がそれだ。


「ああ、そうか、うまく行ったのか。カバが潰されたみたいな顔をしてるから気でも狂ったのかと思った」


「えー? そんな顔してるでござるかー? 嫌だなー、そっかー、幸せが顔に出てるかー」


「うざ、そんなこと言ってねぇし」


「まぁまぁ、これでツユマルもダンジョンに向かえるわけだ」


「おう! 絶対に生きて帰るぞ諸君!」


「あ、ああ……お前ずっとそのテンションなの?」


「まあいいじゃないか今くらいは」(どうせ言ったって変えられるもんじゃないだろ)


「まあ、めでたいことがあったら……飲むか!」


「賛成! と言いたいとこだが、ちゃんとお役目こなしたらな……」


「はいはい、ってツユマルお前その状態でちゃんと戦えるのか?」


「任せといて、俺、今最強無敵モードだから!」


「そ、そうか、それじゃぁあのダンジョンに向かうぞ」


 今日は以前にも入ったダンジョン、最下層へのアタックだ。

 三人でどの程度やれるのかを確かめる意味でもちょうどいい難易度ということでチャレンジする。

 膨大な物資は問題なくアイテムバッグに収納できている。

 物流に問題がない程度に買い足し買い足しして集めている。

 お陰様で大金持ちなので魔道具など便利アイテムも潤沢に準備が出来ている。

 ダンジョン探索用の魔道具もしっかり準備、お金をかければ斥候役がいなくても大丈夫。

 昆布もあるからね。


「浅いとこは最短で行くぞ」


「頼んだぜ昆布あいぼう


 昆布式探索によって、あっという間にダンジョンの10階層。


「また裏面行きは嫌なんですけど……」


「条件もわからないしなぁ……」


「とりあえず、ミノタウロス倒すぞ」


 ボッコボコにしました。

 そして、なんとか裏面には引きずり込まれないで済んだので、本日はボス部屋でキャンプ。

 ボス部屋は魔物も出てこないのでダンジョンでのキャンプに最も適しているそうだ。


「快適だな」「ああ、快適すぎる」


「ご飯できたよー」


 完全にBBQキャンプだ。小屋をアイテムバッグから取り出せばダンジョンの中に家が出来る。

 あとはもう、家で過ごしているのと変わらない。

 こんなことも、異世界ならではのダンジョン探索と言える。


 まだダンジョン探索は全体の三分の一、油断せずに進もう。

 ベッドで布団にくるまれながらそう決意を新たにするのであった。おやすみなさい。



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