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第三十二話 そろそろ酒を飲むのはしつこいなって思う回

 ……恥ずかしい。

 なんというか、HUGとかハードルが高い儀式をしたせいで、ちょっと恥ずかしい。

 と、友達とか言っちゃったしね。

 ライオネンはあまり気にしてないみたいに酒と音楽を楽しんでいる。

 

「そのロンダルギーアのダンジョンはどこにあるの?」


「サーナ殿の街からさらに北に1週間ってとこだな。山岳部の麓に入口を中心とした街があって、一説には山岳部の地下全てがダンジョンと言われている」


「へ? あの町からうっすら見える山のすべて?」


「そうだ、北の山壁と呼ばれている一帯は、未だにどこまで続いているかわかっていない」


「海路が魔王のせいで封鎖されてからは調査も出来ていないからな……」


 そういえば海の浄化も進めていかないとだけど、大本の魔王も何とかしないとなぁ……


「そういえば、魔王って何者なの?」


「魔物や魔人を作り出している者……らしい」


「突然現れた島で、海を汚し続けている存在、的な……」


「良くわかってないのね」


「そうなんだよな、魔王ってのもたぶんいるだろうってだけだからなー……」


「魔王的な物を倒す勇者的な人間はいないの?」


「いやー、今海に出るのは自殺行為だからなー……」


「もし海が綺麗になったら何かわかるかな?」


「そう思うぜ、だからツユマルは救世主、それこそ勇者にでもなれるぜ」


「目立ちたくないんだけどなぁ……」


「まー、無理だな。それだけツユマルの能力はとんでもない」


「マジックバックはともかくとして、ネクタルを無尽蔵に作り放題なんて、なんというか、おかしいぞ」


「おかしすぎてなんて言っていいかわからなくなるの、わかる」


「そんなこと言っても、俺は何でこんな力を与えられてここにいるのかもわからないからなぁ……」


「この世界、いや、この国に必要だからお前は呼ばれたんだよ。

 少なくとも、俺やこいつは救われたし、街の人々もお前に感謝している。

 そしてこれからお前はこの国の人々に必ず感謝される」


 ライオネンが真面目な顔で真っすぐと俺を見ながら話す。

 これは、ライオネンの心からの言葉なんだろう、心に刻み付けないといけない。


「ありがとう、俺に出来ることなら喜んで協力する」


「しっかし、お前の前にいた世界の人間は皆そんなに無欲なのか?

 ツユマルは恐ろしいほどに無欲というか、私欲が薄いよな……」


「サーナ殿に対してはあんなに積極的なのは驚いたがな」


「ああ、あれは驚いた。お前からあんな洒落た言葉が出るとは……

 まぁ、ツユマルも丸わかりだからいいが、サーナ殿以外にあんなこと言うなよ?」


「……洒落た? 酷いこと言ったんじゃないのか?」


「なんでそうなるんだよ、いいか、お前のいた世界は知らんが、この国ではサーナ殿くらいの年齢で領主の娘で独り身というのは、なんというか、敬遠されるというか、まぁ、居心地が悪いもんなんだよ。

 そんな中、あんなに真っすぐ気持ちが溢れ出ることを言われたら、そりゃあんな反応になっちまうよ。

 それにな、俺が言ったって言うなよ?

 いつもだらしないツユマルが、まともなかっこするから、それだけですでに一杯一杯だったんだとよ」


 ライオネンが俺の肩を力強くバンバンと叩いてくる。


「俺の耳がおかしくなければ、サーナ様は迷惑そうとか、怒ってるとかはないってこと?」


「どんだけ鈍感というかずれてるんだよ、照れてたんだよ。

 惚れたって言ったっていいと思うぜ俺は」


「うむ、間違いないなあの態度は」


「ま、まさかぁ……」


 グラスの中で液体がちゃぽちゃぽ音を立てている。落ち着け俺。

 いーやしっている。これ、勘違いして突っ走って恥かくタイプだ。知ってるんだ俺。


「お前、そんなはずはない。きっと勘違いだ。って思ってるだろ?」


「な、なぜわかった!」


「なんとなくツユマルの考え方がわかってきた。

 お前、自分に自信がなさすぎなんだよ」


「ほんとそれな、少なくとも、王都でもお前ほど一目引く男は少ないぞ?」


「な、何だよ急に……」


「前の世界でどうだったかは知らんが、ここではツユマルはちゃんとすげぇって言ってんだよ」


「あ、ありがとうございます……」


「……なんか、俺たち気持ち悪いな、いい年した男が集まって……」


「……ま、もしダンジョンについてきてくれるなら、サーナ殿に待っててくださいぐらい言っとけ」


「その前に、王との謁見をうまく運ばないとな」


「そ、そうだった……偉い人って緊張しちゃうんだよなぁ……」


「……王を見たら、その心配は無くなるかもな……」


「ああ、あのお方は権威を振りかざすようなことはなさらない」


「いい方なんですね」


「……自己犠牲が過ぎるところがあるがな……」


「たぶん、ツユマルとは気が合うぜ」


「確かにそうかもしれんな……どうかあのお方の力になってくれ」


「が、頑張ります」


「さーて、真面目な話はそれくらいにしとこーぜ、どうやらフレア嬢の歌声が聞けるみたいだぜ」


 ステージにフレアさんが盛大な拍手に包まれながら上がっていた。

 彼女が歌い始めると、店はまるで別世界のように変化する。

 心が震える。現実で歌声によって心を揺さぶられたのは初めてだった。

 気がつけば涙が出ていた。それほど圧倒的な歌声だった。


「凄いな……」「だろ?」「本当に凄い……」


 その素晴らしい歌声に包まれながら友と酒を飲む時間。

 これほど素晴らしい時間は、そうそうないだろう……


 まさに、酔いしれた夜だった。


飲んでばっかだな……

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