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第二十九話 服を着るならこんな風に的な回

 俺が美しい華に目を奪われているとバチッと目が合ってしまった。

 思わず目を逸らそうと思ったが、その大きく深い瞳に目を奪われてしまう……


「あのー、お二人さん、二人だけの世界に入るのは良いんですが、そろそろ行きませんかい?」


「えっ、あっ、その、つ、ツユマル様……なんですよね?」


「あっ、は、はい、そうでございまするサーナど、様ん」


 噛み噛みだ。背後で二人のおっさんが肩を震わせているのがわかる。覚えとけよ二度と二日酔い予防のみそ汁もどきは作ってやらん。

 それにしてもあまりにジロジロとサーナ様を見つめてしまったために、サーナ様も固まってしまっていた……悪いことした……


「す、すみません。なんか、雰囲気が随分と変わっていて、その、驚いてしまって……

 その、あの……」


 珍しくサーナさんがオロオロして、そんな様子が恥ずかしいのか赤くなっている。

 いつも冷静なサーナ様の意外な可愛い一面を見られて俺は幸せで一杯だ。もう満足。


「さぁさぁ、馬車も用意していますので参りましょう」


「最近こっちに入り浸ってるけどギルドの仕事はいいのか?」


「……部下を信用して仕事を任せることも上司の器量なんだと気づかされた。

 部下たちも、目を輝かせて仕事をしてくれている。

 仕事しかやることなかったから仕事してただけなんだが、結局部下の仕事まで奪って成長の機会を取り上げて……」


「はいはい、こっちが楽しいから部下に仕事押し付けてきたんね」


「さ、二人のコントは置いておいて出発しましょう」


 俺は御者、サーナ様を馬車に案内するためだけに手を取るだけ、よこしまな考えはない。


「は、はい……失礼します……」


 はぁん、手があったかいよぉ~。


「おい、ツユマルそういう仕事は手配してるんだから邪魔すんな。

 困ってるじゃないか」


「へ? あ、すみません……」


 どうすればいいのかオロオロしている本来の御者にバトンタッチして馬車に乗り込む。

 どこか落ち着かないサーナ様の……正面に座るしかない。俺は御者、俺は御者。

 なんだかそわそわ落ち着かないサーナ様、窓から見える景色が珍しいのかな?


「サーナ様も王都へはあまり来られないのですか?」


「は、はい。やはり距離的にも難しいのと、王都にまで来なければいけないような用事も少ないですから……ツユマル様のおかげで領地が安定してくれて、こうしてゆっくりと王都観光もできます」


 ああ、天使のような笑顔が素敵。


「サーナ殿はどこか行きたい場所などありますかな?」


「ええと……もしよろしければ王都の服などを少々、やはり、流行の最先端ですから」


「ああ、よかった。そう思いまして、まずは王都の商業区から回ることになっていました。

 観光的になるかもしれませんが、王都の頂にご案内しましょう」


 なんか、シンサールがかっこつけやがって……

 ベロベロの時の動画でも撮影してみせてやりたい……


 王都の中でも超、高級商店街に馬車が停止する。

 なるほど、道行く人も上流階級の人間、俺には縁がないが、ここではサーナ様に恥をかかせないように背筋を伸ばしていこう。

 それにしも、街並みも一層整っていて美しい。

 きちんと舗装され、装飾も加えられた歩道、手を入れられ整備された緑が道を美しく彩っている。

 街灯も所狭しと配置され、夜でもこの一画の美しさは宝石箱が如くだろうと想像に容易い。

 立ち並ぶ店もゆとりのある門構えに広い店舗、どうやら建設規格があるのだろう、大理石にも見える美しい石造りの建物が町自体を芸術品のように仕立て上げている。

 ガラスのショーウインドーなんてこちらの世界で初めて見た。

 それに街のいたるところに兵士、しかも白銀の美しい装備で身を包んでいる。


「この区画は王直属の近衛部隊が守りについておりますので、騒ぐなよライオネン」


「さすがにそこまで馬鹿じゃねーよ」


「ほんとぉ?」


「ツユマル、夜覚えてろよ」


「す、素敵……ここが憧れの……」


 この素晴らしい街並み、そしてショーウィンドウ内の輝きさえ放つ品々にサーナ様もすっかり心を奪われていた。楽しそうなサーナ様を見れて俺もほっこりです。


「あ、あの、見させていただいても?」


「どうぞどうぞ、ごゆっくりなさってください」


「ツユマル、サーナ殿の側は任せるぞ?」


「ふぁ、はい!」


「すみません、お願いします」


 申し訳なさそうにするサーナ様のために店の扉を開けようとしたら店員さんがスッと開けてくれた。

 うん、そりゃ超高級店だもんね。

 なるべく目立たないようにサーナ様の側で護衛の任につく。

 流石は王都の一流店、上品な方々が優雅に買い物をされている。

 それでも、サーナ様の美しさはひときわ目立っている。と俺は思う。

 道を歩いていても、店に入っても、店員の目が輝くし、客の目も引いているような気がする。

 これはさらにサーナ様の側にいて端にならないように虚勢でもいいから立派にしていないと……


「あの、ツユマル様……これ、どちらがいいと思いますか?」


 美しいシンプルなデザインの薄い水色のドレス。

 もう一方は少し華やかなデザインの赤とオレンジの間のような鮮やかな色のドレス。

 ふふふ、これはいつの日か役に立つと思って色々と読み漁ったマニュアル本の知識を披露する絶好の機会! 知っているんだ、俺は、女性の心の機微という奴をな!


「サーナ様はどちらがお好きですか?」


「え? 私ですか……うーん、どちらも素敵だと思うんですよね、ツユマル様は……その、どちらの方が好みかなと……」


 ん? おかしい。マニュアル本には、『女性の選択問題は、すでに答えが女性の中にあるのだから、旨く話を聞きだして答えを見つけよう』とあったぞ。どういうことだ?

 俺の趣味を言えばいいの?

 言っていいの?


「わ、私の好みですと、サーナ様は大変美しく、特に最近は肌のきめも細かく透き通るような美しさを放っています。デザインが大きく、そちらに目が行ってしまい、また色合いも鮮やかなので、肌に映る雰囲気も明るくなり過ぎるかもしれませんので、落ち着いた色合い、デザインでサーナ様自身の魅力を引き立てさせるような、こちらの方が好きかもしれませんね」


 よし、どっかのファッションリーダーが言っていたようなことをそれっぽくうまく言えた気がするぞ。


「そ、そ、そ、そ、そう……ですか……」


 な、なんかうつむいてしまった……しまった! 恥をかかせた!

 耳まで真っ赤になって恥ずかしがってるじゃないか! やっちまった!!

 フォローしようと思ったら、ちょっと失礼しますと足早に店奥に行かれてしまった……

 完全に、やらかした……


「お前、なんていうか、すげーな」


 そうだよね、あんな見当違いなことを言って恥かかせるとか、無いよね……


「正直驚いたぞツユマル」


 王都のセンスあふれるシンサールからしたら俺のセンスは飯吹きものの驚きに満ちているんだろう……

 俺の失敗にありえねーよと正し、控えていた二人が寄ってくる……

 

「しまった……やらかした……」


「は? 何言ってんの?」「何を言ってるんだツユマルは?」


 ああ、それほどか、やらかすどころか即死級か……

 それからすぐにサーナ様が御戻りになって、どうやら商品をお買い求めになったらしい。

 

 サーナ様のショッピングのお供クエストは最初から躓いた……前途多難だ……

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