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第二十七話 青春、それは、戻らない日々な回

「ふぅ、なんだか店の雰囲気のおかげか、結構飲んでいたつもりだったが落ち着いたな」


「そういやそうだな……」


 それがネクタルの性か、鰹節に含まれる豊富なアミノ酸による効果は分からないが、途中で出汁を使った品を食べておくと二日酔いにならないことは自分で実験済みだ。

 それからシンサールが用意してくれたワインのような果実酒で再び乾杯をする。


「うん、いい酒だな……」


「美味しいですね。果物っぽい風味がしますが、結構強いですよね」


「ああ、これはいくつかの果実とアルコの実を混ぜたものを寝かせた物だからな」


「アルコの実?」


「そうか、ツユマルは知らないか……マスター、アルコストレートを3つくれ」


「あいよ」


 マスターは、小さなお猪口みたいな器に液体が入った物を3個、それに並々と水が注がれたジョッキを3個運んできた。中央の小皿には塩が盛られている。


「先に言っとくが、とんでもなく強いから無理するなよ?」


 そういったライオネンは塩をひとなめするとグイっとお猪口を開けた。

 シンサールも同じように一気に飲んだ。

 俺はとりあえずその液体の香りを嗅ぐ、その瞬間、過去にスピリタスを飲んでぶっ倒れた記憶が走馬灯のように走り抜けた。


「これは、危険が危ない」


「くっはーーーーーーーーーーー、相変わらず、ヤバいな……」


「まったく、何十年ぶりに飲んだぞ……喉が焼ける……」


 二人ともジョッキの水をがぶがぶと飲んでいる。


「アルコって植物の木のみを一週間ぐらい取ってから置いておくとな、中に液体が溜まるんだよ、それがまー強い酒でな、それを使って普通はいろんな果物やらをつけたりするんだが、一部の命知らずの冒険者が、こんな、飲み方を、考えたわけだわな……」


「だいたい一つの実で樽を一個分くらいの、果実酒作れるんだから、頭が、おかしいよな、ははは」


 二人の呂律もだいぶおかしい。

 なるほど、香りとしては風味の少ない純アルコール。ファンタジー的な感じでもっと強いんだろう。

 そう言えば、出汁を使ったカクテルなんてものもあるんだよな……


 俺はマスターに頼んで空のジョッキを用意してもらう。

 そこにアルコの果汁を少し、出汁を三分の二、野菜ベースのブイヨンスープを三分の二、その後塩で味を調える。

 カップに取り分けて、ブルショットのようにウォッカとコンソメスープのカクテルの出汁風味をテーブルの上で作り上げる。

 温められたブイヨンと出汁のいい香りが周囲に流れる。


「ん? うまそうなもの作ってるな」


「どうぞどうぞ」


 二人にカップを勧める。自分も一口飲んでみる。

 これでも結構強いが、身体がカッと温まって……


「うん、おいしい」


「おおお、これは旨い……染み渡るな……」


「体がぽかぽかと温まって……ああ、酒のだるさがみるみる抜けていく……

 それでいて、心地いい酔い方……凄いじゃないかツユマル」


「お客さん、それは?」


「ああ、勝手にすみません!」


 それからマスターに作り方を教えたり、すっかり興味津々な周りの人々にも振舞ったり、いつの間にかみんなでワイワイと飲んでいた。


「ツユマルさん、早いとこ王様にあってその出汁を広めてくれ! 楽しみにしているよ!」


 結局マスターにごちそうになってしまった。

 ライオネンもシンサールも泥酔状態からとってもいい酔い方になって、三人でしばらく火照った身体を散歩でもしながら冷まそうって話になった。


「王都の夜の景色は、なんと言ってもここが一番だ」


 高台の公園から見下ろす王都の光は、頭上を照らす星々の光と相まって、文字通り光の宝箱のようだった。


「こんな景色を男3人集まって見るのも、アレだが……悪くないな」


「そういう店もあるが、今夜には無粋だろ」


「そうですね、今日は本当に楽しかったです」


「……なぁライオネン、お前復帰するのはアイツを探すためか?」


「……ああ、それもあるな」


「そうか……」


 それから二人が口を開くことは無かった。

 しばらく夜空と王都の風景を楽しむと、誰が言い始めるでもなく軽く別れの挨拶をして、静かに宿へと戻るのだった。


 宿の窓から明るい日差しが降り注ぎ、ベッドで眠る俺を照らし出して、何とも気持ちの良い目覚めを与えてくれた。

 

「ほんとうにこっちの世界の出汁を飲みながらだと、朝が快調だよなー。

 向こうでこれに出会っていればどれだけの失敗を防げたことか……」


 部屋から出て共有の水場で水を汲んで顔を洗う。

 そのまま体を軽くふくとさっぱりとした。


「ふぅ……」


「おお、早いじゃないかツユマル!」


 振り向くと軽く汗をかいたライオネンが水場に向かってきていた。


「朝稽古ですか?」


「酒を抜こうと思ったら、まったく残ってなくてな、思ったよりしっかりとやってしまってな」


 おもむろに肌着を脱ぎ始め丸裸になって水を被り始める。

 実はこっちの世界ではあまり珍しくない。

 地方の街だと、女性なんかも一緒に水を浴び始めるのではじめは驚いた。

 軽い衝立はあるけど、まぁ、丸見えだよねほとんど。


「昨日は楽しかったな! シンサールも、なんか昔に戻ってた。

 これもツユマルのおかげだ、ありがとよ」


「別に特殊なことはしてないような……」


「はっはっは、お前はそのまんまでいいな。うん。

 なんにせよ、すぐにでも王様と謁見の場が作られる。色々と忙しくなるぞ!」


「そうですね、サーナ様に迷惑をかけないように、頑張ります!」


「……それもなんとかしないとなぁ……」


「ん? 何か言いました?」


「いーや! 鈍感相手だと、いつも回りが苦労するなぁって思ってな!」


 桶に貯めた水を豪快に頭からかぶるライオネン、こっちにも水がバシャバシャと飛んでくる。


「もう少し周りに気を使えよなぁ……」


「お、言うじゃねーか。お前こそそんな布でチマチマ拭いてねーで水被れば早いのに」


「いやいやいや、寒いだろ普通に!」


「ほーーー」


「やめろよ、ほんとにやめろよ?」


 そんなこんなで遊んでたら宿の人に怒られました。

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