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第十三話 お約束なダンジョンが唐突に出てくる回

 ファンタジー野菜とお肉の揚げ浸しを作っていたら筋肉ギルドマスターが戻ってきた。

 

「先程は失礼した。いやぁ、あんなにも燃えたぎったのは久方ぶりで思わずハッスルしてしまいました!」


 なんだか誤解を生みそうなことを言いながら部屋に入ってきた。

 なぜか後ろの職員の方が顔を赤くしている、完全にセクハラだな……


「おお、なにやらいい匂いがしますな……」


「あ、よかったら筋、ライオネンさんも食べますか?」


「いただこう。しかし、ツユマル殿は無双の戦士ですな。

 私もまぁまぁ覚えがあったのですが……何一つ通用しませんでした」


「いやぁ、自分自身の力というよりは迷い人としての力ですから」


「いやいや、迷い人の力というのは以前からの行いの現れ、そして神からの恩恵次第。

 ツユマル様は神から大いなる使命を与えたのかもしれません!」


 神様の使命って……あれか? 出汁をとれって話か……

 出汁を取れってなんだよ……それがこの世界とどう絡むっていうんだ……

 もしかして、神様、馬鹿なのかな?

 でも、美味しそうに出汁料理を食べてくれている人たちの笑顔を見ると、出汁で世界は変えられるかもしれないって気分になる。


「それにしてもツユマル殿は料理が上手いですな!

 これ程の料理はそうそうお目にかかれませんよ!」


「こちらでは私が作るタイプの出汁は使われていませんからね、ベースにうま味を補充してあげることで料理はぐっと美味しくなります。さらには健康にとっても非常に有益です」


「しかし、これをポーションとして用いればそれぞれは上級ポーションを超え、合わせれば神薬となる……素晴らしいのですが、なんというか、扱いに困るというか……」


「そこなんですよね……上級ポーションと言えば調薬師が目も飛び出るような高級な素材を長い時間をかけて作るものでしたから、それを無尽蔵に簡単に作れるようになると……」


「それでも、人々の安全のためならツユマル様の力を制限することは人類の損失です」


「そうだな……少なくともギルドとしては願ってもない。

 一本のポーションがないせいで命を落とす冒険者は少なくない……」


「この街の海を見ればツユマル殿のお力がこの国、いや世界にとってどれほど重要かもわかるじゃろ?」


 海はかなり広い範囲で浄化されてきた。

 俺の手を離れた昆布はとんでもないスピードで繁殖してその範囲を広げている。

 港の側の海では昆布の間を魚たちが泳ぐ姿も観察され、過去の海を取り戻しつつあった。


「あの昆布には不思議な力はありませんでしたね。出汁は取れましたけど……」


「海の浄化は長年の悲願ですから! ツユマル様の功績は計り知れません!」


「それゆえに、卓越しすぎた能力ゆえに悪用しようという輩が出てくる可能性がありますな……」


「ギルドとしてもツユマル様のお力をお借りするためにも全力でツユマル様の自由を守るつもりです」


「私からも王や有力なものに出来る限り話を通してツユマル様を守るつもりです!」


「なんだかすみません、いつまでも皆さんにお世話になりっぱなしで……

 自分が出来ることは鰹節と昆布のすばらしさをたくさんの人に知ってもらうことだけです。

 よろしくお願いします!」


 その日から、実績作りとしてギルドの協力の元ポーションの実戦での有効性の調査。

 王様に対しての説明のためにも様々な実験と検証を行うことになった。

 王様へ報告しても実際に謁見が許されるのは数か月から数年先らしい、特にサーナさんは地方の小さな村の領主、そこまで大きな力もないため申し訳ないと謝られたが、俺としてはゆっくりのんびり過ごしたいので逆に好都合だ。

 自分の能力もしっかりと理解しておきたいし。


「と、いうわけでこれからダンジョンに潜ることになった」


「どういうわけなんですかライオネンさん……」


「いやぁ、最近ツユマル殿の料理を口にする機会も多く、引退したはずなのですが体の調子が良すぎて、実験という名をつければ現役復帰の口実にもなるかなと思いまして」


「あまりにぶっちゃけすぎて気持ちがいいくらいですね」


「すでに冒険者たちの間でツユマル殿のポーションの効果はこれでもかというぐらい報告が来ております。なので、たまにはその冒険者のような仕事を体験していただき、私の欲求も晴らしたいのです!」


「ほんとに隠す気有りませんね……」


「つ、ツユマル様。我ら冒険者は本当に心から感謝しているのです!

 今日は一生懸命お役目を果たさせていただきます!」


 実際にはマスターと一緒なのが緊張の理由だそうだ。

 あの筋肉、以前は伝説の冒険者として名を馳せていて、一部の冒険者からすると尊敬の対象らしい。

 今日のダンジョンに一緒に潜ってくれるのはサーナさんの街を拠点にする冒険者パーティの中で一番の実力者である『ストーンブリッジ』という名のパーティだ。

 戦士のソードさんと魔法使いのホーマさん、斥候(スカウト)のシフさん、治療師(ヒーラー)のホミさん、弓使いのアーロさんの5人パーティに俺とライオネンさんがゲストで参加する。

 誠実そうな爽やかイケメンのソードさん♂、知的で無口なホーマさん♂、お調子者だけで面倒見がいいシフさん♀、優しく穏やかで笑顔が素敵なホミさん♀、それと細目でどこ見てるかわからないのに弓の腕前は凄腕のアーロさん♀だ。


「そ、そんなに硬くならなくて大丈夫ですから、そんなに危険な場所じゃないんですよね?」


「そうですな、上層エリアは大したことありませんな」


「ツユマル様、ダンジョンというものをご存じで?」


「はい、知識としては……魔王とは異なる魔物を生み出す場所、しかし、ダンジョンの魔物は外に出ることは無くダンジョンの中だけで生活をすると」


「それにダンジョンには我ら冒険者をおびき寄せるためか宝などが生み出されます……

 そして、ダンジョンの最深部に眠るダンジョンコアと呼ばれる魔石は計り知れない価値があります」


「ま、最深部となると魔物は強いし道程は長くなるしで大変なんだけどな」


 シフさんがおどけてそう続ける。

 基本的にダンジョンを制覇するためには複数のパーティがチームを組んで行うか、国家プロジェクトになるのがこの世界の常だそうだ。


「もちろん今日は制覇なんて目指さない。ちょっとお試しで入るだけだ心配はいりませんよツユマル殿」


 ……俺、知ってるんだ。これフラグって言うんでしょ。

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