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56.転移碑

「初めてのボス戦で少し緊張していたのだが、思っていたよりもあっけなかったな」


 少し物足りなさそうなフロスティを見てケントは苦笑した。


「それは仕方ないよ。

 いくらボスとはいっても所詮10階層だし、今のフロスティの攻撃は強烈だからね。

 むしろゴブリンジェネラルはフロスティの1発目をよく耐えたと思うよ」


 もともとBランク相当の実力があるフロスティが魔法の効果が上昇する魔杖を装備しているのだ。


 今のフロスティなら単純な火力だけならば、20階層どころか30階層のボスを相手にしても有効打を与えることができるのではないだろうか。


 もちろん下層のボスが単純な火力だけで倒せるような相手であるはずがないだろうが。


「とりあえず宝箱でも確認しようか」


 ゴブリンジェネラルが霧散した後に残された魔石を回収しながら宝箱を見る。


 何気にケントが隠し部屋以外で宝箱を見るのは初めてだったりする。


 隠し部屋にある宝箱はどれも黒く金属質の物だったが、今目の前にあるのは赤色の宝箱だ。


 ダンジョンではボスを倒すと必ず宝箱がドロップすると言われている。


 確実に宝箱に出会えるのならばボス部屋を周回する冒険者が現れそうだが、実際はそうもいかない。


 なにせボスはボスを倒したことがない人がボス部屋に入らないと現れないからだ。


 ボス討伐経験のある者だけでボス部屋に入ってもボスは現れず、一度の戦闘を行うこともなくボス階層を通過することになる。


 パーティーのうち1人でもボスと戦ったことがない人がいればボスは出現するが、ボス戦未経験のメンバーをパーティーに加えるなど何度もできる手ではない。


 そんな訳もありボス部屋周回は確立されていないのが現状である。


 ケントは罠に注意しながら氷魔法で宝箱を開いた。


 すると中には一振りの剣が入っていた。


 まさかと思い鑑定してみたが、そう都合よくいくはずもなかった。


 ~鑑定~

【名称】黒鉄剣

 黒鉄でできた剣。鉄剣よりも硬く鋭い。


「魔剣じゃないみたいだね」


「まあ、10階層のボスからのドロップで魔剣が出たっていう話は聞いたことがないし、そんなものだと思うわ」


 どうやらそんな甘い話はないらしい。


「この剣ミランダが使ってみる?」


 今回の探索において、ダンジョン内で入手したものの所有権は魔剣を除いてケントたちにあるという話になっている。


 そのため宝箱から入手したものをケントたちは依頼主の許可を取る必要もなく自由にできる。


 もっともフロスティから買い取りたいという要望があれば交渉のテーブルに着くのも吝かではない。


 今回の場合も黒鉄剣の所有権はケントたちにあるので、ミランダが使用しても何の問題もない。


 ミランダが現在使用しているのは、普通の鉄剣だ。


 業物ではないが大切に扱っているのをケントは知っている。


 きっと愛着というものもあるのではないだろうか。


 まだ鉄剣では歯が立たないという魔物には遭遇していないので、ミランダが鉄剣の継続使用を望むのならそれはそれでアリだと思う。


「それじゃあ、使わせてもらうわ」


 だが、ケントの予想に反してミランダはすんなり黒鉄剣を受け取った。


 そんな考えが顔に出ていたのか、ミランダはケントの表情に気が付くと「ああ」、と理由を話してくれた。


「もちろん、この鉄剣に愛着はあるわよ。

 結構長く使ってきたしね。

 でも武器はあくまでも武器でしかない。

 変に固執して自分の身を危険にさらしていたら元も子もないわ。

 割り切っていかないとね」


 ミランダの話を聞いてなるほど、とケントは思った。


 魔物や盗賊と命のやり取りをする冒険者だ、安全マージンを考えて依頼や探索をこなしていても命の危険があることにかわりはない。


 シビアにならなければいけない部分もあるのだろう。


 ◇


 宝箱の確認を終え、11階層へ向かおうとしたときだった。


「あれ、隠し部屋がある」


 ボス戦に意識を向けていたため気が付くのに遅れたが、確かに11階層への大扉の向こうのちょっとした空間、その片側の壁の向こうに隠し部屋を感知できる。


 だが少しおかしい。


 今までの隠し部屋は部屋の中央に宝箱が置いてあり、それだけだった。


 だが脳内マップでは部屋の中央に宝箱は無く、代わりに台座のようなものが示されている。


 他の隠し部屋とは違うのだろうか。


 2人を先導し大扉を抜け、件の壁の前に立つ。


 そして氷魔法で壁を粉砕した。


 3回目ともなればもう慣れたものだ。


 土煙が納まるのを待ってから、隠し部屋へと入る。


 そこには脳内マップに示されていた通り、白い石材でできた台座が存在していた。


 台座はケントの腰ほどの高さで、台座の中央にソフトボールくらいの水色の石がはめ込まれており、その石を囲むように古代語で魔術刻印がなされていた。


 2人にも聞いてみたが、これが何かはわからないらしい。


 というわけで鑑定してみた。


 ~鑑定~

【名称】転移碑

 魔力を流し込むことで転移碑間の転移が可能。地上の転移碑には自由に転移できるが、ダンジョン内の転移碑に転移するには、一度転移先の転移碑にも魔力を流す必要がある。


(おう……、すごいものを見つけてしまったようだ)


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