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44.一件落着

「ケント、大丈夫?」


 氷漬けにされたオークキングが魔石に変わったことを確認してからミランダが駆け寄ってきた。


 同じ轍は踏むまいとしっかり脳内マップで安全は確認してあるので、ミランダが出てきても問題ない。


「何とかね。

 ミランダがオークキングに気が付いてくれなかったら間に合わなかったかも。

 ありがとね」


「オークキングを倒したのも、みんなを回復させたのもケントなんだから気にする必要はないわ。

 それにしてもメヌエットを治療したときから薄々わかってはいたけど、ケントは回復魔法も出鱈目ね。

 瀕死の人を5人もまとめて全快にしちゃうなんて。

 こんなこと司教様どころか大司教様にだってできないと思うわよ」


 司教や大司教というのは女神アエロラを崇拝する宗教国家、テレス教国から各国の教会へ派遣されている聖職者のことである。


 この世界の教会は治療施設としての側面もあり、回復魔法のスキルを持つ人の就職先の筆頭でもある。


 とくに回復魔法以外に攻撃のできるスキルを持っていない人は、自己防衛ができないため冒険者になることはほとんどない。


 ケントの様に回復魔法のほかに一般的に見て非戦闘系のスキルしか持たないものが聖職者ではなく冒険者になるのはかなりレアなケースである。


「これのおかげで多少の無茶ができるから助かるよ。

 それじゃあ、応援が来るかガレンたちの目が覚めるまではこの辺で周囲の警戒をしてようか」


 そう言いながらケントは辺りに散らばっていたオークやオークキングの魔石をガレンのそばに置いた。


「オークはともかくオークキングはケントが倒したでしょ。

 あげちゃっていいの?」


「オークキングの魔石を持ち帰っちゃうとここにオークキングがいたっていう証拠がなくなっちゃうからね。

 森の浅い場所にオークの群れが出現するだけでも異常なのにオークキングまで出たってことをギルドにしっかり把握してもらって警戒してもらわないと。

 魔石はちょっともったいないけど」


 オークキングといえば森の魔物だし、以前あったゴブリンたちの様に話すことができるかもという可能性に氷漬けにしてから気が付いた。


 まだ生きているかもという一縷の望みにかけて、解凍してみたが残念ながら魔石になってしまった。


 今回は手加減している余裕がなかったので仕方のない面もあるが、次に森で魔物に会うことがあったら機会を逃さないようにしたい。


 ミランダと雑談しながら脳内マップで索敵していると、応援の冒険者らしき反応が引っかかった。


「応援が来たみたいだ。

 ちょっと離れたところからガレンたちと合流するところを見届けたら、今日は帰ろうか。薬草採取しようにも俺たちはオークの群れが出たから森には近づかなかったっていう体を取った方が無難だろうしね」


「それもそうね。

 それじゃあゴーレムとの訓練はまた今度よろしくね」


「了解。

 ミランダ、念のため手を貸して」


 そう言ってケントはミランダの手を取ると隠密を発動した。


「…ケント、さっきも思ったのだけれどどうして手を繋ぐの?」


「えっ、ああ、ごめん!

 説明してなかったね。

 あまり見つかりたくないから隠密を発動しようと思って。

 手を繋いだ状態で隠密を発動させると、手を繋いでいる相手にも隠密の効果が及ぶ気がするんだ。

 検証はしたことないんだけどね」


「そういうことね…」


 そう答えるミランダはどこか覇気がない。


「…手を繋ぐの嫌だった?」


「そんなことないわ!

 何でもないの、気にしないで」


 よくわからないが、手を繋ぐことは問題ないらしい。


 良かった。


 もしミランダに「お前になんか触れたくない」なんて言われたら、引きこもりになる自信がある。


 ミランダの手の感触を楽しみながら、そんなことを考えているとミランダに知られたら嫌われそうだなと謎のスリルを味わいつつ応援が来るのを待った。


 予想よりも早い応援の到着にギルドの対応の優秀さを感じつつ、ガレンたちが運ばれていく姿を見てから、ケントたちはその場を後にした。


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