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40.大喰らい

「すまない、待たせたか」


「いえ、ギルドに魔剣の報告をしていたので丁度良かったです」


 オーベルたちはダンジョンで会った時に身につけていた装備を外してラフな格好だった。


 とはいえ外しているのは鎧などの防具であり、武器の類はしっかり装備している。


 銃刀法なんてない世界だ、街中とはいえ自衛のために必要な部分もあるのだろう。


 それに冒険者にとって武器は命を預けるものであり、商売道具でもある。


 極論を言えば防具が無くても魔物と戦えるが、武器が無くては戦えないという冒険者がほとんどだろう。


 そういった意味では持ち歩くことで紛失防止の意味もあるのかもしれない。


「それじゃあ行こっか。

 この近くだからすぐ着くよ」


 そう言って先導するヴィオラについて歩いて行くと、ギルドの面する大通りから少し入ったところにそのお店はあった。


 夕食時ということもありほとんどの席が埋まっている。


 ギルドの近くにあるということもあってか冒険者風の装いの人が多い。


 空いているテーブルに着くと、みんなの意見を聞いたヴィオラが次々と料理を注文していく。


 こういう時に仕切ってくれる人がいるとスムーズでいいな。


 談笑しながら待っていると、料理が運ばれてきた。


 テーブルいっぱいに並べられた皿の上には、これでもかといわんばかりの量の料理が盛り付けられていた。


 炒め物や卵料理、餡かけなど中華料理風のものが多い。


 漂う芳ばしい香りが食欲をそそる。


 一番手前にあった炒め物を取り分け、口にする。


(これは、なかなか)


 ふんだんに使われたスパイスと肉汁、野菜のうまみが絶妙なバランスで調和している。


 とくに白米主義者というわけではないが、今ばかりはお米がこの場にないことを恨めしく思う。


 仕方がないので付け合わせのパンを頬張った。


「どう?ここの料理は結構いけるでしょ」


「そうだね、味付けもしっかりしているしいくらでも食べられそうだよ」


 そう答えると、ヴィオラは得意げに胸を張った。


 オーベルとメヌエットも勧めた店の料理が褒められて嬉しそうだ。


 ちなみに言葉遣いに関してはフランクでいいという要望があったので崩すことにした。


「確かにとてもおいしいけれど、こんなにたくさん食べられるの?」


 そう言ってミランダはテーブルに並べられた料理の山に目を移す。


 注文した品数もさることながら、一皿当たりの量が非常に多い。


 ケントもミランダも小食というわけではないが、いくらおいしいとはいえ限度がある。


「それなら大丈夫よ!

 うちには大喰らいがいるからこれくらいなら問題なく片づけられるわ!」


 そう言われてオーベルの方を見る。


 確かにオーベルは体つきもいいしこれくらいなら平らげることもできるのかもしれない。


 しかし、ケントの視線に気が付いたオーベルは苦笑しながら首を横に振った。


 まさかと思いメヌエットの方に視線を向けると、メヌエットは恥ずかしそうにもじもじしていた。


「…まさかメヌエットが?」


「…うぅ、その、はい」


「なに恥ずかしがっているのよ、メヌエットがよく食べるってことはこのお店の常連ならみんな知っていると思うわよ」


「姉さんは黙っていてください!」


 ヴィオラのことをポカポカしながら怒るメヌエット。


 女性としては大喰らいというのは恥ずかしいものがあるのかもしれない。


 だがこれで謎が1つ解けた。


 よく食べるからよく育ったのだろう、何がとは言わないが。


 こうやってワイワイしながら食べるご飯はとてもおいしかった。


 オーベル達とも打ち解けることができた。


 ミランダも楽しそうに会話に花を咲かせている。


 またみんなで食事をする機会があればいいなと思う。


 ちなみに、半分ほど食べたところで満腹になったケントたちに代わってメヌエットが残りの半分をぺろりと平らげてしまった。


 あの細い腰のどこに大量の料理が納まっているのか理解ができない。


 おそらくあっという間に消化されて、2つの胸部装甲に貯えているのだろう。


 ちょっ、怖いからそんな目で睨まないでくれませんか、ヴィオラさん。


 あと足が痛いので、ミランダさんもその足をどかしてくれるとありがたいです。


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