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36.助太刀

 早速魔剣、ルーインブリンガーの使い勝手を確かめるため、脳内マップで近くにいる魔物を探す。


「あっ…」


「どうかしたの?」


「いや、試し切りしようと思って魔物を探していたんだけど、そうしたら魔物と戦っている冒険者たちがいて、どうやら挟み撃ちに遭っているみたいでさ」


「どちらが優勢かわかる?」


「そこにいるってことまではわかるけど、優劣まではちょっと。

 ピンチだったら助太刀してあげたいんだけど…」


「そうね、とりあえず様子を見に行きましょうか」


 そう言って2人はケントの脳内マップに従って冒険者たちのいる場所へ駆け出した。


 ◇


 幸いそれほど距離が離れていなかったため、2,3分も走るとその場所に着いた。


 通路の曲がり角から顔だけ出して冒険者たちの様子を窺う。


「少し劣勢のようね…」


 ミランダの言う通り冒険者たちはジャイアントバットによる挟み撃ちによっておされているようだった。


 ジャイアントバットは巨大なコウモリであり、基本的に空中にいるため何らかの遠距離攻撃の手段がないとダメージを与えることができない。


 幸いなことにジャイアントバットも遠距離攻撃の手段がないため、牙による噛みつきか足の爪によるひっかきしかしてこない。


 そのためジャイアントバットの攻撃をうまくいなすことができれば、近距離武器でもカウンタ―でダメージを入れることができる。


 したがって本来8階層に潜るような冒険者なら面と向かって闘った場合、1対1なら後れを取るようなことはない。


 しかし、今回は冒険者に比べて魔物の数が多かった。


 魔物の数は壁を背にして戦う冒険者を囲むように6体。


 おそらく3体ずつの群れに挟み撃ちにされたのだと思われる。


 それに対して戦っている冒険者は2人。


 その2人に守られるように1人倒れている冒険者がいるので3人組のパーティーなのだろう。


 戦っている冒険者たちはジャイアントバットの攻撃をいなすことはできているが、すぐに次の攻撃が来るためその対処に追われてカウンタ―による有効打を入れられずにいた。


 ジャイアントバットは常に飛翔しているため、冒険者たちは下を抜けて退却しながら戦うこともできるのだが、倒れている味方がいるためにその場に釘付けにされていた。


 実力はジャイアントバットに劣っているわけではないだろうが、体力が尽きてやられるのは時間の問題だろう。


「助けに行こうと思うけどミランダは…」


「もちろん行くわ」


 どうする?と続ける前に返されてしまった。


 鋭い視線をジャイアントバットに向けるミランダの表情を見ると、とても頼もしく思う。


 ケントはミランダに頷き、通路へ飛び出した。


 後ろからミランダの足音も聞こえる。


 ケントの手には先ほど手に入れたばかりの魔剣が握られている。


 鞘から抜かれた黒い刀身には、この世界の古代語にあたる文字で魔術的な刻印がなされていた。


 刻印が古代語だと理解できたのは言語理解スキルが活躍してくれたからだ。


 マジパナイ。


 走りながら鑑定に書いてあったように魔剣に魔力を注ぐ。


 すると魔力Sを誇り、魔力の運用効率が圧倒的に高いはずのケントのMPがわずかだが確実に減少したのを感じた。


(なかなかの大喰なようで)


 一瞬魔剣に視線を落としてからジャイアントバットへ視線を戻す。


 現在隠密を発動させていないが、ジャイアントバットたちは目の前の冒険者に夢中でケントたちに気が付く様子はない。


 ケントは冒険者に襲い掛かるために急降下してきた無防備なジャイアントバットの背中を一文字に切り裂いた。


 すると何の抵抗もなくジャイアントバットは上下に分断された。


 剣術スキルを持たないケントの攻撃で、だ。


 あまりに抵抗が無かったためバランスを崩しかけたほどである。


(この剣はとんでもないものかもしれないな)


 そんなことを考えつつ次のジャイアントバットに視線を向ける。


 どうやらミランダも1体仕留めたようで残るは4体だ。


 突然2体のジャイアントバットがやられたことで、魔物も冒険者もケントたちの存在にようやく気が付いたようだ。


「助太刀します」


「助かる!」


 4対4になったことでそれぞれ1体ずつ受け持ち、ジャイアントバットたちは魔石だけ残して霧散することとなった。


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